機電系の学生が採用できない理由と対策・戦略のポイント
最終更新日:2024年05月29日
「機電」とは機械工学・電気工学/電子工学の総称で、機電系の学部・学科に所属している学生の採用は売り手市場となっており、企業側の採用成功のハードルは年々高くなっています。
この記事では、機電系学生の採用が難しい理由と、採用活動を成功させるための考え方や戦略などを解説していきます。なお、差別化を行いながら自社に相性の良い人材のみ集める施策として、ポジショニングメディアも紹介いたします。機電系の採用にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
機電系学生を採用できない理由
対策を見ていく前には、まず機電系学生の採用が難しくなっている理由を見ていきましょう。
様々な業界から求人がある
平成30年4月20日に発表された、経済産業省産業技術環境局の「理工系人材需給状況に関する調査結果概要」では、前年度よりも機械工学や電力などの分野で採用実績が少なくなっていました。
調査結果の「企業アンケート」で「5年後技術者が不足すると予想される分野」について尋ねたところ、第1位が機械工学(12.4%)と唯一10%を超える結果に。
不足の理由については、「他社が当該分野の採用数を増やしているため」「業務上のニーズが高いため」「団塊の世代等の退職」「業界全体の人手不足」が挙げられています。
機械系の学生は機械分野のみならずIT職や運輸・物流などさまざまな業界から求人が出されていることもあり、採用の難易度が高くなっています。
参考:経済産業省産業技術環境局「理工系人材需給状況に関する調査結果概要」(https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180420005/20180420005-1.pdf)
そもそもの学生数が少ない
調査結果の「5年後技術者が不足する理由」では、「当該分野で学んでいる学生が少ないため」が第3位として挙げられています。
企業が機電系学生を採りたいと思っても、学生数が不足しているために各業界から引く手あまたの状態となり、結果として学生側の売り手市場が生じています。
進路や就職方法が多岐にわたる
株式会社マイナビが実施した「2022年卒版就職企業人気ランキング」によると、機械・電気・情報系の学生の就職先にはソニーグループやトヨタ自動車、NTTデータなどの大企業が上位にランクインしています。
参考:2022年卒版就職企業人気ランキング(理系学科系統別)機械・電気・情報系(https://job.mynavi.jp/conts/2022/tok/nikkei/ranking22/rank_system.html)
機電系の学生はものづくり系からIT企業まで幅広い就職先が用意されていますが、就職以外にも大学院への進学・他大学への転学・留学を行うケースもみられます。
就職先の豊富さと進学や研究の道に進む進路が両方とれることから、機電系の学生の採用難易度は総じて高くなっています。
就活として行動する時期が早い
機電系の学生は就職活動と卒論に向けた研究を並行して行う傾向にあり、どちらも早めに準備を開始しています。
科目数にゆとりのある文系学生と違い早くに就職活動を始めることが予想されており、企業側も学生の就活タイミングに備えて早めに採用活動を開始する必要があります。
文系学生と同じタイミングで採用活動を進めていくと、機電系の学生の就活時期とずれ込み思うように採用が進まなくなるおそれもあるため、各大学や大学院の学生の動向を注視しましょう。
機電系学生の採用を成功させるためのポイント
機電系の学生は人数が少なく就活の時期も早いために、採用の難易度が高いことがわかりました。ここからは、採用を成功させるためのポイントをみていきましょう。
認知度向上のための活動実施
企業としての知名度があれば機電系の学生に強く訴求できますが、中小規模またはベンチャーなどの新興企業の場合、自社の認知度を向上させる広報活動を積極的に行っていきましょう。
ものづくりを得意とする機電系の学生は、企業の規模に関わらず将来性や最先端技術に魅力を感じる傾向にあり、有用性のある資源や技術の実現可能性にも注目しています。
