採用マーケティングとは?ファネルとペルソナの活用手法を解説

採用マーケティングとは?ファネルとペルソナの活用手法を解説
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採用マーケティングとは


近年、リモートワークの一般化等による労働環境の変化や、若者のキャリアに対する考え方の変化により、多くの企業が自社の求める人材が採用できずに悩んでいます。

そんな中、自社の欲しい人材を獲得するために、採用にもマーケティングの手法を取り入れる取り組みが注目を集めています。

採用マーケティングでは、マーケティングで使われるファネルとペルソナの考え方を使い、自社が求めている人材の人物像や行動を理解することから始まります。

採用したい人物像を知ることで、効果的に採用を行うだけでなく、その後の「活躍」や自社への「定着」、キャラクターに合わせた「異動」そして「退職」まで、総合的にフォローしていく採用活動です。

顧客が購入するまでのプロセスを表す「ファネル」

採用マーケティングに登場するマーケティングの概念の1つが、「ファネル」です。

マーケティングの「ファネル」は、一般的な人が物を購入するまでの行動プロセスを表したもので、大きく4つのプロセスに分類されます。

  1. 認知…今まで知らなかった商品を初めて知る段階
  2. 興味・関心…商品に興味・関心をもち、どのようなものか具体的に調べる段階
  3. 競合検討層…気に入った商品を、競合他社の商品と比較する段階
  4. 自社検討層…商品のことを詳しく調べ、購入を決断する段階

これを採用に当てはめると、次のように考えられます。

1.認知

自社の存在を求職者に知ってもらう段階です。どのように求職者に知ってもらえるかを検討します。

2.興味・関心

自社の商品やサービスを調査して詳しく知ってもらう段階です。自社のサービスに興味を持ってもらえるよう、自社の特徴をどのようにアピールするかを検討します。

3.応募

企業に魅力を感じ、採用試験への応募を行う段階です。興味を持って企業を調べた人の中にも、実際には応募しない人がいます。そのような人に対し、何をしたら最後まで見て、応募してもらえるかを検討します。

4.選考・内定

選考中の応募者に、入社意欲を維持してもらう段階です。自社のことを知り、応募者に興味関心をもち続けてもらえるようアピール方法を検討しましょう。

このように、採用プロセスをファネルに落とし込み、それぞれのプロセスにあった対応を準備することが重要になります。

求める人材の細かな人物像「ペルソナ」

「ペルソナ」は、インターネット上では「架空のユーザー」や「典型的な人物像」などと紹介されています。似たような用語として紹介される「ターゲット」と混同されがちですが、明確に異なるものです。

「ターゲット」は、例えば「30代の主婦」や「20代の会社員」のように、実在している年代や職業などで分類される、特徴を持った集団のことを指します。これに対し、「ペルソナ」は年齢や職業、家族構成、さらには休日の過ごし方など、具体的な個人の特徴を表しています

具体的な人物像を想定することで、その人物の「どのようなことに悩んでいるか」や「どんな願望を持っているか」のような欲求を導き出し、欲求に対する「答え」として商品を伝える方法を考えることができるようになります。

採用マーケティングの必要性

パソコンやタブレットで検索
これまで、採用活動は人材が「入社するまで」に着目して、「入社した人数」が結果の指標として活用されてきました。

しかし、採用マーケティングは、採用したい人物像(ペルソナ)を事前に定義することで、自社と応募者間のミスマッチを防ぎ、「入社後」のパフォーマンスを高めることができると期待されています。

このような考え方が出てきた背景には、メディアやSNS等が多様化したことで、企業のアプローチも多様化してきたことが考えられます。

では、このような状況下で、なぜ採用マーケティングが必要とされているのでしょうか?続いては、採用担当者が採用マーケティングを必要と考えている理由について解説します。

競合他社との採用競争に勝ち残る

自社が求める人物に入社してもらうため、競合他社との競争に勝ち残る必要があります。ここでいう競合とは、自社に応募しようとしている人物が、並行して応募しそうな企業のことです。

最終的に、応募者が自社と競合企業を天びんにかけた場合、自社を選んでもらわなければなりません。そのためには、自社のことをよく知り、ファネルのプロセス毎にどのようにアピールすべきか、整理して臨む必要があるでしょう。

また、各プロセスで、達成すべき目標を定めておけば、どのプロセスがうまく対応できていないのかを分析して、対策を練ることも可能になります。

価値観やニーズの多様化への対応

近年は、多くの企業が働き方改革に取り組み、働き方や採用したい人材のニーズも変わってきました。また、若者のワークライフバランスややりたい仕事に対する考え方の変化など、求職者が求める価値観にも大きな変化が見られます。

