【5分で解説】コストリーダーシップ戦略とは?事例やメリット・デメリットまとめ

【5分で解説】コストリーダーシップ戦略とは?事例やメリット・デメリットまとめ
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数あるマーケティング戦略の中に「コストリーダーシップ戦略」があります。飲食業界をはじめ各種業界において、数々の大手企業がコストリーダーシップ戦略を取り入れ成功しています。

コストリーダーシップ戦略とはどのようなものなのか。この記事ではメリットやデメリットを解説、戦略の進め方や企業事例などを紹介いたします。

コストリーダーシップ戦略とは

コストリーダーシップ戦略とは

コストリーダーシップ戦略はアメリカの経営学者であるマイケル・ポーター経済学博士が提唱したマーケティングにおける競争戦略のひとつです。

商品製造に必要な原材料費を安く抑えたり、商品を製造する上で発生するさまざまな費用を削減したりして、全体的なコストを下げます。

それに伴い販売価格を安くすることで顧客の注目を集め、競合他社よりも優位に立とうとすることを目的とします。

しかし単に販売価格を下げるだけではないことがこの戦略のポイントです。

コストリーダーシップ戦略を成功させるには

いかに原材料費や製造コストを抑えて、競合他社よりも低価格ながら高クオリティの商品を提供できるかがコストリーダーシップ戦略を成功させる鍵となります。

商品価格は顧客がその商品を購入するか否かの重要な判断材料となりますので、商品価格を下げるほどに競合他社よりも優位に立てる可能性は高くなります。

しかしただ闇雲に価格を下げ続ければ利益は出ず、やがて事業が破綻してしまうことは言うまでもありません。

コストリーダーシップ戦略は安売りではない

コストリーダーシップ戦略は単なる安売りではないことに留意する必要があります。

在庫一掃セールや閉店セールなど、何も戦略を練らず単に商品売価を下げることを安売りと言いますが、これはコストリーダーシップ戦略のうちには入りません。

あくまで赤字や損失が出ないよう原価率や製造コストまでを考察し、利益を高めながら戦略的に売価を落としていくことがコストリーダーシップ戦略の肝となります。

つまり価格を下げることの裏側に、原価を抑える工夫があり、価格を下げながらも利益率をアップさせることこそがコストリーダーシップ戦略なのです。

コストリーダーシップ戦略取り入れやすい企業とは

コストリーダーシップ戦略を取り入れやすい企業の特徴としては以下の要素を満たしていることが理想的です。

  • 生産規模の大きさが必要十分である
  • その分野においての知識や経験がある
  • その分野において優れた技術を保有している
  • 企業内部の組織構成が複雑ではない
  • 社内で情報が共有できる体制が構築されている

生産規模の大きさが必要十分である

生産規模が大きければ製造工程にゆとりができ、多くの商品を製造できます。

また敷地面積が広ければ広い分、製造ライン上にも多くの商品を流すことができるため、単位あたりのコストの低減も可能。設備にかかる固定費用、事業全体に関わるコストなども効率化されます。

