ユニクロの広告・マーケティング戦略から学べること
最終更新日:2022年12月01日
2021年2月16日ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングの時価総額が10兆8725億円(終値ベース)に達し、アパレル業界で首位となりました。「ZARA」を展開するスペインのインディテックスはファッション業界を牽引してきましたが、ついにユニクロにその座を譲ることになったのです。
ファーストリテイリングの株価が高騰した要因はおもに2つ。日本における新型コロナウイルス新規感染者の減少と、ワクチン接種の開始に向け低迷した経済回復への期待が高まったユーザーによる購買意欲の向上です。
このニュースは日本でも多くの経済紙やメディアで取り上げられ、改めてファーストリテイリングの強さを世に知らしめました。
本記事では、新型コロナウイルス感染拡大にともなう在宅での需要に合わせた商品の提供で、コロナ禍でも業績を伸ばしてきたユニクロの広告戦略とマーケティング戦略について、取り上げていきます。
また、事業計画の見直しや新商品・サービスの販売に向けてマーケティング戦略を検討される方へ、自社がどんな立ち位置でマーケティング戦略を立てるべきかが分かる「市場分析シート」も無料でご提供しています。ご興味のある方はこちらからダウンロードしてください。
ユニクロの広告戦略・マーケティング戦略のポイント
日本のアパレル業界をリードし続けるユニクロが、成功を収める戦略のポイントについて解説します。さっそくユニクロの広告戦略とマーケティング戦略を順番に見ていきましょう。
ユニクロの広告戦略
誰もが一度は見たことのあるユニクロのチラシ。ユニクロは毎週欠かさず金曜日に、新聞の折り込みチラシを入れています。毎週の広告を欠かさないことで消費者の日常に馴染み単純接触効果が生まれ、「ユニクロのチラシは毎週届く」と消費者が認識します。
同時にウェブページからもチラシを発信し、毎週お買い得商品が記載されたチラシの存在を知っている消費者は自ら検索。店頭には広告と同じ商品が並ぶことも、消費者への信頼につながります。
さらに一貫性のないごちゃついたユニクロのチラシには、消費者の購買意欲を高める狙いが。
たとえるなら、デパートなどで商品が山のようにカートに積まれた洋服のセールです。消費者は数ある商品の中から掘り出しものを発見する喜びを知っています。
セール品をさぐる消費者の心理を巧みに利用し購買意欲を刺激するのが、見やすいとはいえないごちゃついた広告の秘密です。
ユニクロのマーケティング戦略
ユニクロが成功を収める秘訣は、自社ブランドの確立です。
ユニクロはどんな人にも当てはまるようブランドメッセージを発信し、誰でも入手可能なシステムの導入とトレンドの新鮮さを持つ洋服を提供しています。
機能性を重視した自社製品をブランド認知度に活用しているユニクロ。とくに「ヒートテック」は生地が薄いのに暖かい防寒インナーとして、冬の必需品となりつつあります。
ブランディングにおいては統一性を持たせることが重要とされますが、ユニクロのブランディングは極めて異端。
アパレル業界でも真似ができないブランドを確立させることで、ユニクロは成功の一途を辿っています。
ユニクロの海外のオンライン戦略
ユニクロではグローバルアンバサダープログラムとして、テニスプレイヤーの錦織選手やスノーボーダーの平野歩選手など、世界でも有名なスポーツ選手をブランドアンバサダーに起用しています。
知名度が高い選手とのアンバサダー契約によって広まるのは、ブランドの認知度。長期契約を結んだ選手はブランドの顔となり、消費者の頭の中で「ブランド=選手」の方程式が完成します。
しかし異なる文化をもつ各国では同じ戦略は通用しないため、現地に合わせることが必要です。この問題を、ユニクロはオンラインの活用によって解決しています。
その国の消費者に響くソーシャルメディアプラットフォームを使用し、市場に合わせて戦略をアプローチ方法を変えています。
現地の消費者に強い影響を与えるインフルエンサーの力を借りて、ブランドの認知度を向上。新たな商品をアピールするキャンペーンをオンライン上で実施し、各国のターゲットを得ています。