そのため、企業の持つ最先端技術や最先端研究はそのまま学生に打ち出せる魅力となります。大々的にアピールを行い、自社の認知度向上に利用することをおすすめします。
具体的には、「自社がどのような技術を持っていて、入社後に学生が関わっていけるか」をアピールしましょう。
オンラインを活用した情報発信
Webサイトや求人サイトでの情報発信は、企業の情報を素早く収集したい学生にアプローチすることができます。研究や勉強に忙しい学生にとって、説明会やセミナーに出られる時間は限られています。
そのため、空いている時間で効率的に情報が集められるオンラインサイトは、学生の目に留まりやすいツールです。新卒採用の求人広告だけではなく、自社をアピールするためのWeb広告も積極的に打っていくと、他社との差別化に繋がります。
また企業のWebサイトを充実させると、検索エンジンに良質なサイトと判断されやすくなり、検索結果の上位にランクインさせることが可能に。
機電系の学生が検索するワードを分析し、自社の公式サイトやオウンドメディアにSEO対策を行って、学生の目に触れやすい位置にサイトを表示させると効果的です。
積極的なアプローチ
求人サイトで応募してきた学生と直接コンタクトをとったり、SNSで会社や採用担当者が直接情報を発信したりするアプローチも効果的。特にSNS上での発信は、息抜きがてらにSNSを利用する学生が多いためターゲットとなる人材への訴求効果が期待できます。
企業側からできるアプローチとしてはオンライン説明会(質疑応答つき)やSNS上でのやり取りが注目されていますが、さらに一歩踏み込んで「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれる手法でアプローチをかけることもできます。
機電系学生のスケジュールに合わせた採用活動の実施
就職活動は毎年3月1日より解禁され、それぞれの企業が広報活動を行います。学生も解禁日に合わせて就職情報を検索するようになるので、3月1日の前後から動きが活発化することを踏まえて、採用に向けた広報活動の戦略を立てていきましょう。
文系学生よりも研究室との繋がりが深い傾向にある理系学生の場合、求人サイトでの宣伝だけでは興味を引く効果が薄いことも考えられます。
そのため、就活解禁日に説明会やセミナーの情報を出しつつ、企業サイトや企業独自のPRにも力を入れ、場合によっては研究室へのアプローチや学生と直接話ができるSNSを活用する方法も検討したいところです。
機電系学生採用のための具体的な対策方法
機電系の学生は大学院や他大学への進学、卒業研究で多忙を極めるため、早めに就職活動を実行する人もいます。ここからは、機電系の学生を採用するための具体的な対策方法を確認していきましょう。
就活イベントへの参加
合同説明会・合同相談会・合同セミナーはいずれも新卒者や第二新卒者のための就活イベントです。求めている人材と出会える貴重な機会なので、採用のハードルが高い機電系関連企業はぜひとも出展を検討しましょう。
就活イベントでは学生に直接説明が行えるので、開放的なブースに興味関心を引くような出展を行い、パンフレットや冊子も事業内容や将来性が把握しやすいように工夫すると親切です。
機電系学生向けサイトでの情報発信
機電系の学生を採用するには、機電系の職種に特化したサイトに情報を掲載する方法がもっとも効率的です。
学生側も積極的に業界研究を行っているため、タッチポイントとして機電系学生向けサイトに自社の情報を掲載したり、SNSやその他のメディアに情報を掲載したりすることは長期的な視点で効果的。
ただし、機電系のサイトへの掲載は「他社との差別化」がカギになります。自社ならではの魅力や強みを打ち出し、業界内で優位性を持っている部分は大々的にPRするようにしましょう。
採用サイトやメディアの運用
機電系学生を対象とした採用サイトは、自社の魅力を伝えつつ採用や選考に関する具体的な情報を提示できる媒体です。採用に特化した内容ですが、先輩社員のインタビューや現場の仕事風景を盛り込み、他社との差別化を図りながら応募のページに誘導するとスムーズです。