その分野においての知識や経験がある

その分野における経験値があるか否かはコストリーダーシップを取り入れる上で重要な要素となります。その上で生産規模を拡大すれば作業の分担化を図ることができます。

また製造工程の要所要所において専門性の高いスタッフを導入すれば、単位あたりのコストを削減しながらクオリティも高められます。

その分野において優れた技術を保有している

もし仮に設備投資や固定費の関係上、規模の拡大にそこまでの予算がかけられないと言う場合は、自社で保有する他社に負けない技術力を活かす方法もあります。

優れた技術力を保有している企業は、コストをかけずに「モノづくり」を行う術を知っています。その技術的ノウハウがあれば低コストを実現できる可能性は高くなります。

企業内部の組織構成が複雑ではない

企業内部の組織構造が複雑な場合、上層部からの指示系統も複雑になりがちです。すると指示伝達にそれだけ多くの部署を経由することになり時間がかかります。

時間がかかれば末端部門まで指示が届くのも遅れ、人や機械の稼働も長引きます。するとそれだけ固定費などの目に見えない余分な経費もかかってくるようになります。

このためできるだけ企業内部の組織構造はシンプルな方が望ましいと言えます。

社内で情報が共有できる体制が構築されている

社内で情報の共有ができる体制が取られているか否かは、コストリーダーシップ戦略を行っていく上で非常に重要です。

ぎりぎりまでコストを削減しようとするコストリーダーシップ戦略では情報の伝達に余計な時間がかからない方が望ましいと言えます。

経営層と現場、社内で一体となり情報共有ができるような取り組みを行っていきます。

コストリーダーシップ戦略のメリット・デメリット

コストリーダーシップ戦略のメリット・デメリット

どれほど良いマーケティング戦略でもメリットもあればデメリットも存在します。

コストリーダーシップ戦略はぎりぎりまで売価を落とせるどの企業にとっても魅力のあるマーケティング手法ですが、低価格になるがゆえのデメリットも存在します。

メリット1:顧客の選択肢に入りやすい

「価格が安い」という点は顧客にとってそれだけでその商品を選ぶ理由・魅力を感じてしまうものです。商品価格は顧客にとってその商品を購入するか否かの重要な判断材料となります。

つまり商品が安いというだけで、その商品は顧客の手に取ってもらえ、興味や関心を惹きつけることができるのです。そして競合他社の商品と比較された時に、より低価格であれば自社商品が選ばれる可能性も高くなります。

また安いと言う理由だけで、試しに買ってみようという心理が働く場合もあります。従来の市場価格帯ではほぼ購入の決断はしないであろう顧客も、安いというだけで購入に至ることも多々あります。

顧客によく選ばれるようになり売れ行きも順調になってくれば、売り場面積の拡大などシェア拡大にもつながってきます。

メリット2:利益幅の調整が可能

コストリーダーシップ戦略は、売価を下げるだけの手法ではありません。ケースバイケースで、ある程度利益幅の調整が可能な融通の利くマーケティング戦略でもあります。

売価を下げずに原価率や製造コストなどを下げ、結果的に利益率が向上すれば、コストリーダーシップ戦略に成功したと言えます。

つまり売価をなるべく落とさず、それまでの価格を維持し続けながら、できるだけ原材料費などの顧客からは見えない部分をいかに削減していけるかを考察することが、コストリーダーシップ戦略の賢いやり方です。

デメリット1:競合他社との価格競争に陥る可能性も

コストリーダーシップ戦略でありがちなのが、低価格競争に巻き込まれてしまうことがまず挙げられます。競合他社も相手企業の価格を参考に自社商品の価格を下げることがあります。

また同じくしてその価格を参考にした別の企業も同様に価格を下げ、結果的に激しい低価格競争になってしまうことがあるのです。これを防ぐためには自社の商品に他社とは違うオリジナルの何かを付加価値として付けることが非常に有効です。

競合他社にはない自社だけのオリジナリティがあれば立派なブランディング材料にもなり、顧客に競合他社と価格で比較されたときにも自社製品を選択してもらえる可能性は十分にあります。

つまり単純に商品売価を落とすだけにとどまらず、オリジナリティを出したり、商品に付加価値を付けたりしながら、原価率や製造コストといった顧客には見えない部分を削減することが重要なのです。

上記のように差別化戦略も取り入れると、どの市場でコストリーダーシップを取るかという点も変化します。従来の市場では安さで目を引けなかったが、〇〇という付加価値がついた市場では最も低価格ということも起こり得るのです。

デメリット2:長期的な戦略になる

コストリーダーシップ戦略が軌道に乗るまでには、時間がかかってしまう場合もあります。コストリーダーシップ戦略を行うためには、まず基本的に全体的にかかるコストの削減を図るために、生産規模の拡大を検討する必要があります。

その他にもノウハウや知識、経験値の蓄積、自社の独自技術の保有などが必要である場合もあります。そのため一朝一夕にはいかないこともあり、ある程度の長期的な目線で考えていかなければなりません。

