【3分で理解】ソニーの差別化戦略・マーケティング戦略のポイント
最終更新日:2024年05月28日
この記事では、日本に拠点を置く世界的な総合電機メーカー「Sony(ソニー)」の差別化戦略について解説しています。貴社の今後の企業戦略の策定にお役立ていただければ幸いです。
また、貴社が市場でどんな立ち位置でマーケティング戦略を策定すべきかが分かる「市場分析シート」を無料でご提供しています。自社の強みを活かしたマーケティング戦略を立てたい方は、今後の戦略策定にご活用ください。
ソニーの差別化・マーケティング戦略のポイント
引用元:ソニー公式サイト(https://www.sony.co.jp/)
ウォークマンやハンディカム、プレイステーションなど、独自の商品で新たな価値を創造し人々のライフスタイルまでをも変えてきたソニー。
ですが2010年以降は得意としていたテレビやオーディオ機器、カメラなどのAV家電市場のバブルがはじけ、スマホの台頭により音楽プレイヤーの需要も減少し、ソニーにとっても逆境の時代になりました。
低迷期を乗り越えどのように回復したのか、ソニーの差別化・マーケティング戦略をみていきましょう。
人がやらないことをやって新しい価値を市場に創る
ソニーはもともと資本が充実していたわけではなく、創業から「技術力」を強みに「他者がやらない・やれないことをやる」という価値観のもと、差別化を図ってきました。メジャーなのは、1979年に開発された「ウォークマン」です。そこから世界的な電機メーカーまで駆け上がりましたが、2000年代半ばでは業界で一人負けが続く時期がありました。
2010年以降はAV家電バブルがはじけて需要の減退が進み、一時は強みだったテレビ事業とスマホ事業が足を引っ張る形に。他社が研究開発投資を抑制する中、ソニーは高付加価値商品の製造へ舵を切ります。研究開発投資を増やして技術開発に力を注ぎ、高付加価値の新製品を市場へ投入していきました。
4Kテレビは画質を高めることで高価格帯でも売れ、ハイレゾの音響機器、ミラーレス一眼カメラなど、ソニーは今までにはない自分達だからこそできる技術力によって続々と商品を開発。売り上げは右肩上がりになっていき、業績回復だけでなく、市場全体の活性化に貢献するほどにまで至りました。
新しい市場へ挑戦続ける
ソニーは率先して海外に事業展開を行い、市場を開拓してきた企業です。それぞれの国に一つの現地法人を作ることによって地域に根付いたブランド訴求を実現し、ブランド価値を世界へと広げてきました。
海外への市場拡大だけではなく、電機メーカーだった企業はエンターテインメント事業、保険や証券を扱う金融コングロマリット化など、事業を多角化し新しい市場へチャレンジし続けました。その結果ひとつの事業が減益となっても、好調な他の事業でカバーしているのです。
ソニーファンをつくるカスタマーマーケティング
ソニー製品を使い「楽しみや生活の変化を感じ、満足感を得てさらにソニー製品を購入してほしい」という思いから、ファン創造に向けての取り組みを始めました。
そのために、ソニーはロイヤリティループを活用。ロイヤリティループとは、、ソニー商品を購入した方が、商品を通じて企業ブランドへの愛着(ファンなる)、「ソニーだからこそ」という信頼性を高め、ロイヤルカスタマーに変化させるまでの一連の流れです。満足した顧客がロイヤリティループに突入すると自社製品購買率が高くなります。
ロイヤリティループは相手を理解し、顧客が必要とする適切なタイミングに不快でない情報提供が重要。そのため一人ひとりに対応したワンツーワンコミュニケーションの実践が必要です。
従来のメールやWebだけでなく、アプリでの個別対応を拡大し、購入後のユーザーに向けてコミュニケーションサイト、リアルでの体験会などを開催し、成約数や受注額の増加とコスト削減を実現しています。
コミュニケーション活動を通じて、顧客が心地よいと思えるアプローチを展開し、ロイヤリティループへ突入させ長期的なファン創造へと繋げていきました。
ソニーの経営戦略
2021年4月に名称をソニーグループに変更。エレクトロニクス事業を始め各事業運営は子会社化し、本社機能に特化させることでエレクトロニクス事業を他事業と同格に並べる動きを見せました。