このような中、求職者が就職や転職を考えた時に、候補として考えてもらうことが重要と考えられています。自社の働き方や社内の雰囲気などを発信することで、求職者自身の価値観やニーズと照らし合わせて興味関心を引くことができると、検討対象に挙がりやすくなります。

採用マーケティングを行うメリット

メリット
採用マーケティングに取り組んでいると、多くのメリットを感じることができます。ここでは、採用マーケティングを行うことで得られる具体的なメリットを3つ紹介します。

優秀な人材からの応募が増える

採用マーケティングは、企業の魅力を発信することで、興味・関心を持ったファンを獲得することができます。すぐには効果を発揮できない可能性もありますが、ファンが潜在的な応募者となり、将来的な採用につながることが重要と考えられています。

企業からの発信を見て、魅力を感じて応募してきた応募者であれば、入社後に高いモチベーションを維持し、高いパフォーマンスを発揮したり、向上心が高く成長してくれたりすることが期待できるでしょう。

自社にマッチした人材を効率的に探せる

企業が採用したいと考えているペルソナを想定した情報発信をすることで、自社に応募・入社してくる人材は、自社の採用したい人物像とマッチ度の高い人材である可能性が高まります。

自社の発信した情報に共感を持った人物が応募してくるため、選考途中や内定後の辞退を防ぎ、入社後のミスマッチによるモチベーションの低下や早期退職などにつながるリスクも低くなるでしょう。

自社の発信に興味・関心を持つファンは、将来的に応募につながる可能性があります。そのため、まだ応募に至っていない「転職潜在層」と呼ばれています。また、「潜在層の人材(タレント)を、蓄積しておく(プール)」ため、タレントプールとも呼ばれる、採用マーケティングの重要な考え方です。

採用コストを削減できる

採用マーケティングでは、採用したい人物像(ペルソナ)を定義し、対象を明確化したうえで情報の発信や、ダイレクトリクルーティングにつなげることができます。

企業からの発信はSNSやオウンドメディアなど、従来の採用方法よりも採用コストのかからない方式が採用されています。このため、採用コストを削減できる手法というメリットがあります。

また、企業からの発信には手間や時間がかかるりますが、発信した情報は蓄積することができ、将来的な採用につながるため、長期的に考えれば費用対効果は非常に高いと言えるでしょう。

採用マーケティングを行う手順

アイディアから成功まで
採用マーケティングは、大きく4つのステップに分けて行います。ここでは、それぞれのステップで実施する内容を紹介します。

1.自社と競合の分析

最初に、自社の経営理念や戦略を見直すことで、自社の長所と短所を認識します。自社の分析には、人事担当だけでなく経営層や実際に働く現場の意見も盛り込みましょう。

つづいて、競合他社の分析を行います。前述のとおり、競合とは自社に応募しようとしている人物が、並行して応募しそうな企業のことです。

分析には、マーケティングで使用される3C分析やSWOT分析などの分析手法を用いて行います。それぞれの分析手法の詳細は省略しますが、企業を見る人の視点を変えたり、強みや弱みなどの特徴ごとに分類したりして、企業のことを俯瞰して見ることが重要です。

2.具体的なペルソナの決定

ペルソナは自社が採用したいと考えている典型的な人物像のことです。実際に存在する人物である必要はありませが、あたかも存在しているかのように、性別や年齢、職業、年収、現在の仕事に対する悩みや期待などの詳細を設定します。

ペルソナが具体的であればあるほど、次の採用手法の検討段階で、より具体的な対応がイメージしやすくなります。

ペルソナは、ニーズの変化などの影響で変化する可能性があるため、最初はこだわりすぎず、あとから設定したペルソナを修正したり、複数のペルソナを設定したりしても良いでしょう。

3.採用手法の検討

設定したペルソナと、自社と競合分析の結果から得られたアピールポイントから、ペルソナに響く効果的な採用手法の検討を行います。

具体的な採用手法には、従来使用されてきた、求人サイトへの掲載や転職エージェントの活用などだけではなく、転職潜在層にもメッセージが届くようSNSやオウンドメディアを使った情報発信したり、求人サイト毎の特色に合わせた職種や年齢層を対象にしたアピールポイントの検討を行ったりするなどの手法が挙げられます。

4.施策の実行・改善

具体的な採用手法を設定したら、実行してみて効果を確認します。ここで重要なことは、それまでの採用プロセス全体の取り組みを確認し、次回実行に向けた改善案を検討することです。

採用した人材が社内で活躍できているかなどの結果だけではなく、対応中に発生した問題点や課題も見直し材料であることに注意しましょう。また、変化する採用市場のニーズを継続的に調査し、改善施策に反映できると、より効果的な改善効果を期待することができるでしょう。

