マーケティングにおけるターゲティングとポジショニングの違い

マーケティングにおけるターゲティングとポジショニングの違い
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マーケティングのフレームワークであるSTP分析

マーケティング戦略・活動は、一般的に次のプロセスを経て展開されます。

マーケティングプロセス 意 味
① R―Research (リサーチ) 市場・競合・自社の分析
② S ―Segmentation (セグメンテーション) 分析結果に基づいて市場をセグメント(顧客層)に分割
③ T―Targeting (ターゲティング) 顧客層から自社のターゲットを選択
④ P ―Positioning (ポジショニング) 市場における独自の立ち位置(ポジション)を確立
⑤ MM―Marketing Mix (マーケティングミックス) マーケティング戦略の立案
⑥ I ―Implementation (インプリメンテーション) 立案したマーケティング戦略の実行
⑦ C―Control (コントロール) マーケティング活動の管理(評価・改善)

上のマーケティングプロセスは、「近代マーケティングの父」と呼ばれる経営学者フィリップ・コトラーにより、他学者・コンサルタントらの提唱した個別理論をフレームワークとして確立されました。「R・STP・MM・I・C」と略されます。

「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」を合わせたSTPは、マーケティング戦略を立案するためのフレームワーク(枠組み)です。本記事ではSTP分析の中で特に重要な「ターゲティング」と「ポジショニング」について解説します。

ターゲティングとは?

ターゲティングとは自社の商品・サービスを販売したい顧客(ターゲット)を選択するマーケティング活動です。ターゲティングはマーケティング戦略においてなぜ重要で、実施するとどんなメリットがあるのでしょうか?

ターゲティングの重要性

ターゲティングは、自社商品・サービスの価値を求める顧客に対して効率的に販売するために重要です。

現代は物質的に豊かで、消費者の価値観の多様化しています。単純に質が高かったり価格が安かったりするだけでは、商品・サービスがなかなか売れなくなりました。消費者は同じ商品のカテゴリーの中から、自分の求める付加価値を含む商品・サービスを選んでいます。

例えば飲み物を製造・販売するとしても、若年層と高齢者とでは求める価値が異なります。若年層は刺激のあるエナジードリンクや炭酸飲料を求め、高齢者は健康に良い水やお茶を好む傾向があるでしょう。

また同じ消費者であっても、日常的に飲む物やスポーツのあとに飲む物、集中したいときに飲む物や特別なお祝い事の際に飲む物など、さまざまなニッチがあります。

自社の商品・サービスの価値を求めていない消費者へいくら宣伝しても、購入してくれる可能性は低いです。つまりターゲティングは、消費者に購入してもらえるために重要です。

ターゲティングのメリット

ターゲットを絞ると商品開発から販売経路、広告宣伝、営業方法の無駄を省き、少ないコストで販売数を増やせます。ターゲットが明確に定まっていなければ、マーケティング全体が紆余曲折し、コストが高騰してしまいます。その結果、本当に購買意欲のある顧客に情報を伝えきれなくなり、利益が得づらくなります。

またターゲットをしっかり絞れば、ターゲットの購買行動を分析することで商品・サービスの欠点を改善したり、ターゲットを見直したりすることが可能です。たとえば高齢者向け商品の販売が伸び悩む場合、商品の価値が認知されていないことになります。そこでパッケージや広告戦略を見直したり、味を変えたりするといった改善策が打ち出せます。

反対にターゲットをあえて変えることで、商品が爆発的に売れることもあります。たとえば、もともと30代~50代向けに開発した商品が何らかの理由で一定数の若者から支持されているとしましょう。その場合、若者がアクセスしやすいWeb広告を配信すると認知度が高まり、販売数を伸ばすことが可能となります。

ポジショニングとは?

ポジショニングとは?

ポジショニングとは、市場における独自の立ち位置(ポジション)を確立するマーケティング活動です。独自のポジションとは商品・サービスの提供する付加価値や強み、魅力、ユニークさ、とも言えます。

マーケティング戦略において、なぜ重要でどんなメリットがあるのでしょうか?