エレクトロニクスとは、中に組み込まれた半導体や電子部品、内臓しているプログラム、ネットワークを総称したもの。従来半導体事業などのハードウェアが好調だったのが、2020年には全体で減収営業減益となってしまいます。
そこでソニーは、主力としてきたエレクトロニクスのほかに、ゲーム・ネットワークサービス・音楽・映画・金融の各事業会社を改革し、長期的な成長へとつなげる経営戦略を立てました。
エレクトロニクスの分類は以下の通りです。
- ホームエンターテイメン&トサウンド
- イメージングプロダクツ&ソリューション
- モバイルコミュニケーション
- 半導体
- ゲーム&ネットワークサービス
どのような経営戦略を立てたのか見ていきましょう。
金融事業を取り込む
ソニーフィナンシャルHDの完全子会社化により、21年度以降の当期純利益は年間400億-500億円程度増える見込みがあると想定しています。グローバル化が進む中、日本で安定した収益を稼ぐ金融事業への取り組みは、現時点で地政学リスクが比較的少ないと言えるのではないでしょうか。
成長へ向けた投資資金の確保
コロナの影響により外出自粛が促され、ゲームや音楽、映画やアニメなどのエンターテイメントのコンテンツビジネスの需要は急増しており、中長期的増加が見込めるでしょう。エンターテイメント需要の成長に期待する投資資金確保と、海外企業との協業や技術開発への投資が短期間でできる体制を整え、ソニーは成長への兆しを狙っています。
ハードウェア+サブスクリプション
サブスクリプションとは定額、もしくは従量制で製品やサービスを提供することです。製品を販売して収益化するというビジネスモデルは大きな転換期を迎えており、所有から利用へという流れにサブスクリプションは大きく関わっています。
ソニーはサブスクを取り入れることにより、ヒット作に頼らなくても安定的収入の確保に成功しました。
顧客が端末を購入しソフトをサブスクで利用する「PSプラス」は、月額476円(税込み523円)を支払うだけで毎月数本のゲームタイトルを無制限にプレイできるフリープレイなど、様々なサービスを受けられます。
根強いプレイステーションファンがいる中で新しいソフトだけでなく、旧作の続きを配信すればブームが再燃したソフトを購買したくなるという仕掛けもつくっています。
EmImusicを買収して音楽分野のサブスクにも力を入れ、エンターテインメント事業を強化してきました。
事業間のシナジー効果による事業進化
ソニーがコア事業として経営を支える金融事業は、シナジー効果が大きいと言われています。たとえば、ソニーがすでに取り組んでいる人工知能(AI)と自動車保険や要因分析ツールのシナジー効果によって、それぞれの事業が進化する可能性は高いと言えるでしょう。
ソニーの差別化戦略まとめ
常に他社にはできない技術力によって新しい市場を開拓し、専門性を追求しながらも固執せずニーズがどこにあるのか探求し続けきたソニー。一時は赤字が続く時期がありましたが、自社の強みを理解しかけ合わせることで「これまでにない」独自性を打ち出すことに繋がりました。
またユーザーに向き合い続けてきたことも、商品に愛着を持ち使い続けてくれる「根強いソニーファン」獲得に繋がっています。
「強みの追求」「ユーザーと向き合いニーズを求める続けること」で、差別化に繋がったと言えるでしょう。
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マーケティング戦略策定後には施策に落とし込もう
マーケティング分析をした上で大切なのは、その分析結果をもとに行うマーケティング戦略の施策と戦術の実行です。しかし、ほとんどのケースで見受けられるのが、
- そもそも適切な分析ができていない
- 分析はできたが、それを支える戦略と戦術まで落とし込めていない
- 分析や戦略までは組み立てたが、戦術と連動していない
という問題の発生が多くあります。そのため、多忙な中、分析や戦略策定をしたのにもかかわらず、成果に繋がらなければ、あなたの貴重な時間もお金も無駄にし、また練り直さなければなりません。時間がさらにかかれば、状況も変わり市場からさらに置いてかれること可能性もあります。
下記の記事では、商品やサービスを認知させるだけでなく「成果」に繋がる差別化戦略の具体的な方法や、その他の企業の事例を紹介しています。今後の差別化戦略策定におけるヒントが詰まっていますので、こちらも合わせてご覧ください。