【図解】SWOT分析とは?事例を交えて分かりやすく解説します
最終更新日:2024年04月24日
企業の経営戦略・マーケテイング戦略を考える際のフレームワークとして知られるSWOT分析。
この記事ではSWOT分析の基礎知識や、具体的な企業でSWOT分析を実践した事例なども含めて解説しています。
自社で実践される際のガイドとして参照してみてください。
SWOT分析とは?
SWOT分析とはマーケティングにおけるフレームワークのひとつで、強み・弱み・機会・脅威という4つの観点で自社商品やサービスを考査する方法です。
SWOT分析の4つの観点と参考例
4つの観点は下記のように分けられ、それぞれの項目の頭文字をまとめてSWOT分析と呼ばれています。
- 内部環境×プラス:強み(Strength)
- 内部環境×マイナス:弱み(Weakness)
- 外部環境×プラス:機会(Opportunity)
- 外部環境×マイナス:脅威(Threat)
商品の強みと弱みを分析し、かつ活かせるチャンスと売上に影響する懸念を見つけられます。一部事例を交えつつ各項目を具体的に解説します。
SWOT分析のS:強み(Strength)
自社がもつブランド力やサービスの特徴といった、マーケティング展開するにあたり強みとなる点です。得意分野など営業していく際に活かすことで利益を上げられます。
日本なら誰もが名前の聞いたことのあるメーカーの知名度は大きな強みです。自動車ならトヨタ自動車や日産、ゲームならソニーや任天堂などが挙げられます。あまり企業名や商品名が有名ではないケースでも、下記の点などは強みとなります。
- アフターサポートを24時間受付
- ルール外の要望へ柔軟に対応する
- エリアを限定すると同サービスを提供する他社はない
SWOT分析のW:弱み(Weakness)
強みとは反対に他の会社と比較すると勝てていない又は得意ではない部分が弱みです。接客業のサービス内容や製造業のコストなど、一見すると分かるケースもあれば詳しく調査しないと判断できない面もあります。
SWOT分析のO:機会(Opportunity)
世界情勢や世間の流れなど、商品やサービスを活かせるチャンスが機会です。提供するサービスによって機会は変わってきます。
新型コロナウイルスの影響で在宅率が増加し景気が悪化した企業も多くありました。しかし在宅ワークが増加したことで、パソコン機器や家具を取り扱う通信販売業者は大きくアピールできるポイントになりました。
SWOT分析のT:脅威(Threat)
機会とは反対に、世界情勢や世間の流れで提供サービスに悪い影響を与える点が脅威です。
近年の例をひとつ挙げると、ジェンダーの多様性で女性らしさや男性らしさを強調する商品の宣伝は難しくなっています。昔は可能だったアプローチが時代と共に変化しているケースに気をつけなければいけません。東洋経済オンラインでも広告の現状について下記のように難しさを解説しています。
また最近の炎上広告は、「女性でも判断が難しい」と思うものもある。
資生堂「インテグレート」(2016年)のCMは、女友達に「(25歳になったら)ちやほやされない」「カワイイという武器はもはやこの手にはない!」と言われたり、上司に「(頑張ってるのが)顔に出ているうちはプロじゃない!」とたしなめられる表現が問題視された。「結局女性は外見なのか?」「女は仕事ができても疲れた顔したらダメなんだ」と炎上した。
結果だけを見ると、「確かにこれはまずいね」という感想を抱くが、もし炎上前にこれらを見せられていたとしたら、自分はきちんと指摘できたか。商品が化粧品である以上、見た目の美しさに結論づけなければ広告にはならないし、似たような表現はこれまでいくらでもCM上にあったと思う。東村アキコ氏のマンガ『東京タラレバ娘』では、同じような会話が人気を博していた頃でもあった。
引用元:東洋経済オンライン「「炎上CM」を広告業界がやめられない明快な理由」(https://toyokeizai.net/articles/-/282823?page=3)
SWOT分析を行なう目的
SWOT分析で分析して発見した内容やデータを何に役立てるかは企業によっても異なりますが主に将来的な方向性の決定などに役立てられます。