採用マーケティングの主な手法は2つ

グラフのある書類
採用マーケティングで行う手法には、大きく分けて「広告」と「コンテンツマーケティング」の2つの種類があります。ここでは、2つの手法について詳しく解説します。

目的に応じて利用できる「広告」

「広告」は、その名の通り自社の活動や取り組みを、広く知ってもらうために、広告を活用する方法です。

広告と言っても、「リスティング広告」や「ディスプレイ広告」、「バナー広告」など、さまざまな手法があります。代表的な手法と、それぞれの概要は次の通りです。

リスティング広告

GoogleやYahoo!などの検索結果の表示画面に広告を表示してもらう手法です。自社の事業や活動に関連したキーワードを検索した場合のみ表示させるなどの指定ができます。

ディスプレイ広告

Webサイト内に用意された広告枠に自社の広告を表示してもらう方法です。表示する地域や年代を指定したり、自社のサイトを訪れたことのある人だけを対象にするリマーケティングを行ったりするなど、細かな設定が可能です。

バナー広告

ペルソナが興味・関心を持ちそうなWebサイトに、自社のバナーを掲載してもらう方法です。

ここではWeb広告に限定して紹介しましたが、駅の構内ポスターやデジタルサイネージなどのオフライン広告も、QRコードを掲載するなどしてWeb広告と連動して活用するパターンもあります。

自社のファンを育てる「コンテンツマーケティング」

コンテンツマーケティングとは、読者(ユーザー)にとって役立つ価値あるコンテンツを提供し続けることでリード(見込み客)の獲得を目指すマーケティング手法です。

単なる営業活動に終始するのではなく、つねに顧客目線でニーズをとらえる姿勢が重要です。コンテンツマーケティングで信頼を得た会社やその製品購買を通じて、最終的にはブランドや会社のファンとして育成していきます。

コンテンツマーケティングの大きな目的は、「自社と顧客との関係性を築き、LTV(ライフタイムバリュー)の長いファンを獲得する」ことです。

情報を発信する時のポイントは、利用者にとって「価値のあるコンテンツを作る」ことです。作成したコンテンツに共感を持ってくれたユーザーは企業にとってファンになり、就職や転職を考えた時の候補として認識してもらうことができます。

また、一度作成したコンテンツは資産として残り、継続してファンを獲得していくための武器になります。また、コンテンツを蓄積することが企業のブランドを作りあげ、自社を紹介する際に相手を引き寄せるツールとなります。

コンテンツマーケティング
の成功事例

採用マーケティングの主な手段

idea
採用マーケティングを戦略に落とし込み、自社の状況に合わせて具体的な施策を投下していく実効性を高めることが重要です。ここからは、採用マーケティングを成功させる情報発信の手段について、くわしく説明していきます。

潜在候補者へ企業の魅力をアピールする「オウンドメディア」

オウンドメディアは、企業が「自社で保有するメディア」の総称です。マーケティングでは自社のサイトやパンフレットなどをまとめた用語として使用されますが、採用マーケティングでは企業の日常を紹介するブログなどのツールやSNSの公式アカウントなどを指すことが多いようです。

オウンドメディアは、企業の技術や採用方針、会社の気風や社員に対する姿勢などを知ってもらうための窓口です。企業の情報を調べる際にホームページ同様会社の顔となり、採用活動を促進する武器にもなります。

また近年では、「採用オウンドメディア」という人材獲得の手法が注目されるようになってきています。広義の意味でのオウンドメディアではなく、採用に特化した自社独自のメディアを立ち上げ、会社の魅力や入社後のキャリアイメージを提供することで、入社意欲の高い人材を集める手法です。

採用オウンドメディアについては下記ページでくわしく説明しています。

採用オウンドメディア
の成功事例

Zenkenでも多くの採用オウンドを手掛けていますので、ご興味があれば下記フォームよりお問い合わせください。

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低コストで運用できる「SNS」

若者のSNS利用者の増加にともない、SNSを利用して採用マーケティングを行うケースも増えています。

SNSは主に次の用途で使われます。

  • 企業を認知してもらうための情報発信ツール
  • 採用専用サイトとしての活用

また、一部のSNSのアカウントは、アプリ等と連携して活用されるため、他のアプリで活用するためのキッカケとして利用しているケースもあるようです。

多くの場合、SNSは低コストで運用できるため、費用を抑えた採用マーケティングツールとしても注目されています。

ターゲットを絞って訴求できる「Web広告」

Web広告に多くの費用をかけている大手企業も少なくありません。採用メディアだけでは、会社が求めているような人材が集まりにくいこともあり、キーワードやLP(ランディングページ)を精査して最適化し、効率よくターゲットを集める広告として活用します。

