日清食品の広告戦略・マーケティング戦略から学べることとは
最終更新日:2024年04月03日
直近では日清食品所属の大坂なおみ選手が全豪オープンテニスで2度目の優勝を果たし、スポンサーとしての面目躍如。「カップヌードル」は2019年度に3年連続で最高売上を更新し、国内の年間売上が1,000億円に達しました。
最近では若い女性をターゲットにした新商品や高年齢の方を対象にした新商品を発売するなど、ターゲットの絞り込みにも余念がありません。
新しい発想から生まれる独特の宣伝手法や、顧客に対して遊びを取り入れられるようなコンテンツを制作しています。
本記事では現状に甘んじることなく、進化を続ける日清食品のマーケティング施策を紹介します。
また、事業計画の見直しや新商品・サービスの販売に向けてマーケティング戦略を検討される方へ、自社がどんな立ち位置でマーケティング戦略を立てるべきかが分かる「市場分析シート」も無料でご提供しています。ご興味のある方はこちらからダウンロードしてください。
日清食品の広告戦略・マーケティング戦略のポイント
まずはさまざまな仕掛けで消費者の心をつかむ、日清食品の広告戦略から見ていきましょう。
日清食品の広告戦略
日清食品の広告戦略は「お客様に喜んでもらいたい、笑ってもらいたい、驚いてもらいたい」という発想をベースに構築されています。
挑戦と失敗を繰り返す試行錯誤の中で、コンテンツやキャッチコピーに工夫を凝らすようになったといいます。その背景のひとつに、デジタルマーケティング上の「口コミ」がありました。
その一例として挙げられるのが、「10分どん兵衛」です。本来はお湯を入れて5分ですが、10分経ってもおいしく食べられるという口コミが瞬く間にバズり、日清食品は謝罪した事例です。
もう5年以上も前のことになりますが、公式サイトに謝罪文を掲載したり、ラジオで絶賛したマキタスポーツさんと対談したりと、話題をさらいました。
日清食品の謝罪が話題となり、一時は店頭からどん兵衛がなくなってしまい、ニュースでもたくさん取り上げられました。この一連の動きは巨額を投じる広告宣伝をはるかに上回るプロモーションに転化した日清の手法には、脱帽というしかありません。
100年ブランドカンパニーとしての日清食品
100年ブランドカンパニーとは、100年経ってもお客様に愛されるように成長を続けていこうというスローガンです。1971年発売以来、幅広い年齢層に支持されることを重要視した商品展開でしたが、現在はセグメントしたターゲットに向けた商品開発にも着手しています。
例としては、若い女性をターゲットとした「エスニックシリーズ」やシニア層をターゲットとした「カップヌードル リッチ」。今までカップヌードルを食べることが少なかった層にも、カップヌードルを手に取ってもらいたい、という戦略です。
さらに、次世代に向けて若年層に対してもアピールを始めています。SNSを活用したデジタルマーケティングを展開・拡散してもらうことで、多くの若者から共感を得られ、購入に繋げています。
日清食品のマーケティング戦略
日清食品が目指す姿は、創業者が掲げた次の4つの精神に基づいています。日清食品のコーポレートサイトにも下記のように記載されています。
日清食品グループは、創業者が掲げた「食足世平」「食創為世」「美健賢食」「食為聖職」の4つの精神をもとに、世の中のために食を創造することを追求し、日々CreativeでUniqueな仕事に取り組み、Globalな領域で、「食」を通じて世界の人々にHappyを提供することで、グループ理念である「EARTH FOOD CREATOR」の体現を目指してまいります。引用元:日清食品グループコーポレートサイト「中期経営計画」(https://www.nissin.com/jp/ir/management/business_plan/)
海外でラーメンの代名詞となるほど認知されている日清食品は、錦織圭選手や大坂なおみ選手、八村塁選手などのスポンサーであり、巨額の広告費用を投下していることは事実です。
ただし、広告戦略の根底にあるのは、「人々を食で幸せにしたい」という想いです。人を楽しませたい、幸せにしたいという指針こそが、消費者の心をつかんでいるのかもしれません。
マーケティングのセンスを“デザイン”する
マーケティングのセンスをデザインするために必要なことは7つあります。
- 飽くなき好奇心
- 非常識な発想
- コンセプトデザインのセンス
- 先を読む予知能力
- 勝つまで辞めない情熱
- 自己否定する勇気
- 肌感覚を持つ
なかでもブランドマネージャーの金子氏は、「非常識な発想」と「肌感覚を持つ」を大切にしています。
日清食品ではこれまで、「非常識な発想」を基にさまざまなヒット商品を生み出してきました。さらにターゲットが気になる文脈になるように逆算してコンセプトを構築しています。
例えば、どういう言葉だと高年齢の方に受け入れられ、どのようにしたら広まるのかを考えるマーケティングを徹底しています。さらに日清食品の安藤CEOは、「マーケティングはサイエンスではなく、アート」と考えているといいます。