注意として分析自体が目的になってしまわないように気をつけましょう。分析はプロセスのひとつであり、分析して見つかった課題や狙っていくべき戦略を役立てなければ意味がありません。
SWOT分析が役立てる例として下記が挙げられます。
- 広告戦略に活かすための弱みと強みを見つける
- 事業の方向性を変化に合わせる
- ライバル企業との差別化に必要なことを見つける
- 企業のブランディング戦略の方向性を考える
- 普段認識できていない点の再発見
経営・マーケテイング戦略に活かすための強みと弱みの発見
広告やマーケティング戦略は闇雲に高額な費用をかけて多くの人に見てもらえればよいわけでは限りません。多くに告知できれば当然売上は上がるものの、効率的な宣伝でなければコストが増加し利益が減少します。
もっている強みを必要とする人に向けて、ピンポイントで効率的な宣伝を行ない、少ない費用で利益を上げれます。
事業の方向性を外部環境の変化に合わせる
将来的な事業の方向性を定める際にも役立ちます。過去に安泰と思われていた企業が流行り廃りや社会情勢に合わせて、今までのような運営が難しくなるケースもあるのです。
昔は存在しつつも現在ではなくなった職業をいくつか見てみましょう。
古くでは個人宅のパソコンが普及する前に存在していたタイピスト又はキーバンチャーといった仕事は、現代では当たり前にもっている個人スキルのひとつになりました。
近年のデジタル化の発達で言うと雑誌の出版業者はアナログ誌のみではなくインターネットメディアも手掛けなければ利益を出していくのは難しい状況です。
他にも2020年に政府のデジタル推進で進められた脱判子も、業者によっては大きな業務転換が求められています。便利になると感じる方が多い一方で、判子のみを扱ってきた業種にとっては記念品やセレモニーとして活用できる商品を展開しなければ利益をだすのは大変になりました。
ライバル企業との差別化に必要なことを見つける
同業他社に差をつけるためには自社の強みを伸ばすのが重要です。主に内部要素が強く関わってきますが、下記の点は利益を上げるのに当たり前ではあるものの入念に分析しなければ簡単には見つけられません。
- 他社が提供していない商品やサービスを展開
- 顧客のニーズに対応する
- 人気が高まるセールスポイントに力をいれる
企業のブランディング戦略の方向性を考える
市場やポジショニングを認識していなければブランディングは簡単に成功しません。
より効果的な戦略を考える際には、SWOT分析で世間の情勢や自社で改善しなければいけない点を把握しておく必要があります。
普段認識できていない強みやリスクの再発見
商品やサービスの売上を上げるためには自社の分析が大きく戦略や方向性の決定に役立ちます。
下記のような点は経営に重要ですが、しっかり分析しなければ見逃してしまいがちです。
- 市場における自社のポジションとは?
- 自社がもつノウハウ
- リソースや資金に余裕はあるか?
SWOT分析の方法
SWOT分析について理解できたら、次は具体的に進めていきましょう。
- SWOT分析を行なう目的を定める
- SWOT分析の準備を進める
- 外部環境から分析する
- 内部環境分析する
- SWOT分析の表をつくる
- クロスSWOT分析を行なう
SWOT分析を行なう目的を定める
上記ではいくつかの目的を事例として掲載しましたが、企業やお店によって目的とする点は異なります。自社がなぜSWOT分析を必要としているのかを考えて沿った目的を定めましょう。
SWOT分析の準備を進める
SWOT分析を進める前に、外部環境や内部環境などのデータが必要です。準備として市場調査や自社の分析などを実施しておかなければいけません。
顧客のニーズも重要なデータで、アンケートの実施などで声を集めておくことも準備のひとつです。
SWOT分析は事前準備のデータが誤っていると方向性もブレてしまうため、事前準備のデータ収集が成功を左右させるポイントと言ってもよいほどです。
外部環境(機会・脅威)を分析する
データが揃ったら、ひとつずつ考えていきます。2021年1月7日に発出された2回目の緊急事態宣言によって売上に影響が出ている、東京都の飲食店を事例として挙げてみましょう。
