freeeの経営戦略・マーケティング戦略を分析
最終更新日:2022年07月15日
個人事業主や小規模事業者向けに、クラウド会計ソフトを展開しているfreee株式会社。
2012年7月に設立して以降、成長を続け、2019年12月には東京証券取引所マザーズ(現東証グロース市場)への新規上場を果たしました。
freeeは、どのような経営戦略に取り組んで急成長を遂げたのでしょうか。この記事では、freeeの経営戦略・マーケティング戦略について分析してみました。
freeeの経営戦略のポイント
freeeは、「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げている企業です。
それを体現すべく、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」をビジョンとしてさまざまなサービスを展開しています。
複業ビジネスの流行を事業機会に
「メルカリ」や「Uber eats」などのシェアリングサービスが流行しはじめた2010年代半ば。
働き方改革が進む一方で「副業」や「複業」ビジネスをはじめる人も増えてきました。
freeeはその流れを事業機会と捉え、「開業freee」というサービスを開始します。
副業をする人が増えると、個人事業主になる人が増えて、確定申告をしなくてはならない人も増える、と考えたからです。
そこで、副業やシェアリングサービスをする人が必ず使っているスマホやタブレット向けにサービスを最適化し、スマホひとつで確定申告ができるようにしました。
また、個人事業主や小規模事業者の「予算が潤沢ではない」との声を受け、毎月少額の料金を支払えばサービスを受けられるよう、料金形態をサブスクリプション化。
リーズナブルで使いやすい会計ソフトを少額で利用できると話題になり、爆発的に認知度を高めていきました。
インハウスマーケティングを貫く
freeeは、Google広告やYahoo!プロモーション広告、SNS広告などの主要な広告運用を、社内のマーケティングチームで継続することにこだわっています。
その理由は、「個人事業主の会計」という特殊な領域で、最も顧客を理解しているのは自社だ、と考えているからとのこと。
ときには外部のアドバイスを受けながらも、さまざまなマーケティング施策を社内の資産として蓄積していき、自社のプロモーション力も高めていきました。
その結果、顧客獲得単価(CAC)を改善し続けて成果につなげています。
カード事業に参入
だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォームを実現するため、freeeは新たな事業戦略を掲げています。
カード事業に参入して、カードの支払いに関する経理業務を自動化するだけでなく「freee会計」内のデータを活用して与信を行い、個人事業者がカードを使えるようにするというものです。
これを利用すると、カードで行われた経費精算やワークフローと会計ソフトが連携するため、カードを使用する機会を高めることができます。
リアルタイムに支出を可視化できるため、経営管理がしやすくなるほか、高額与信提供によって資金繰りの改善まで提供できるようになります。
クラウド会計ソフトサービスとクレジットカード事業の連携によって、事業領域の幅をさらに広めようとしています。
freeeの経営戦略まとめ
freeeは「働き方改革」や副業ビジネスの流行に目を向け、個人事業主や小規模事業者に特化した会計ソフトを提供して成功を収めました。
リーズナブルな価格で導入しやすいサブスクリプション型の料金体系も、予算の限られた事業者に受け入れられています。
2017年9月時点で、利用事業者は延べ100万社を突破しているそうです。
また、社内では広告運用を自社で完結させる「インハウスマーケティング」を継続しており、成果向上に貢献していると分かりました。
今後は、カード事業への参入でもスモールビジネスを展開する人々に、大きな価値を提供していくと期待されています。
参照元:freee株式会社「シェアNo.1「会計freee」の評判は?利用者の声まとめ」(https://www.freee.co.jp/kb/kb-accounting/reputation-of-freee/)
freeeのようにニーズやトレンドをいち早く把握して、勝機のある分野で集中してシェアを獲得していくのはマーケティング戦略として有効です。
シェアを獲得してブランドを確立、「〇〇といえばこの会社」という認知が広まることで、経営の基盤ともなる安定した売上の獲得が実現できます。
誰に向けて、自社がどういった価値提供をするのか。競合を含めた市場全体の中でのポジショニングを明確にできれば、自ずとその価値を求めるユーザーに選ばれるようになります。
ターゲットに対してどのようなアプローチをすればよいか、広告・プロモーションやマーケティング戦略も立てやすくなるでしょう。