ファイブフォース分析とは?事例を元に競争状況や構造を分析してみる
最終更新日:2022年01月18日
ファイブフォース分析とは何か?目的は?
新たなプロジェクトを立ち上げる際や新商品の開発にファイブフォースを分析することが大切と言われたこともあるのではないでしょうか。ファイブフォース分析をしっかり学びたい方向けて解説します。
ファイブフォースの分析とは外部の状況を5つの点でチェックし、業界の分析をおこなうことです。競合他社や商品の仕入れコストなどから自社のポジションを把握できます。
ファイブフォース分析の目的とは
ファイブフォース分析は市場のなかで自社がどの位置にいるのかを確認し、ポジション競争で優位に立つことが目的です。
日々状況が変動する現在において、自社のポジションを再確認する際にも便利です。新商品開発や新プロジェクトを検討する際にも、ライバルの脅威なども事前に予想して勝てる見込みがありそうかを判断材料にするのもよいです。分析を踏まえて勝算があまり見込めないのであれば撤退やプロジェクトを諦めるなどの判断が必要な場合もでてくるでしょう。
現状の再確認、新規事業の検討に使えるのがファイブフォース分析です。
ファイブフォース分析のポイント
ファイブフォースで分析するべき点は5つです。
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 競争企業、敵対関係
- 新規参入業者の脅威
- 代替品の脅威
それぞれの項目をさらに詳しく解説していきます。
買い手の交渉力
買い手の交渉力とはサービスを売るエンドユーザーが選ぶ選択性、つまり売り上げしやすいかどうかを考えることです。
例えばお菓子を開発する際にはコンビニやスーパーなどの実店舗に加えて通販ショップなど購入できるルートが多く、同様の性能をもっている製品が他にもたくさんあれば競争力が高まります。
現在の状況だけで判断するのではなく、下記の点にも注意が必要です。
- 差別化できるかどうか
- 価格の透明性
- 新規需要が見込めるか
- 販売ルートの独占状況
差別化できるかどうか
同じジャンルの製品性のなかで差別化ができていない商品だと、買い手は他の選択肢も多くなり交渉力は高くなってしまいます。家電製品で考えると同等の機能をもつ製品が多い場合には大きな差別化を図ることができず、買い手の交渉力はとても高い優位性をもっていることになり価格競争を避けることができません。
しかし家電製品でもダイソンやアップルなどのように他社にはない独特の特徴をもちブランド化ができている場合には、他の製品を選ぶ選択性がなく買い手の交渉力は低くなります。
価格の透明性
同じような製品の価格を簡単に比較でき、透明性が高い商品は価格競争に巻き込まれやすく買い手の交渉力が高くなりがちです。製品開発を考える際には、インターネットで簡単に商品を比較できることに気をつけなければいけません。
新規需要が見込めるか
提供を考えるサービスや商品のジャンルがすでに商圏で多くの需要が満たされている状況の場合には、市場全体の新規顧客を獲得することが難しくリピーターを奪い合うことになります。
販売ルートの独占状況
エンドユーザーに直接関わる販売ルートが偏り独占されている状況だと、交渉力は高くなります。通販ショップや実店舗など、特定のお店のみでしか販売しない製品は販売ルートが限られてしまうため、買い手の交渉力は高いです。
売り手の交渉力
売り手の交渉力とは自社のプロジェクト開発にあたり、材料や部品などを供給してくれる業界の交渉力にあたります。食品の製造なら原材料の食材を仕入れる先にあたり、多く選択肢があるためかなり幅が広がるため交渉力は低いです。
売り手の交渉力としてチェックしておくべき点は、下記4点です。
- 需要度合い
- 差別化されているか
- 仕入れ価格が分からない
- 独占度合い
需要度合い
需要度合いの高い製品は売り手の交渉力が高いです。コロナウイルスの影響により全世界でマスクが必要となった際には、需要が追いつかずに原材料の高騰する状況となりました。
このように需要の高い原材料を利用する製品は価格交渉をする余地がほとんどありません。
差別化されているか
同様の材料や部品などを提供する他社では提供していないような差別化された商品は交渉力が高くなります。
例えば食材を仕入れる際に、こだわりがなければ交渉力は高くありませんが、無農薬や糖度の高い食材など品質に厳しい条件を設定した場合には供給元が限られる状況となり、簡単に値下げ交渉をすることができません。
仕入れ価格が分からない
