「ニトリ」の販売戦略とは
最終更新日:2022年01月18日
ここでは、ニトリの販売戦略を3つのポイントにまとめてご紹介しています。販売戦略を検討する際の参考にお役立てください。
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ニトリの販売戦略のポイント
「お、ねだん以上。」のキャッチコピーで有名なニトリの販売戦略は、家具・インテリア業界では大変稀なものといわれています。着実に市場シェアと売上を伸ばしているニトリは、どのような販売戦略を行ってきたのか、詳しくみてみましょう。
逆転の発想によるコストリーダーシップ戦略
低価格を実現することで、市場シェアの拡大を図るコストリーダーシップ戦略を取り入れているニトリ。
コストリーダーシップ戦略は、過度な低価格を追求してしまうと、利益を圧迫するリスクがあります。そのため、通常であれば市場シェアや売上の高い企業でなければ取り入れることが難しいものです。しかし、ニトリは市場シェアを伸ばす前から、独自のビジネスモデルを構築しつつコストリーダーシップ戦略を取り入れていました。
その原点は、会長の似鳥氏が「業界の常識」に疑問を感じたことです。家具・インテリア業界では、製品価格が業界のコストによって決められるというのが常識でした。つまり、企業本位でのコスト設定といえます。その常識を覆せば勝てるのではないかと考えた似鳥氏は、顧客が納得するような低価格の実現を目指した販売戦略に舵を切ったのです。
ニトリのコストリーダーシップ戦略のカギとなったのは、家具・インテリア業界では論外とされていた海外拠点とSPAビジネスモデルの構築です。ニトリは、1980年代に海外拠点の構築に乗り出しました。当時は海外ビジネスのノウハウがなく悪戦苦闘の連続だったようです。
しかし、努力が実を結び1989年にシンガポールでの法人設立に成功。海外拠点を中心に展開するSPAビジネスモデルを構築したことで、競合他社以上の低価格と利益率を確保できるようになったのです。
競合他社と一線を画したSPAビジネスモデルによる差別化戦略
ニトリは、家具・インテリア業界では珍しいSPAビジネスモデルの構築によって、競合他社に対する差別化戦略にも成功しています。
ニトリでは、SPAによって競合他社よりも低価格の製品を提供できるようになりました。しかし「安かろう・悪かろう」ではなく、今まで消費者が割高に感じていた他社製品の同機能低価格化を実現させたため、消費者ニーズに見事マッチし、徐々に支持や認知を高めていったのです。
また、SPAは低価格だけでなく高い利益率も実現。ニトリの利益率はここ数年右肩上がりで、家具・インテリア業界の平均を大きく上回っています。しかも、業界内に同業種が少なく、市場競争がほとんどないこともニトリの成長に大きく関係しているといわれています。
「住まいの豊かさ」を伝える手段としての自前主義プロモーション戦略
ニトリの認知拡大の起爆剤なった「お、ねだん以上。」というユニークなキャッチフレーズは、いまやニトリの代名詞ともいえるのではないでしょうか。このキャッチフレーズもプロモーション戦略から生み出されたものです。
ニトリでは、販売戦略の一環となるプロモーションもすべて自社で手掛けています。折り込みチラシやカタログ、テレビCMなどのマス広告、アプリやECサイトなどのデジタルプロモーションまで「自前主義」で展開しているのです。
ニトリにおけるプロモーションは、「売るためのもの」ではなく「住まいの豊かさ」を消費者に伝えるコミュニケーションツールと位置づけられています。商品企画から店舗運営まで、企業一丸となって検討を重ね、効率的かつ効果的なコミュニケーションを追求しているのです。
自社の製品を使う・買う消費者とのコミュニケーションの追求が、ニトリのブランディングにつながり、ロイヤリティの醸成にも役立っているといえます。
ニトリの販売戦略まとめ
「逆転の発想」ともいえるニトリの販売戦略は、家具・インテリア業界の常識に疑問を抱いたことが原点でした。企業本位という常識を180度覆し、消費者の求める価値を提供することを追求し続けた結果が、今日のニトリのブランディングやロイヤリティにつながっているといえます。
世の中には様々な販売戦略やマーケティング戦略がありますが、一見自社には合わない戦略のように思えたとしても、そこであきらめるのではなく、もう一歩踏み込んだり、違った切り口から捉えたりすると、新しい気づきやビジネスチャンスを見つけ出せるかもしれません。