機会(外部環境のプラス要因) |
---|
・時短営業に対する補助金が交付される ・宅配など業態転換の支援金制度がある(2021/2/26まで) ・営業時間短縮後もテイクアウトなどは協力金支給対象(2021/2/7まで実施分) ・初回時よりも危機を実感している人が少ない ・初回の自粛は自宅でお店の味を求めるニーズがあった |
脅威(外部環境のマイナス要因) |
---|
・飲食店の営業時間が短縮されている ・大人数での宴会を避けられてしまう ・顧客が人の集まるお店を避けてしまう ・時短拒否で罰金を支払う特措法改正案が検討されている |
多くの方が認識している内容もあれば、飲食店を経営していても業態転換の支援金などは知らなかったという方も多いのではないでしょうか。また初回の緊急事態宣言の際には、自宅でお店の料理を楽しみたいとのニーズがあったデータなどはアンケートで調査しなければ分からない点です。
事前準備の入念な調査で危機的な状況でもプラスとなる可能性が見えてくるケースがあります。
注意点として過去に調査したデータをもっている場合でも、情勢は常に変化するため現在でも同様に活かせるとは限りません。
内部環境(強み・弱み)を分析する
外部環境の分析が終わったら続いて内部環境の強みと弱みを分析します。外部環境と同様に東京都の事例で解説しますが、内部環境はお店によって大きく異なるのであくまで一例として参考にしてください。
強み(内部環境のプラス要因) |
---|
・食材にはこだわっている ・スタッフの接客教育に力を入れている ・顧客はリピーターが多い ・毎年宴会を入れてくれる企業や団体がある ・顧客は主に料理を気に入ってくれている |
弱み:(内部環境のマイナス要因) |
---|
・宅配やデリバリーの経験や知識がない ・業態を変える費用の余裕がない ・人気のあるメニューとないメニューの差が激しい ・注文を受けてから提供までに時間がかかる |
上記のような特徴をもっていたとして、外部環境と合わせて方向性を定めます。
顧客がお店に対してどう思っているか、提供までの時間などはあらかじめアンケート調査や市場分析しておかなければ把握できません。
入念に調査、分析するほど多くの方向性を検討できるようになります。
SWOT分析の結果を表にまとめる
分析データが揃ったら表にします。内容を列挙していくだけなので難しくありません。事例としてあげた東京都の飲食店の場合、下記の通りになります。
この表を使って具体的に分析していきます。
クロスSWOT分析を行なう
SWOT分析したデータを活用する際に役立つのはクロスSWOT分析です。複数を合わせながら将来の戦略を立てていきます。
クロスSWOT分析については、以下記事で詳しくご紹介しています。
【事例あり】クロスSWOT分析とは?分析方法・活用のポイント
簡単に事例を解説すると、下記のようになります。
「強み」と「機会」を組み合わせた戦略
常連客に対して未来チケットを発行し、当面の運営資金とする
↓
常連客や毎年利用してくれる企業に対してチラシやメルマガで告知
「弱み」を補いつつ「機会」を組み合わてつかむ
デリバリー代行業者と連携する
↓
接客で活かしたプラスアルファの心をつかむ挨拶書面を同封する
「脅威」を避けつつ「強み」を活かす
時短営業終了後にテイクアウト商品のみ販売する
↓
自宅でこだわりの高級食材メニューが食べられると宣伝
「弱み」を補強して「脅威」を避ける
営業時間中はひとりで食事する席を中心にする
↓
人気メニューのみに限定し、食材ロスを抑える
実際の企業でのSWOT分析事例
SWOT分析事例1:Apple(アップル)
日本でも多くの方が知っているiPhoneのメーカー、Appleを分析してみましょう。
Appleの強み
- 圧倒的なブランド力
- スマートフォンの先駆者となったiPhoneの存在
- フィットネスデバイスでシェアが大きいApple Watch
- パソコンのみに留まらないさまざまな製品の開発
Appleの弱み
- 製品価格が高額な設定
- iPhoneやMacと比較するとiPadの位置づけに苦戦
- スマートスピーカー事業の伸び悩み
Appleの機会
- スマートフォンアプリの発展
- 日本で3キャリアからのiPhone発売