仕入れ価格の相場が調査しきれない場合には、仕入れ先に対して交渉がしづらくなってしまいます。今までにない製品を販売するために、一般的ではない仕入れ先を選択する際に該当しやすいです。
独占度合い
仕入先の企業が限られ独占された状況だと、競争力が低く他の選択肢を選べないため売り手側の交渉力が高くなります。パソコン部品のCPUなどは世界でも有数メーカーでしか開発していないため、交渉力がとても高い仕入先です。
競争企業、敵対関係
同業他社の数や利用者数の違いなどから、競合性が高いか低いかを判断します。生活家電だと多くのメーカーがあり競合性が高いです。
競争企業、敵対関係は、撤退のしにくさも考えなければいけません。撤退しやすい業界だと事業者が利益を出すのは難しいと判断した際にライバルが減ります。しかし簡単に撤退できない事業の場合には、赤字であったとしても簡単にはライバルからは外れてくれません。
撤退しにくい業種は、下記2点の特徴が挙げられます。
- 初期設備への投資が必要
- ライフライン関連
初期設備への投資が必要
初期設備に大きく投資した事業は簡単には撤退しづらいです。例えば建設業などは高額な設備を手放すことができず撤退の可能性は低いですが、飲食業などは大掛かりな設備をもたないため撤退性が高いです。
製品開発の場合、特殊な製造ラインを用意するものでなければ撤退性も非常に高いジャンルにあたります。
ライフライン関連
ライフラインに関連する事業も簡単には撤退しづらい事業です。新電力会社としての参入、格安SIMのサービスなどは撤退事例がゼロというわけではありませんが、赤字であったとしても簡単には辞めるとはいえません。
新規参入業者の脅威
新規業者参入敷居の高さも、将来的な競合になり得るため分析しておく必要があります。同業種を始めるのに必要な資本や流通経路を構築する労力だけではなく、製品開発なら同価格帯にて提供する難しさなども含めて考えるべき点です。
新規参入の敷居が低ければ、サービス開始当初は競合性が低くてもライバルが増加する可能性が高いです。
主に下記の3点があります。
- 法規制
- 開発、販売構築の難易度
- 技術の難しさ
法規制
法規制は新規参入難易度のひとつの目安です。例えばテレビ局の放送事業者は免許取得をしなければいけず、地方の放送局であっても参入は簡単ではありません。しかしインターネット動画なら法規制はなく、簡単に参入できるサービスです。
また医療機器の開発なども法規制があり、手軽に販売できる商品ではありません。
開発、販売構築の難易度
商品販売やサービスを提供するための難易度も新規参入に大きく影響する点です。
インターネット通販なら現在の物流サービスを利用するだけで簡単に参入可能ですが、新しいコンビニのブランドを立ち上げるとなると、全国への出店計画を考えなければいけず簡単ではありません。
技術の難しさ
提供するために技術が必要な場合には新規参入が難しいです。部品を入荷し機会の組み立てで完成する商品は技術的には高いとはいえません。
しかし昔ながらの職人がひとつずつ手作りする商品は、作成技術の難易度が高く簡単に参入するのが難しくなります。
代替品の脅威
たとえ独自のサービスを提供できていたとしても、他に代替として利用できるサービスや商品があるかどうかも売り上げの増減に繋がります。
- 代替品の価値
- 代替品を提供する企業
代替品の価値
代替品が安く提供されているか、コストは低く製造できるのかでも脅威の度合いは変わります。当然ながら代替品が自社よりも安いのであれば大きな脅威です。しかし自社が他に負けない価格で提供できるなら脅威は小さくなります。
代替品を提供する企業
代替品を提供している企業が大手企業、もしくはシェア内の第一人者のような特別な存在なら脅威度合いは大きいです。
ファイブフォースを使う際のポイント
ファイブフォースを分析する際には、まず事前に目的やターゲットを明確にしておく必要があります。
ファイブフォース分析は目的を定めてから考える
ファイブフォース分析は目的が定まっていないと、競合性の高さが大きく変動します。ターゲットの年齢層が違えば競合商品、競合他社の数も異なってくるでしょう。
新商品について考えるのか、自社のポジション全体を捉えるのかなど目的を事前に明確にしましょう。
ファイブフォースの分析は縦と横の関係性を意識するのがポイント
ファイブフォースを分析する際には、上記の式で表した際、縦列と横列はそれぞれ関連性が高いことが分かります。
横はコストを意識