コストリーダーシップ戦略を行うためにリスクを取り、結果的に費用が嵩んでしまうようであれば本末転倒です。

そのため経営資源が少ない中小企業に関してはいっぺんに変えようとせず、まずは自社にできることは何か、どの部分から手を付けどのように改善していけばよいのかを明確にして、少しずつでもよいので変えられる部分から変えていくのが得策です。

コストリーダーシップ戦略の企業事例

コストリーダーシップ戦略の企業事例

コストリーダーシップ戦略を行い成功している企業の一例を紹介します。
国内でも知名度の高い企業ばかりなので、イメージがしやすいのではないでしょうか。

  • アマゾン
  • マクドナルド
  • ユニクロ
  • サイゼリヤ

アマゾン

コストリーダーシップ戦略で世界的に成功した企業と言えばアマゾンは外せません。ECマーケット事業として、ここまで世界的に有名になる企業は少ないでしょう。

アマゾンで特徴的なのが郊外に建設される巨大な物流センターです。この物流センターで商品を一元管理することにより、強力なコスト競争力を生み出すことに成功しています。

アマゾンが一貫して徹底していた施策が「競合の排除」です。短期的な赤字を計算の上で、競合を排除するために低コスト路線にこだわり、ユーザーの利便性を追求し続けました。

その結果アマゾンがECマーケット市場をリードすることに成功、競合他社は次々と弱体化していったのです。

さらに、基本的に送料無料というアマゾン独自の施策はさらなる新規顧客の獲得にも繋がり、ECマーケット業界において圧倒的なブランディングにも成功。まさにコストリーダーシップ戦略のお手本とも言える企業となったのです。

マクドナルド

コストリーダーシップ戦略を長年に渡り実践し続けている有名企業のひとつにマクドナルドがあります。

マクドナルドの衝撃的だった施策が1992年にハンバーガーの販売価格をひとつ100円にしてしまったことでしょう。

日本国内のハンバーガーチェーン店としては初の試みで、他のハンバーガーチェーン店は度肝を抜かれました。

続いて1995年にはベーコンレタスバーガーやベーコンマックバーガー、チキンマックナゲットといったメニューを期間限定で次々と半額にしていき、コストリーダーシップ戦略を強化していきました。

しかし戦略を強化しすぎたあまり、競合他社が後を追うように低価格化を実施。低価格競争が勃発してしまった時期もありました。

現在では単に価格を下げるだけの施策にとどまらず、新商品開発に力を入れたり、付加価値をアップさせたりするなどコストリーダーシップ戦略を取りながらも、同時に均衡のとれた施策を実践し続けています。

ユニクロ

「低価格で品質も高いアパレル」としてブランディングが成功している企業と言えばユニクロがまず挙げられます。ユニクロもコストリーダーシップ戦略を取り入れている企業のひとつです。

品質やデザインもよく、流行に敏感な若者の支持を集めることに成功しました。

ユニクロが高コストパフォーマンスを実現できている理由は、開発から製造、在庫管理、販売までをワンストップで行っているからです。この形態をマーケティング用語でSPA(製造小売業)と言います。

コストカットを行いながら洋服を製造でき、リーズナブルな価格で顧客へ販売ができるため、コストリーダーシップ戦略と合わせて行えば、非常に相性がよい仕組みとなります。

サイゼリヤ

破格の安さでイタリア料理を提供しているチェーン店として知られる「サイゼリヤ」。サイゼリヤもコストリーダーシップ戦略を導入しています。

コストリーダーシップ戦略では基本の「原材料の仕入れ価格の見直し」を行い、全体的なコストダウンを図っています。さらにオペレーションの効率化を行い、流通システムも徹底管理することで、無駄な予算を削ぎ落としています。