- 世界的なガソリン車廃止の方向性
Appleの脅威
- 他スマートフォン、パソコンメーカーの存在
- スマートフォン市場全体の伸び悩み
Appleの戦略
MacとiPhoneで大きな利益を上げてきたAppleですが、スマートフォンのシェアが他社に抜かれるなどデバイスの販売では頭打ちとなっている部分があります
しかし現在では新しいiPhoneのみならず、App Storeやサブスクリプションを中心とした Webサービスの事業にも大きく力を入れており、電気自動車への参入も視野に入れていることが分かっています。
SWOT分析事例2:IKEA
日本でも人気の高い有数の家具メーカーIKEAが日本でシェアを広げた際の事例です。
IKEAの強み
- DIYとし組み立てのコストを削減
- 直接販売するサイトをもつ
- イラストのみの説明書で言葉の壁に影響されない
IKEAの弱み
- グローバル企業のため製品規格が日本に沿っていない
- アジアでのシェアが少ない
IKEAの機会
- 北欧商品のブーム
- 通販の一般化
IKEAの脅威
- 日本ではDIYに抵抗を感じる人もいる
- 日本の住宅は世界と比較すると狭い
- ニトリなど既に有名な家具メーカーが存在する
IKEAの戦略
日本らしい四季に合わせたイベントを開催するショールームを設置し、日本独自の広告宣伝活動を実施。競合の家具メーカーと差をつけるために接客にも力を入れ、店舗数も増加させました。
SWOT分析事例3:ヤマトホールディングス
日本での宅配業者といえば、真っ先に名前の出てくる最も有名な宅配サービスとも言えるヤマト運輸の事例です。
ヤマトホールディングスの強み
- 国内の宅配便といえばヤマトという強力なブランド
- 宅配事業のシェア率は高い
- 宅配以外の事業は関連性が低い
ヤマトホールディングスの弱み
- 宅配便事業の成長高止まり
- 通販事業拡大における人件費の上昇
ヤマトホールディングスの機会
- ネット通販の拡大
- 企業向けの配送が求められている
ヤマトホールディングスの脅威
- ドライバー及び倉庫スタッフの人材不足
- 物流業界はブラックというイメージ
ヤマトホールディングスの戦略
ヤマトホールディングスではヤマトの宅配事業の効率化に向け、2020年に宅急便のデジタルトランスフォーメーションとして戦略を打ち出しました。
利用者側として分かりやすい内容としては下記があります。
- ECに特化した配送サービスの導入
- 利用シーンに合わせた送り方や受け取り方の構築
- 受発注や在庫管理を含めたプラットフォームの提供
- コンビニや駅ロッカーなど自宅以外への指定場所配達
- 産地直送などをパッケージ配送商品の提供
通販というニーズや、受け取りの柔軟性など利便性を考慮した戦略を立てています。
経営・マーケティング戦略の要点
SWOT分析などのマーケティングフレームワークは、あくまで戦略を立てる参考にするために情報を整理するために使われます。フレームワークに当てはめたから必ず答えが見えてくるというものではなく、分析して考えることが重要です。
戦略を考える際にもさまざまなマーケティング手法があります。バリュープロポジションという考え方もそのひとつで、下記3点を満たした価値のことを指します。
- 顧客のニーズをとらえている
- 競合他社は提供できていない
- 自社であれば提供できる
他社は提供していないが自社なら提供できるというサービスは、差別化につながり大きな収益となります。しかし顧客のニーズを正確に捉えることが不可欠です。
SWOT分析からクロス分析を進めても具体的な戦略が見出せない場合には、バリュープロポジション戦略を意識してみるとよい答えが見つかりやすくなります。
ただし世間の雰囲気や情勢も把握しておかなければ、正確な顧客のニーズをつかめません。
バリュープロポジションを意識した戦略はZenkenへ
キャククルを運営するZenkenでは、バリュープロポジション戦略を得意としています。もちろん事前に必要な顧客ニーズの把握や市場調査などもワンストップで対応可能です。
分析してみたけれど最適な解決方法が出ない、分析の難易度が高くベストなマーケティング戦略がわからない、という方は下記からお気軽にご相談ください。