ひとくちに広告と言っても、ディスプレイ広告やリターゲティング広告、リスティング広告や動画広告など、多くの手法があります。

人材採用の面でなにを優先するかによって、最適なWeb広告を選択することと、クリック単価やWeb広告の表示される場所、掲載期間など細やかな予算取りと運用が求められるため、多くの企業はWeb広告運用会社に依頼するケースが多くなっています。

Web広告を活用することで、まだ自社を知らない人材へのアプローチを可能にします。また、自社へ訪れたことのある人材へアプローチや、検索サイトで自社に関連する特定KWで検索した人へのアプローチなど、配信対象や目的を絞ってアプローチできることが最大のポイントです。

採用マーケティングに役立つツール

ソーシャルメディア
ここでは、採用マーケティングに役立つツールを大きく3つ紹介します。

サイトの利用状況を把握する「Google Analytics(アナリティクス)」

「Google Analytics」は、Googleが提供するサイトの利用状況を把握することができるツールです。

運営するメディアに対して、何件のアクセスがあったかはもちろん、日付や性別、年代等、利用者の特徴によって細分化した利用状況が確認できたり、レポーティングを行うなど、自社のメディアがどの程度活用されているかを知ることができたりします

利用状況を確認し、自社メディアの弱点や強みを把握し、改善案を検討する際の貴重な情報になるでしょう。

ニーズの把握に役立つ「キーワードプランナー」

「キーワードプランナー」は、Google検索で検索されたキーワードの中から、特定のキーワードの検索回数(検索ボリューム)を知ることができたり、指定したキーワードと類似した別のキーワードの検索状況が分かったりするWebサービスです。

これにより、一般の利用者が興味を持っているキーワードのニーズを知ることができ、自社のメディアにはどのようなキーワードを検索して来訪してもらうかのような導線を考えることができるようになります。

サイトの改善に欠かせない「ヒートマップ」

「ヒートマップ」は、自社メディアのうち、トップページやランディングページに設置し、ページを閲覧したユーザーの行動を知ることができるツールです。

具体的には、次のような情報を知ることができます。

  • どこをクリックしたか
  • ページの表示時間などから、どこに注目が集まっていたか
  • ページ内のどこまでスクロールして、どこでページを閉じたか

このように、ユーザーがメディア内のどこに興味があり、どこに興味が無いかを視覚的に知ることができます。

サイトを改善するためには、Webページ内のどこに問題があるかを知ることが重要となります。ヒートマップツールはユーザーが興味を持っているコンテンツを知ることを可能にするため、サイト改善には欠かせないツールとなってきています。

採用マーケティングを行う際の注意点

注意点やチェックポイント
採用マーケティングを行う場合、注意しておきたいポイントもあります。ここでは、採用マーケティングの注意点について大きく2つ紹介します。

目的に合わせて手段を選択する

採用マーケティングを採用する企業が増えてきたことで、インターネット上では具体的な成功事例やアイデアを見かけることができるようになりました。他社の事例を参考にして、取り入れようと考えている人もいるでしょう。

しかし、採用マーケティングは、あくまで手段であって目的ではありません。もちろん、他社で上手く機能した手法が自社にも当てはまるとは限りません。このため、自社の目的に合わせた手段を検討することが重要になります。

自社の魅力を活かして差別化する

採用マーケティングでは発信すべき情報も企業によって異なります。アピールポイントに独自性がなく、他社のサイトと似たようなものになってしまうと、利用者の印象にも残りません。

自社の魅力を活かす方法を検討して、利用者の記憶に残るアピールポイントを検討しましょう。

自社の魅力の発見には、4つの観点でアピールすることが有効と考えられます。

  • 企業理念・目的
  • 人・雰囲気
  • 仕事内容・事業内容
  • 特権・待遇

自社においては特別ではないことも、サイト利用者から見ると魅力的な特徴もあるかもしれません。職種や立場の異なる人からも意見を出し合って、自社の魅力を探してみると良いでしょう。

ファネルとペルソナの明確化が採用マーケティング成功の秘訣

メリット・注意点
採用マーケティングを行うにあたって、ペルソナが明確になっていると、各ファネルで対象となるユーザーをイメージしやすくなるため、具体的な対策を検討できます。また、ファネルに設定する採用プロセスが具体的であればあるほど、より具体的な対策を検討できるようになるでしょう。

採用マーケティングが成功するか否かは、採用したい人物像であるペルソナと対応を検討すべき採用プロセスであるファネルを明確に設定することが重要です。

そのためには、自社の事業やサービスをしっかりと分析し、現状を理解するところからはじめましょう。

採用マーケティングを導入したいがどこから着手すればいいかわからない、という場合は、一度Zenkenまでご相談ください。戦略立案からお手伝いさせていただきます。

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