特に近年注目されている「採用オウンドメディア」は、自社の理念・社長や役員のインタビュー・動画コンテンツによる会社や職場の紹介など他社にはない魅力を伝えるのに最適な方法です。
自社を魅力的に感じてくれる人材を獲得する戦略
自社の強みと相性の良い人材獲得のWeb戦略として、ポジショニングメディアというものがあります。
ポジショニングメディアではその名の通り、市場内における自社の立ち位置(ポジション)を明確にするためのメディアです。求人広告ポータルサイトなどで伝えにくい自社ならではの強みや魅力に焦点を当てることで、それに共感する求職者を集めることができます。
ポジショニングメディアの内容は、「自社の強み」に関心のある特定ユーザーに対して、自社をNo.1の選択肢として認知してもらう構成になっています。他の選択肢にも言及しながら「〇〇なら自社」という印象が残るように仕事の選び方などを啓蒙していきます。
その結果、相性の良いユーザーに「自分にあっている企業はここだ」と納得して自社を選んでもらうことが可能となります。
ポジショニングメディアは、自社への入社意欲が高く、定着しやすい人材を獲得する戦略です。自社の魅力がうまく伝わらない・知ってもらえない場合や、採用できても定着率が悪いといった課題がある場合には、ぜひ検討してみてください。
ダイレクトリクルーティングの実施
「ダイレクトリクルーティング」とは、直接的に学生とコンタクトを取って採用へ繋げる方法です。具体的には以下のような手法が挙げられます。
- SNSを活用してコンタクトを取る
- Wantedlyのような採用サービス上でコンタクトを取る
- セミナー・説明会を外部会場で実施してリクルーティングする
- セミナー・説明会を大学の近くで実施してリクルーティングする
- 自社でミートアップを開催して参加者にコンタクトを取る
- 社内の人間の知人・元同僚・元クラスメイトを紹介してもらう
- 産学連携中の学校を通じて生徒と直接対面できる機会を作る
これらの方法はダイレクトリクルーティングの一例であり、採用担当者が自らターゲットにアプローチする方法は他にも考えられます。
いずれの場合も営業力や広報力が問われ、コミュニケーションを通じてターゲットを引き入れる力が必要になりますが、採用活動だけで効果が得られない場合は積極的に検討したいところです。
大学研究室との接点強化
理系の大学生は研究室に所属しているため、教授との繋がりの中で就職を斡旋してもらうケースがあります。そのため、研究室との接点を見出すことで所属する学生に就職先として紹介される可能性があり、学生側も教授を通すことで自社に好印象を持ちやすくなります。
理系の採用は文系よりも難しいといわれていますが、大学主催イベントの運営に関わったり、キャリアやテクノロジーに関する講義・イベントを企画してPRしたりと、何らかのかたちで大学に関わることができれば研究室との接点が生まれます。
就職活動が解禁になる前から研究室との関わりが持てるように計画しておくと、その後の採用に活きてきます。
採用スケジュールの見直し
機電系の採用は難易度が高いため、当初のスケジュールより時間がかかるおそれがあります。タイトな採用スケジュールでは予定を超過するおそれがあるため、スケジュール通りにいかない場合はPDCAサイクルに従ってリスケジュールを行い、ターゲットとなる学生の動向に合わせた戦略を練っていきましょう。
一例として、選考が始まる6月前後からは学生の卒業研究が忙しくなってきます。仮に学業を優先されると、就職が決まっても内定を辞退されるおそれがあります。
就職活動がスピーディに終わるように採用スケジュールを構成しておくと、学生にとって魅力的な企業として捉えられる可能性があります。
マーケティングの併用で学生にアピールしよう
採用マーケティングには、大手の求人サイトや求人広告媒体に掲載する方法だけではなく、学生自身にアプローチする手法が効果的です。
特に機電系の学生は各業界から引く手あまたの状況であり、売り手市場であることも重なっているため、いくつかのマーケティングを併用してアピールを行いましょう。
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