コーセーのデジタルプロモーションについて調査
最終更新日:2022年01月18日
イベントでの「プロジェクションマッピング」演出で幻想的な空間をつくったり、2次元コードなどを融合して実店舗での購入につなげたりと、さまざまなデジタルプロモーション戦略を仕掛けて成功をおさめてきた、大手化粧品メーカー「株式会社コーセー(以下コーセー)」。
ところが、新型コロナウイルスが流行しはじめてから店舗へ足を運ぶ人が激減。感染拡大防止の動きから全国各地でのイベントもほぼなくなり、これまで行っていたようなプロモーションができなくなってしまいました。
激しい環境変化が起こてしまった今、コーセーはどのようなプロモーション戦略でユーザーを惹きつけているのでしょうか。
ここでは、コーセーが取り組むデジタルプロモーションについて考察していきます。
コーセーのデジタルプロモーションのポイント
コロナショック以前から、コーセーはBtoC向けのMA(マーケティングオートメーション)を導入し、顧客ごとにパーソナライズされたメッセージを、適切なタイミングで届ける戦略をはじめていました。
メールやDM、LINEなど、情報を届ける手段に連携シナリオをつくり、さまざまなチャネルから柔軟に配信するという仕組みを構築。さらに、フォローメールやDMの「最も効果の高い購入後の日数」を分析し、最適なタイミングで情報を発信することでリピート率のアップに成功していました。
オンライン顧客、オフライン顧客ともに共通して展開できるアプローチの追求が、コロナ禍にも活かせるマーケティング戦略の基盤となったのです。
全ブランド統合を目指したEC戦略
コーセーは、オンラインサイトにECサイト構築パッケージを導入。さらにレビュー最適化ツールを公式ECサイトに導入して、ブランドを横断した顧客接点の強化を図りました。ECサイトの会員、LINE会員といったさまざまなツールの会員を統合管理しながらプロモーションを制御しています。
また、これまでEC機能のなかったブランドに機能を追加し、ポイントプログラムをスタートしました。そのほかにも、以下のような戦略を打ち出してオンライン・オフラインの顧客に多角的なアプローチを行っています。
オンライン会員登録でサンプル配布
店頭で会員登録をしていた人がオンラインでも会員登録をすると、新製品のサンプルやプレゼントを配布する取り組みを行いました。
オフラインの顧客をオンラインにも引き込むことで、店頭に足を運ばなくても商品のPRができるように。会員情報をオンラインにシフトすることで、コーセーブランド全体としてのLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を上げる目的にもつながっています。
スタッフの商品レビューをサイトに反映
実際の店舗スタッフやブランド担当者が、レビュアーとしてスキンケア商品やメイクアップ商品のレビューを投稿。ユーザーは肌の悩みや年代といった条件検索をしながら、そのレビューを参考にして商品を探せるようになりました。
さらに、眉のメイク方法や化粧の直し方などの動画コンテンツを充実させ、実店舗に足を運ばなくてもメイクに興味のあるターゲットに対してアプローチ。商品を「購入したい」と感じるきっかけづくりからECサイトへの流入を図っています。
メイクアップシミュレーターで非対面の販売に対応
ECサイトにARやAI技術を駆使した「メイクアップシミュレーター」を導入し、オンライン環境の中でメイクアップ商品を選んでもらうという課題を解決しました。また、店舗を訪れたものの、感染防止策によって直接商品に触れられない顧客に対してもシミュレーターを推奨しつつ、個包装サンプルを配布して感染リスクを減らしています。
顧客とのコミュニケーションにInstagramを活用
コーセーの公式Instagramでは、コーセー社員やメイクアップアーティストがインスタライブに出演して、リアルタイムで情報を配信。商品の質感やつけ心地について細かく紹介する、ライブ中に質問に答えるなど、顧客と直接コミュニケーションをしながら商品の魅力について伝えています。
また、商品の写真を投稿してくれているユーザーの写真をリポスト形式でシェア。公式アカウントからタグ付してリポストすることで、ユーザーとのコミュニケーションにもつなげています。SNSのリアルな声を商品選びの参考にする、若い世代の検索行動に則したマーケティング戦略と言えます。
コーセーのデジタルプロモーションまとめ
顧客との接点をデジタルで一元的に管理しつつ、対面のアドバイザーや販売員、オンラインサイト、SNSなど、これまでのチャネルをもれなく活用することで、コロナ禍の苦境を乗り切っているコーセー。
百貨店での購入が主な顧客に対し、オンラインでも気軽に購入できる環境を整えたことで、今までオンラインで購入していなかった顧客の新規購入にも上手くつなげています。
コーセーのように、デジタルプロモーションは従来のオフライン顧客をオンラインにシフトするだけでなく、新たな顧客や潜在層に対し、商品・サービスの魅力を効率的に届けることができます。
プロモーション戦略に課題を感じている方は、広告を掲載する場所や種類だけでなく、各広告の管理状況やSNSでのプロモーション方法、顧客との結びつきについても見直してみると良いかもしれません。