市場浸透戦略とは?メリットや企業事例をまとめて紹介
最終更新日:2024年04月24日
既存の商品・既存の市場であっても、売り方を工夫することで売上を伸ばすことが可能です。
この記事では市場拡大戦略のひとつである、「市場浸透戦略」について解説していきます。
参考になる市場浸透戦略の企業事例もまとめてリサーチしました。
売上が伸び悩んでいる、さらにシェアを広げたいという際の戦略として、ぜひ参考にしてみてください。
特定の市場内で自社の強みを浸透させる戦略として、ポジショニングメディアについても併せてご紹介しています。
ポジショニングメディアによって「商談率が8割以上になった」「受注単価が2.5倍にアップした」「成約までの時間が1/3に短縮した」など、市場内での独自の強みが明確になったことによる成果を実感する声もいただいています。
※ポジショニングメディアの詳細については記事の最後でご紹介しております。
またポジショニングメディアのご紹介ページも別途ご用意していますので、興味がございましたら以下ページもぜひご覧ください。
市場浸透戦略とは
市場浸透戦略は、その名の通り、今ある市場に自社の商品・サービス浸透させて売上を伸ばす方法です。
巻き返しを図る目的で、取り入れる企業が増えています。新製品を打ち出したり、市場を開拓したりする戦略ではなく、既製品を市場のニーズに合わせて売り出します。売り方を変える手法なので、開発および新市場の開拓にかけるコストを抑えられます。
市場浸透戦略のメリット
メリット1:顧客離反を防げる
市場浸透戦略によって売り方を変え、価値に気づいてもらうことでサービスの利用頻度を高めることができます。
価値を感じて長く商品に触れてもらうことで顧客離反を防ぎ、リピーターになってもらえます。
広告やマーケティング施策を講じて再利用を促す、あるいは顧客管理を徹底して優良顧客・リピーターを増やす方法があります。
メリット2:客単価をアップできる
市場浸透戦略では、既存顧客の客単価を増やすことが可能。リピーターになり購入頻度が高まることで顧客単価が向上するわけです。
キャンペーンやセット商品をつくり、あわせ買いやついで買いをうながすことでさらなる単価向上も期待できます。
メリット3:新しい価値提案で需要増が見込める
市場浸透戦略で、今販売している商品・サービスの他の使い道がないかを模索し、新たな用途を提案することで売上を増やすことができます。
つまり商品に新たな価値を見出すことで、その価値を求めるユーザーにまでリーチを広げることが可能になるわけです。
BtoB向けの製品を扱う企業なら、多業種が集まる展示会・イベントでニーズを探ったり、一般の消費者向けの製品を扱う場合は、アンケート調査などでアイデアを集めたりする方法があります。
アンゾフのマトリクス
既存市場と既存製品だけの戦略では不十分だと考えている企業が、よく導入するフレームワークが「アンゾフのマトリクス」です。
アンゾフのマトリクスは、上記の市場浸透戦略に加えて、市場開拓戦略・製品開発戦略・多角化戦略という4つの市場拡大戦略のパターンを示しています。
自社の目的や強みにあわせた戦略を実行することで、シェア拡大を目指すことができます。
市場開拓戦略:今までとは違う客層を狙う
市場開拓戦略は、既存の製品で新たな市場を獲得する方法です。今ターゲットにしている顧客とは異なる客層を狙う戦略で、上手くいけば増産に持ち込めます。
たとえば、子供向けのノートでお馴染みのジャポニカ学習帳は、子供も大人も親しめるイラストで、大人の需要拡大を図っています。従来の子どもが学習に使うノートというイメージから、大人も使いやすいノートとして新規顧客を開拓しています。
新製品開発戦略:既存市場に新しい商品を展開する
製品開発戦略は、既存市場に新しい商品・サービスを販売していきます。既製品を改良して性能を高めたり、ニーズをくみ取って全く異なる製品をつくったりして、ブランドの価値を高めていく方法です。
