「サントリー」の販売戦略とは
最終更新日:2022年01月18日
ここでは、サントリーが展開している販売戦略について解説しています。独自のブランドを築き上げたサントリーならではの販売戦略には、参考となるポイントが数多く詰まっているようです。販売戦略を検討する際の参考にお役立てください。
また、貴社が市場でどんな立ち位置でマーケティング戦略を策定すべきかが分かる「市場分析シート」を無料でご提供しています。自社の強みを活かしたマーケティング戦略を立てたい方は、今後の戦略策定にご活用ください。
サントリーの販売戦略のポイント
ビールやウイスキーなどの酒類、お茶やジュースなどの清涼飲料水を中心とした事業をグローバルに展開しているサントリー。その販売戦略は、既成概念にとらわれない独自路線をいくものが多数展開されています。
創業以来受け継がれている「やってみなはれ」というチャレンジスピリッツ溢れる企業ポリシーに基づく販売戦略についてみてみましょう。
「見える化」による顧客起点の販売戦略を展開
サントリーでは、コロナ禍を境に大きく変化した顧客の価値観に寄り添った、ニューノーマル時代の販売戦略を行っています。
そのひとつが顧客ニーズの「見える化」です。以前よりも安全価値(非接触や密の防止など)・時間価値(店舗滞在時間の短縮やネットスーパーの活用など)・社会価値(リモート社会の加速によるオンライン上でのつながり)を重視する時代となり、単純に売れる商品を作るだけがよい販売戦略とはいえなくなりました。
こうした状況下において、いかにメーカーが顧客とのつながりを構築できるかが、今後さらに重要となるポイントといわれています。
サントリーは、販売構成比の大半が小売店舗であるため、ECサイトを主としている企業に比べて、顧客のバリュージャーニーの変化に対応した施策を打ち出しにくい課題がありました。
そこで、注目したのがDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れることによる、顧客体験価値の最大化です。リアルチャネル売上傾向の「見える化」で顧客理解を深め、顧客のファン化。さらには売上向上や物流の最適化、在庫の適正化を図り、最終的に全体のコスト低減を目指しています。
この販売戦略には、ID-POSや品目別の売上データを活用し、どのような顧客がどの商品を購入したかを分析・把握。顧客を起点とするマーケティング戦略に役立てています。
入念な市場調査と柔軟性で「多様化する嗜好」に応える
サントリーでは、より顧客ニーズに応える商品を市場に届けるために、市場調査やデータ分析に注力しています。
サントリーにとって、昨今のコロナ禍の影響による飲食店の酒類提供の自粛は大きな打撃となっていますが、サントリーは、柔軟性のある販売戦略を得意としているため、方向転換が巧みです。時代の流れを読みながら方向性を変えて進んでいけるのはサントリーの強みと言えるでしょう。
酒類においては、今後しばらくは自宅でお酒を楽しむスタイルが続くと予測し、ビールだけでなく、チューハイやハイボール、ノンアルコール商品などのラインナップを充実。また、自宅で上質なビールが楽しめる神泡サーバーや、プレミアムビールなどの高級志向の商品も積極的に販売しています。
一方、酒類と並ぶ主力事業である清涼飲料水類では、淹れたての風味にこだわった「伊右衛門」や自然本来のおいしさを活かした「サントリー天然水」がともに売上好調です。
近年の健康志向ニーズに合わせ、トクホ認定の「特茶」の販売や、サントリー天然水スパークリングシリーズのリニューアルなどを実施。このようにサントリーでは、顧客のニーズと多様化する嗜好を的確にとらえた販売戦略を展開しています。
「顧客との接点を作る」ためのプロモーション戦略
サントリーは、有名人の起用で視聴者を惹きつけつつ、巧みに商品を訴求するCMに定評があります。しかし、近年はデジタル化を意識し、顧客との接点を作るツールとして、デジタルプロモーションに注力。YouTube公式チャンネルやTwitter、InstagramなどのSNSアカウントからの情報発信を行っています。特に、ソーシャルメディアを使いこなしているZ世代のリーチ拡大が目的です。
バリエーション豊富な情報発信で、商品やブランドの認知度・好感度の向上を図り、実店舗での購入につなげています。
サントリーの販売戦略まとめ
サントリーの販売戦略は、時代や顧客ニーズの変化に対して的確であり、ときに斬新な手法を組み合わせながら実践されています。売上が不調だからあきらめるのではなく、売れるにはどうすればよいかを考えて販売戦略を見直すのが特徴です。大企業でありながら柔軟性のある姿勢がサントリーの安定した売上のカギと言えるのではないでしょうか。
また、サントリーでは、デジタル化の流れにも敏感に対応しています。デジタル化はどの業界・企業においても避けて通れないものとなりつつあるため、これからは、サントリーのように自社の特徴を把握したうえで、デジタルデータに基づいた「顧客体験価値の最大化」を図る販売戦略の立案・実践が必要といえそうです。