ポジショニングの重要性

ポジショニングは、自社商品・サービスを競合から差別化し販売数を増やすために重要です。

たとえばファストファッション業界において、ユニクロは低価格でシンプルデザイン、ZARAは流行に敏感なのに手軽、しまむらは多品種で全て安価と、ポジションが明確です。

同じ消費者であっても普段着をユニクロで、イベント衣装をZARAで、部屋着をしまむらで買うといった使い分けをします。

ポジションが明確であれば、自社の商品・サービスの魅力がターゲットである顧客によく伝わります。

ポジショニングのメリット

市場におけるポジションが明確であれば、「〇〇といえば〇〇」と、消費者に認識されやすくなります。また、自社の価値を求める一部の消費者が固定客(ファン)になってくれます。両方が、長期的に安定した売り上げに繋がります。

しまむらのシャツを気に入った消費者はリピートしてシャツを購入するだけではなく、アウターやパンツも購入するようになり自分の家族にも購入を勧めてくれます。

またポジショニングに成功すると、他社の商品・サービスと争う必要がなくなり独自の価格設定をできます。

たとえば、ZARAのファッション性を認める消費者は、ユニクロやしまむらの価格設定を求めていません。一方、しまむらの安さを求める消費者は、ユニクロやZARAのデザイン性を求めていません。

「自社ならではの」付加価値は相対的な順位ではなく、絶対的でユニークです。ポジショニングを明確にすること、付加価値を広告キャンペーンの内容やデザイン、販促キャンペーンの打ち出し方などをより効果的なものにすることができます。その延長線上には、企業や商品のブランディングがあります。

ターゲティングとポジショニングの違い

ターゲティングとポジショニングの違い

STP分析に使われるターゲティングとポジショニングは、どちらも集客・販売の向上を目的としています。しかし対象や方法が同じではありません。

ターゲティングで自社の顧客を特定する

ターゲティングの対象は、ターゲットである顧客のニーズです。STP分析を提唱したコトラーは、ターゲットの選択パターンを3つに分類しました。

選択パターン 意 味
無差別型ターゲティング 特定のターゲットを定めずに画一的な販売戦略を展開する
差別型ターゲティング セグメントごとに適した販売戦略を展開する
集中型ターゲティング 特定のセグメントをターゲットとして販売戦略を展開する

ターゲティングの代表的な方法は、6R分析です。6つの分析指標の頭文字がRであるため、6Rとよばれます。

6R分析 意 味
Realistic Scale 現実の市場規模 (利益を獲得できる大きさの顧客層)
Rival 競合他社 (競争相手の少ない顧客層)
Rate of Growth 成長規模 (今後の需要が見込まれる顧客層)
Rank/Ripple Effect 波及効果 (周囲への影響力が高い顧客層)
Reach 到達可能性 (商品・サービスの営業・販売ができる顧客層)
Response 測定可能性 (営業・販売の効果測定ができる顧客層)

ポジショニングで顧客に魅力を伝える

ポジショニングの対象は、自社の立ち位置(ポジション)です。市場における立ち位置は、商品・サービスの付加価値や魅力、強み、ユニークさによって決まります。

ポジショニングの代表的な方法は、ポジショニングマップです。ポジショニングマップを作成する前に、まず消費者の購買決定要因(Key Buying Factor=KBF)を抽出しましょう。抽出したKBFから、自社の商品・サービスが競合よりも優れているKBFを2つ選びます。

選んだ2つのKBFをX軸・Y軸とするマップを作成し、自社と競合をマッピングしてください。

ポジショニングマップに表すことで、市場における自社のポジションを視覚的に表すことができます。もしマップ上で自社が競合よりも優位に立てない場合には、KBFを選び直しましょう。

ただし顧客の購買行動を大きく左右する要因(商品・サービスの価値)で優位に立てなくては、販売数を増やすことはできません。

セグメンテーションによる分析も忘れずに

ターゲティングとポジショニングをする前に、セグメンテーションにより市場を適切に分割することを忘れてはなりません。なぜならセグメント(顧客層)が適切でなくてはターゲットやポジションが定まらず、自社商品・サービスの価値を求める顧客へ効果的に宣伝・販売することができないからです。

セグメンテーションの対象は、市場のあらゆる消費者です。ニーズに従って全消費者を分割する方法として、4つの指標が用いられます。

指 標 セグメント
人口統計 年齢・性別・家族構成・職業
地理 地域・人口密度・住まい・文化・行動範囲
社会心理 ライフスタイル・価値観・パーソナリティ・購買動機
行動 購買活動・購買心理・購買契機

細分化したセグメントが適切であれば、ターゲットとなる顧客層を定めて自社の商品・サービスのポジション(価値)を明確に示した販売戦略を立案できます。

ターゲティングをポジショニングで効果的に集客・販売しよう

ターゲティングをポジショニングで効果的に集客・販売しよう

ターゲティングとポジショニングの違いを理解したうえでマーケティング活動を行うと、効果的に宣伝・販売をすることができます。セグメンテーションを含めたSTP分析を自社マーケティング戦略に取り入れましょう。

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