例を挙げると、洗剤のNANOXは新製品開発戦略で、既存市場に売り出しています。洗剤中の水分量を減らし、容器を軽量化した改良製品を作り出し、競合他社と差別化を図っています。
多角化戦略:今までにない市場・新製品をつくる
多角化戦略は今までない市場をつくり、新製品を売り出す方法です。開拓するまでに時間を費用がかかるため、費用対効果が見合わないリスクも持ち合わせていますが、成功すれば増産・需要拡大が見込めます。
たとえばメンズコスメは、2018年頃に化粧品会社が手掛けて話題となりましたが、これは多角化戦略で生まれた商品です。従来にはない男性用の本格的な化粧品を展開し、増産・需要拡大に成功しています。
自社の強みを市場に浸透させる「ポジショニングメディア」戦略
上記で紹介した戦略の他に、ポジショニングメディアという専門メディアを活用した戦略も市場浸透に有効です。
ポジショニングメディアとは、その名の通り市場内での自社のポジション(立ち位置)をユーザーに伝えるメディアです。
自社ならではの強みや価値を、競合と比較しながら見せることで、「◯◯といえば自社」という優位性のある立ち位置を市場内で確立できます。
ポジショニングメディアによって、市場内で特定のニーズを持つユーザーを自社に集めることができ、強みを理解してくれているユーザーは成約や購入などの成果にもつながりやすくなります。
実際にポジショニングメディアを導入した企業からは、
- 自社の商品・サービスを理解してくれる検討者が増えて商談率が8割以上になった
- 自社商材と費用感の合う検討者が増え、受注単価が2.5倍に増えた
- 競合と比べた上で自社に興味を持ってもらい契約までのリードタイムが3分の1に短縮できた
といった成果を実感する声もいただいています。
現在の市場でうまく強みが伝わっていない、強みを浸透させる新しい施策を行いたいといった場合は、ぜひポジショニングメディア導入もご検討ください。事例は以下ページでもまとめておりますのでぜひご覧ください。
市場浸透戦略の施策
ここでは、市場浸透戦略に活用できる具体的な施策を紹介いたします。複数の施策を組み合わせての実施を検討してみてください。
マーケティングキャンペーンの強化
効果的な広告キャンペーンやプロモーション活動を通じて、製品やサービスの知名度を高め、市場に浸透させることが重要です。これまでに打ち出してきたマーケティング施策を見直し、狙っているターゲット層により認識されやすくなるクリエイティブやチャネルを採用することで、認知度の向上が見込めます。
販売チャネルの拡充
製品のアクセス性を向上させるために、新たな販売チャネルの開拓も手法の一つです。たとえば、これまでオンラインショッピングプラットフォームでしか製品を販売してこなかった場合、オフライン販売に適した場所を特定し、製品をターゲット顧客によりダイレクトにアピールする施策が考えられます。インターネットマーケティングが主流になりつつある近年において、オフライン施策が市場浸透のカギとなるケースがすくなくありません。
製品の改良とバージョンアップ
顧客ニーズに合わせた製品の改良や新機能の追加も、市場浸透を促進する有効な手法です。バージョンアップされた製品は話題になりやすく、マーケティング施策の強化を図らなくても一定の注目が期待できます。他社では得られないような価値を付加すれば、リピート顧客はもちろん、これまで製品に興味がなかった新しい客層も獲得できます。
顧客ロイヤルティプログラムの導入
既存顧客を大切にし、リピート購入を促進するためのロイヤルティプログラムの導入も検討できます。特典や割引、ポイントシステムなどを通じて顧客の忠誠心を獲得し、市場シェアを拡大します。これにより得られる顧客満足度の向上は、間接的に推奨率(既存顧客が知人や家族に商品を推奨する確率)の向上にもつながりえます。
市場浸透戦略の成功例・具体例
市場浸透戦略とアンゾフのマトリクスについて紹介しましたが、リスクの低い戦略から試すなら市場浸透戦略から取り入れてみましょう。ここでは、市場浸透戦略を実施した企業事例を紹介していきます。
マクドナルド