サイゼリヤは売価を安くできたにも関わらず料理の品質をほとんど落としていません。それは本場イタリアの農家の人たちから直接食材を仕入れているからです。

オリーブオイルをはじめパスタやチーズ、プロシュート、ワインなどイタリア料理の基本食材は現地のものを使用しています。これはサイゼリヤが長年に渡り現地農家の人たちとの信頼関係を築いてきた結果なのです。

こういった事例は他社では中々真似ができず、コストリーダーシップ戦略では優位に立てます。

コストリーダーシップ戦略の進め方

コストリーダーシップ戦略の進め方

コストリーダーシップ戦略は以下の手順で進めると効率よく進められます。

  1. 自社の進出分野の決定
  2. 売価の決定
  3. 原材料費などの仕入れ価格決定
  4. 作業効率を改善する
  5. 商品の利益を確保する
  6. 生産ラインを設計する

1.自社の進出分野の決定

自社の得意分野は何かを考察し、その分野への進出を決定します。ニッチな市場であればあるほど競合他社は減り、自社を必要とする顧客は増加します。

ニッチ市場とは別名「隙間市場」とも言われ、大手企業が参入してこないような隙間の市場のことです。

一般の市場規模に比べて小規模な市場となりますが、一定数の顧客ニーズがあり自社をブランディングしやすいのが特徴です。

2.売価の決定

売価を決定しますが、競合他社よりも安くすれば顧客に自社商品が選ばれる確率は高まります。

しかし単に安くすれば良いというものでもなく、しっかりと原材料費や製造コストなどとの兼ね合いを考慮した上で決定をします。

3.原材料費などの仕入れ価格決定

原材料費などの仕入れ価格の決定はコストリーダーシップ戦略では要の部分と言ってもよいでしょう。ユニクロやサイゼリヤはこの部分での成功が大きいと言えます。

4.作業効率を改善する

作業効率を改善して無駄な製造工程や手順を省いていきます。こうすることで生産性がアップし、固定費も削減されていきます。生産規模の拡大と同時に行うことで飛躍的に業務効率化が図れるようになります。

5.商品の利益を確保する

商品を安く設定しすぎたあまり利益が出ないようでは本末転倒です。利益をしっかりと確保できるように、利益幅を綿密に設定していきます。

原材料費をギリギリまで削減するコストリーダーシップ戦略では、利益幅の設定如何で取れる利益率が大幅に変わってくることがあります。

6.生産ラインを設計する

上記すべての工程が設定できたら生産ラインを設計していきます。生産ラインは設置したあとでの変更が難しく、変更する際は労力とコストがかかるため設計は入念に行っていきます。

のちに生産規模を拡大しやすくできるように、スペースにゆとりを持たせた設計にできると最適です。

コストリーダーシップ戦略まとめ

コストリーダーシップ戦略を取るためには、価格を下げても利益率を向上できる仕組みづくりが必要になります。

自社の現状のチェックや分析など、準備にも時間がかかるため、事例にもあるようにやはり企業体力のある大手企業が取り組みやすい戦略です。

ですが生産コストを抑えられる点はないか等、コストリーダーシップ戦略で必要となる要素を少しずつでも取り入れていくことは、企業規模に関わらず重要です。この機会に、無駄な工程がないかなど一度見直してみてください。

中小企業でもコストリーダーシップ戦略は取り入れられる

「どんなに工夫をしても、いま自社が戦っている市場の最安値まで価格を下げたら事業が成り立たない」
そんな場合には、コストリーダーシップ戦略は実現性がないと考えてしまうかもしれません。

しかし戦う市場を変えてみるという考え方もあります。
たとえばAという商品市場での低価格化は難しくても、A+αという商品市場でなら可能ということもあります。

そのために自社ならではの強み、差別化できる価値をまず明確にしてみましょう。
その上で商品をつくることで、真似されない価値が付加された商品ができあがります。

すると戦う競合が絞られたり、ガラッと競合が変わってしまうことがあります。つまり戦う市場が変わるのです。
そしてその市場でならコストリーダーシップ戦略が取れる、という可能性もあるかもしれません。

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