横で考えると売り手と買い手の交渉力、そして競合企業の敵対関係です。つまり仕入れのコストと販売価格の設定に大きく影響します。
買い手と売り手の交渉力がどちらも高ければ、価格設定はかなり厳しくならざるを得ません。加えて競争企業が多いのであれば、価格競争はかなり熾烈になるということです。
縦は競合性を意識
一方縦の構造は新規参入業者と代替品の脅威に現在の競争企業を加えているもの。代替品が多く新規参入業者のどちらも多ければ競争率は高くなります。
横の価格競争が熾烈にも関わらず縦の競合性も高いのであれば、かなり厳しい状況であるということです。
ファイブフォース分析の事例
ファイブフォース分析の事例として、日本の後発医薬品であるジェネリック医薬品を当てはめて考えてみましょう。(参考:MarkeTRUNK公式サイト https://www.profuture.co.jp/mk/column/4996)
ファイブフォース分析の事例で横のコストを考える
まずはコストに影響する横部分を考えます。
買い手の交渉力
交渉力を考えた際に商品価格の透明性はあまり高くありません。しかし販売ルートを考えた際には保険薬局で処方されるしかなく、限られている状況です。新規需要は医薬品の種類にもよりますが、先発医薬品がある状況のリピーターを奪うのが中心となります。総合的に考えると買い手の交渉力は高いです。
売り手の交渉力
医薬品の原材料は登録制度があるため独占度合いがかなり高く、差別化されているものを選ぶ余地はほとんどありません。需要度合いは医薬品によって異なり、仕入れ価格も簡単には分からない状況です。売り手の交渉力も高いのが分かります。
ファイブフォース分析の事例で縦の競合性を考える
コストに関しては厳しい状況であることが分かりました。続いて縦の競合性を考えてみましょう。
新規参入業者の脅威
新規参入できるかは法規制がネックとなります。医薬品として許可を受けなければいけず、そのために初期投資も必要です。
しかし開発力や販売構築に関してはさほど難しいとはいえません。
ジェネリック医薬品は基本的に先発医薬品の成分と同等でつくり、あくまで同様の成分かを確認するのみです。2、3年の期間はかかるものの先発医薬品で何十年かかるような長期間には渡りません。製造の技術も医薬品開発の知識をもっているのであれば難しくはないです。
新規参入の脅威は中程度といえます。
代替品の脅威
代替品の脅威に関しても中程度となります。
先発医薬品はもちろん、他の同じ目的のジェネリック医薬品が開発されれば代替品となり得ますが、代替品を提供する企業はそこまで多くありません。しかし日常的に健康に気をつける栄養補助食品や機能性食品なども代替品にあたる場合があります。
代替品の脅威は治療をする病気によっても変動する点です。
競争企業、敵対関係
競争企業は先発医薬品の会社が脅威ではあるものの、ジェネリック医薬品に限定すれば第一人者というような大きな会社はありません。
撤退のしやすさも考えてみると、ある程度初期投資は必要なものの自社で研究設備などを保有しなければ難しいものではないです。
ジェネリック医薬品は日本のなかでもシェアを上げるように求められてはいるものの、ひとつのジェネリック医薬品の製薬会社が撤退、もしくは1医薬品の販売を停止しても大きな影響にはあたらないケースが多いでしょう。
競合企業や敵対関係の中程度といえます。
ファイブフォース分析の事例で後発医薬品を検討した場合
総合的に考えるとジェネリック医薬品の販売はコスト面では少し高くなるものの、競合性に関しての脅威は少ないです。
すでに製薬会社としてノウハウや設備が整っているのならば参入は難しくないでしょう。
新規に製薬会社として立ち上げる場合には、コストを取り戻すためにある程度の数を販売できる状況になれば安定しやすいと考えられます。
ファイブフォース分析を活用し、ポジショニング戦略へ!
ファイブフォースを利用することで、業界の構造や敵対関係の状況などを分析しやすいです。これから新たに会社や商品を立ち上げるときだけではなく、自社のポジションを認識しなおすのにも便利です。
しかし、よいポジションを再確認するだけでは最適な戦略を見つけることができません。ポジションに合わせた戦略を考えることが大切です。
Zenkenでは、ポジショニングをベースにしたポジショニングメディア戦略を提案させていただいています。ポジショニングメディアは各企業の特徴をまとめて比較できるサイトです。
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