マクドナルドでは、市場浸透戦略を多数実施しています。実は、2014年・2015年と営業益が赤字になっていた同社。しかし、2016年以降は黒字に転換。経営を見直し、需要を回復させたことが、黒字化への転換となりました。
既存商品を使って既存市場を盛り立てたことは、実に見事な手腕だといえます。マクドナルドが行った施策として、下記の4つを紹介します。
朝マック
マクドナルドが行った市場浸透戦略としては、朝マックが挙げられます。朝マックは、安くて朝しか食べられないハンバーガーだとお値打ち感を出すことで、幅広い世代に広く認知されました。
朝出勤前に立ち寄れるイメージを浸透させ、ハンバーガーを朝ごはんにすることに対して、抵抗感を減らすことに成功しています。
バリューランチ
マクドナルドは市場浸透戦略として、バリューランチを実施。平日の昼間の需要増を図るために、他の時間帯よりも安くセットを提供しています。「平日のランチならマックが安く食べられてお得」とのイメージを浸透させるのに一役買っています。
ちょいマック
マクドナルドは、従来販売していたサイドメニューの名前を一新しました。安く食べられるサイドメニューを、ちょいマックと銘打ったことで、マックは軽食も販売しているイメージを浸透させています。
朝・昼・夜の3つの時間帯の集客だけでなく、朝から昼にかけて、昼から夜にかけての小腹が空く時間帯の集客に成功しています。
MUSIC VALUE
マクドナルドでは市場浸透戦略の一つとして、店内BGMを時間帯によって変えています。
季節や時間によって変わる曲は、同社がオリジナルで選曲しており、SNS上で話題を呼んでいます。マクドナルドは曲のセレクトが良い、という付加価値を付けて競合他社と差別化を図ることに成功しています。
コカ・コーラ
1961年に、日本でコカ・コーラが本格的に販売されてから、実に60年も人気を維持し続けています。なぜ人気が衰えないのか、同社が行っている市場浸透戦略の一部を紹介します。
Share a Coke and a Song
2013年に行われたキャンペーンは、コカ・コーラの商品に手を加えることなく、売上を増やすのに成功しています。
同キャンペーンは、ボトルに印字された西暦と同じ年に出たヒット曲を10曲手に入れられるというもので、ソーシャルメディアで話題を呼びました。コカ・コーラを大切な人と思い出を共有できる、楽しい飲み物だとイメージ付けたのです。
リボンボトル
コカ・コーラではクリスマスシーズンになると、リボンボトルを導入しています。味はそのままに、カラフルで華やかなボトルに早変わりするというものです。クリスマスパーティーに合う華やかなボトルだと印象づけることで、クリスマス需要をさらに掘り起こしています。
サブスクサービス
コカ・コーラは、元々自動販売機に置いてあるイメージが強い商品ですが、さらなる浸透を目指して思い切った施策を講じています。
Coke ON Passというポイントがたまるサービスを利用して、サブスクサービスを提供し始めたのです。毎日1本飲める定額サービスは、都度支払う必要がなく、幅広い世代に人気を博しています。
ケンタッキー
ケンタッキーではクリスマスに需要が集中し、他のシーズンの売上が伸び悩んでいました。2018年3月期には一時業績が悪化していますが、その後の市場浸透戦略で同年7月には4.8%、8月には9.0%も客数が増えています。
同社が、業績回復を図るために講じた市場浸透戦略を紹介します。
平日限定ランチタイム価格
ケンタッキーでは品質の高さを売りにしていたため、価格の安さを全面的にPRしてきませんでした。しかし、需要拡大に向け、平日のランチタイムはセット価格を安くして販売することを決定。ケンタッキーの弱みであった昼間の時間帯・一人客に訴求し、客数を着実に増やしていきました。
ランチタイムの価格を下げたことで、ついで買いや夜時間のリピート客の増加にも貢献しています。
広告露出を変えた
