ヤマダ電機の経営戦略・マーケティング戦略とは
最終更新日:2022年06月17日
家電量販店業界の売上高1位と、業界トップを走るヤマダ電機(ヤマダホールディングス)。コロナ禍の巣ごもり需要や特別定額給付金も追い風となり、2021年3月期決算は売上高1兆7525億600万円と、前年同期比の8.7%増となりました。
新型コロナウイルスによるインバウンドの激減やEコマース、ネット通販の台頭による脅威の中、ここまで売り上げを伸ばしているのには、どのような理由があるのでしょうか。この記事では、ヤマダ電機の経営戦略・マーケティング戦略を考察しながら、そのポイントについて解説しています。
また、この記事と合わせて自社がどのような経営戦略・マーケティング戦略を打ち出すべきかがわかる「市場分析シート」を無料でご提供しています。自社の強みを活かした戦略を立てみたいと思っている方は、ぜひダウンロードしてみてください。
ヤマダ電機の経営戦略のポイント
ヤマダ電機の経営戦略の主軸は、他社よりもいかに低いコストを実現するかという「コストリーダーシップ戦略」です。
それに加えて、現在力を入れているのが家電製品以外の商品の販売。顧客へさらなる価値を提供するために、「生活基盤産業としての新しい業態」を推進しています。
業界全体の低価格化
ヤマダ電機が首位を独走している理由は、家電量販店業界の構造的な「からくり」にあります。
家電量販店に並ぶ家電は、どの店で購入しても商品そのものは同じで、ブランドや品質に差はありません。つまり、消費者に違いをアピールする点が価格に絞られるため、家電を低価格化することでしか他社と差別化できないのです。
そこで資金力が豊富なヤマダ電機は、一度に大量の家電を買い付けて低価格で商品を販売できるようにしました。この動きにより、競合他社も低価格競争の波に巻き込まれることに。市場で価格決定権を握ったヤマダ電機は、家電業界の価格競争における優位性を確立しました。
オリジナル家電で利益率アップ
ヤマダ電機は、メーカーが製造した家電を仕入れて販売するだけでなく、製造小売事業にも乗り出しました。使いやすさにこだわった自社のオリジナル家電の企画から開発、販売までを行っています。
ヤマダ電機のオリジナル家電ブランド「RIAIR(リエア)」は、機能をシンプルに絞ることで開発・製造コストを抑えた家電やアイテム。ほかのメーカーよりも低価格帯で売り出されていることから、ひとり暮らしの若い世代を中心に人気です。
メーカーや卸を介さずに直接製造を行いブランド化することで、粗利益率を向上させています。
住宅・家具メーカーを子会社化
ヤマダ電機は柱とする家電量販とは別に、業界の先陣を切って住宅・家具業界に進出しています。
2012年に住宅機器メーカー、2018年には住宅メーカーを統合・子会社化、その翌年には家具販売の「大塚家具」を子会社化。家具やリフォームなども取り扱う新業態店「インテリアリフォームYAMADA」をオープンさせました。
インテリアリフォームYAMADAは、家電のみならず、家具や生活雑貨など生活インフラを支える商品・サービスを充実させて、「家1軒をまるごとサービスする」を具現化した店舗です。生活に関することなら「ヤマダに行けばなんでも揃う」という独自の価値を築くため、あらたな業態の確立に力を入れて取り組んでいます。
ヤマダ電機の経営戦略まとめ
その資金力の豊富さから「市場におけるコスト面」での優位性を確立し、事業を拡大させてきたヤマダ電機。自社のオリジナル家電を開発・販売することによって、利益率の向上を実現しています。
家電の低価格化や人口減少によってさらなる競争激化が予測される中、ヤマダ電機は既にに価格に頼らない、一歩先を見据えたマーケティング戦略をはじめました。家電だけでなく、家具や雑貨などの生活インフラがすべてそろう業態へシフトして、独自のポジションを築こうとしています。
ヤマダ電機のように、独自の価値を見出して「市場における立ち位置を決める」ことは、生き残る上で非常に重要です。集客や売上について見直したい、課題を解決したいという方は、まずは自社ならではの価値や魅力とは何かについて考えてみてはいかがでしょうか。
経営戦略の立て方と成功事例、戦略策定に役立つフレームワークについて詳しく知りたい方は、ぜひ下記の記事もご覧ください。