ユニクロのマーケティング戦略のポイント
ユニクロが日本国内で実施しているマーケティング戦略のひとつに、独自の「コストリーダーシップ戦略」があります。
コストリーダーシップ戦略とは、ハーバード大学教授であると同時に世界的な経済学者、マイケル・ポーター氏によるビジネス戦略です。
ユニクロのビジネスモデル
ユニクロの特徴的なビジネスモデルはSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)です。これは商品の企画、製造はもとより、物流から販売までを自社でおこなうもの。
「ユニクロはLifeWearというコンセプトに基づき、世界中のあらゆる人々の日常を快適にする究極の普段着をつくり続けています。デジタル化が進んだ現代社会のなかで、ユニクロはお客様とダイレクトにつながり、お客様のご要望をすぐにカタチにするビジネスモデルへと進化していきます。」◆引用・抜粋元:FAST RETAILING(https://www.fastretailing.com/jp/group/strategy/uniqlobusiness.html)
ユニクロはビジネスの全工程を自社で担うことによって不要なコストを削減し、効率的な生産を可能にしました。中小企業にはとても真似できないと感じてしまうかもしれませんが、規模が違っても同様のビジネスモデルで成功している事業者もいます。
ユニクロのマーケティング戦略に関する書籍なども多く出版されていますので、興味がある方はお読みになってみてはいかがでしょうか。
ユニクロのサステナビリティ
ユニクロの洋服は購入しやすい価格設定でありながら、サステナビリティ(持続可能性)を重視した長期的に使用できるシンプルなデザインであることに強いこだわりを持っています。
「LifeWearの衣料品を作り続けることができるように、新しいデジタル消費者小売業界を構築したいと考えています。理想的なLifeWear衣類は、人々が不要なアイテムを脱ぎ捨て、独自の高品質なライフスタイルを作成するのに役立ちます。」引用・抜粋元:FAST RETAILING(https://www.fastretailing.com/eng/ir/direction/interview.html)
ユニクロによるサステナビリティの活動は、洋服の生産から雇用にいたるまで多岐にわたります。自然との共生や社会の持続的な発展に努める「LifeWear」がコンセプト。
ユニクロが提唱するLifeWearの理念は「持続の可能性を秘めた価値観」です。そのひとつがユニクロによる環境問題への取り組み「RE.UNIQLO」です。店頭で一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。
使用しなくなった洋服をリサイクル、リユースを目的に収集する活動です。環境問題に関心を持つ顧客に訴え、「持続の可能性」を促進し廃棄物を出さないライフスタイルを提案しています。
ユニクロの広告戦略・マーケティング戦略のカギは独自のブランディングとコストリーダーシップ
著しい成長を続けるユニクロの強みは、規模の大きなコストリーダーシップ戦略やサステナビリティにあります。
大企業に学ぶところはあっても真似できないものが多く、現実的に考えると難しいところです。
しかし、中小企業でも戦う場所を選べば十分に勝負できます。
競合他社と戦うには、まずセグメントと差別化が重要です。市場を細分化し消費者のニーズを的確にとらえ、自社にしかないバリュープロポジションを見出すことから始めてください。
バリュープロポジションとは、ユーザーが求めていることで競合には提供できない価値、そして自社には提供できる価値のことを指します。
このバリュープロポジションをベースにしたポジショニング戦略とメディア展開については、下記キャククルページでくわしく解説しています。ぜひお読みください。
下記の記事では、商品やサービスを認知させるだけでなく「成果」に繋がる広告戦略の具体的な方法や、その他の企業の事例を紹介しています。今後の広告戦略策定におけるアイディアが詰まっていますので、こちらも合わせてご覧ください。