ケンタッキーでは、従来はイベント期間・新商品の発売期間に集中して広告を打つ方法を採用していました。しかし、イベント期間・新発売期間が終了し、お目当ての商品がなくなった頃に思い出して来店するお客さんが多かったため、今では通年広告に切り替えています。
通年広告にするだけでなく、期間限定商品の販売を長くすることで、販売機会ロスに繋がっていた顧客の囲い込みに成功しています。
広告予算は据え置きでメディア露出を増加
ケンタッキーでは、イベント期間のCM広告にかなりの予算を投じていましたが、最近は複数メディアに広告を出す方法へと変わっています。ツイッター、ユーチューブ、ティックトックといった若い世代が多く活用する媒体に広告を打ち、幅広い世代にイメージを浸透させています。
サントリー
サントリーは食品・飲料事業を手広く展開しており、ロングセラー商品を多数生み出しています。人気商品、ロングセラー商品を生み出す秘訣を、同社の市場浸透戦略から見ていきましょう。
特別なビールというイメージの浸透
今でこそ、サントリーを代表する商品となっているザ・プレミアムモルツ。ところが、好調な出だしとはいかず、売上に伸び悩んでいました。
当時は、辛口や渋みのあるビールが主流で、プレミアムビールがまだ浸透していませんでした。長年親しんだ味から人々が新たな味を好むようになるには、何か起爆剤が必要だったのです。
そこで、サントリーでは2005年にモンドセレクションで最高金賞を受賞したことを皮切りに、週末の夜に飲む特別なビールというイメージを浸透。一般向けのビールでありながら、贅沢な気分を味わいたいときにぴったりだと高級感を売りにしたのです。
ザ・プレミアムモルツの戦略は功を奏し、今では人気商品として地位を確立させています。
輸出で上乗せされる価格を逆手に取った
サントリーピュアモルトウイスキー山崎は、海外でも需要が高いウイスキーの一つです。輸出すると高くなってしまう価格を逆手に取り、特別感のあるウイスキーとして売り出し人気を博しています。海外で注目を集めることで、国内消費の増加に成功しています。
富士フイルム
富士フイルムは写真関連事業で大きく成長した会社で、デジタル化が進むにつれて一時は経営が危ぶまれると思われていました。しかし、既存事業をそのままに、他事業にどんどん参入し、今では売上2兆円を超える巨大企業へと成長を遂げています(2018年時)。
富士フイルムが行っている市場浸透戦略について解説します。
SNSで人気再燃、好機を逃さずアプローチ
富士フイルムは、写真関連事業が縮小する中でも、既存事業をそのまま残して続けていました。そうした中で、インスタグラムに投稿された写真がきっかけで人気が再燃し、再び「写ルンです」などの写真関連事業が盛り上がりを見せています。
富士フイルムではチャンスを逃さず、すぐに写真をスマホに送るサービスを実施し、若い世代への認知向上を図っています。
セブンイレブン
セブンイレブンは、大手コンビニチェーンとして不動の地位を築いていますが、その秘訣は市場浸透戦略にあります。同社では、同じ地域に複数店舗を展開する戦略を得意としています。
同じ地域に続々と出店することで、ブランドの認知力を向上。イメージを浸透させて出店地域を広げる方法が受け入れられ、2020年のコンビニチェーン店売上高ランキングでは見事に首位を獲得しています。
市場浸透のためのマーケティング戦略でお悩みなら
キャククルを運営するZenkenでは、クライアント独自の強みを軸としたマーケティング戦略をご提案しています。
いままでに120業種を超えるクライアント企業のWeb集客・マーケティングを支援してまいりました。
上記でご紹介したポジショニングメディアをはじめ、クライアントの強みが最も引き立つニーズを見つけ、そのニーズを持つターゲットを集中して狙う戦略を得意としています。
必然的に市場内で自社の強みが明確になるため、集客のみならずブランディングにも効果があります。
現状の集客戦略やマーケティング施策がうまくいっていない、といったお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。