マーケティングは情報や環境により決まった動きをするのではなく、予測できない動きをする場合があります。そのためマーケティングを肌感覚で感じ、現在一番有効な施策を練ることを重要視しています。
「日清食品のマーケティング」をしたい人が、自問自答すべき3つの問い
日清食品のようなマーケティングをする為には、次の3つの問いを自分自身に問いかけてみましょう。
- 売りたい商品のマインドシェアが商品を購入するまでの大きさになっているか。
- 商品が人気になるということは、その分反対する者も増えてくる。それを受け止めたり、乗り越えたりできるか。
- 顧客に商品を通じて伝えたいことは、会社の理念に基づいたものか。
顧客理解を徹底することで、顧客が求めている商品が見えてくるはずです。しかし企業の理念に基づいて考えられたものでなければ、一時のバズが起こってもブランド構築までに至りません。大切なことは、一貫してそのマーケティングを続けていけるかどうかです。
継続的に成長するために戦略に合わせて組織を強化
日清食品では、継続的に成長するために人的リソースを拡大しています。約1500人だった従業員の数を現在では、約1.5倍である2100人以上に増加。ほぼキャリア採用で、実践力になる人材を採用しています。
戦略に合わせた人事を行うためには、現場のことをよく把握しておかなければいけません。事業や現場の状況を把握した上で人材を採っていくことが大切です。
日清グループは、No.1ブランドの集合体
日清食品グループは、「ブランディングコーポレーション」の実現を目指しています。
グループ理念である「EARTH FOOD CREATOR」を目指して変化する市場環境に対応しています。さらに今後も成長をするために、「技術イノベーション」と「マーケティング力」を駆使してNo.1ブランドの集合体を目指しています。
日清食品「イズム」を根づかせる会議
日清食品が発売している発売60周年で過去最高売上を記録した、「チキンラーメン」。そのキャラクターである「ひよこちゃん」をあえて型破りな方向で仕掛けることで、また新たなファン獲得しています。
日清食品はユニークなことをとことん追求していく社風があり、型破りなことをあえて行うことで自社製品をより強くしていくという考えがあります。「他人につぶされるくらいなら、自分で潰してしまえ」という発想が日清食品の「イズム」として存在しています。
また会議では結論を持ち越さず、必ずその場で即興的に決めることを大切にしています。即決を重視する理由は、アイデアを発表した時に笑いが起きるかどうかが重要だからといいます。
会議中に笑いが起きるということは、きっとお客様にも笑っていただける可能性が高いからです。
朝令朝改も辞さない 日清食品におけるマーケティングの神髄
日清食品には、「日清10則」という行動規範があります。ただこの行動規範はずっと同じ内容ではなく、時代に合わせて内容の入れ替えを行っています。
変化しない組織は急速に弱体化するという前提のもと、変異性や斬新さを大事にして日々変化をすることが重要だとしています。
また社員に向けたメッセージでは、「仕事を楽しむのも仕事である。」という、「日清10則」にある最後の言葉を基に声掛けをしています。社員への声掛けを工夫することで、日清食品は変わってきたとCSOの安藤徳隆氏は語っています。
日清食品の広告戦略・マーケティング戦略まとめ
さまざまな戦略を考えてつねに変化し続けることで、つねに時代の最先端を行き、成長を止めない日清食品。
大企業に学ぶことはあっても、真似できないものが多いというのも事実ですが、
- 変化を恐れれば衰退する、つねに変化を続けなければいけない
- 商品で人を幸せにしたい、楽しませたいという想いで発信し続ける
- 仕事を楽しむことも仕事のひとつである
といった内容は、中小企業でも学ぶところが多いのではないかと思います。広告戦略やマーケティング戦略はそれ単独で成立するものではなく、経営指針や仕事との向き合い方、社会との向き合い方がベースにあって初めて成立するものです。競合他社と戦うためには、このような視点と視座を持つことが肝要です。
広告戦略やマーケティング戦略に迷ったら
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バリュープロポジションとは、ユーザーが求めていることで競合には提供できない価値、そして自社には提供できる価値のことを指します。下記図を見るとわかりやすいと思います。
このバリュープロポジションをベースにしたポジショニング戦略とメディア展開を多くの企業に提案してまいりましたが、ポジショニングメディアという戦略的コンテンツマーケティングについては、下記キャククルページでくわしく解説しています。ぜひ一度お目通しください。
下記の記事では、商品やサービスを認知させるだけでなく「成果」に繋がる広告戦略の具体的な方法や、その他の企業の事例を紹介しています。今後の広告戦略策定におけるアイディアが詰まっていますので、こちらも合わせてご覧ください。