プロダクト(製品)ブランディングとは?方法やメリットを解説
最終更新日:2024年03月23日
製品のイメージや価値を高め、他社製品との差別化や競合優位性の確立が期待できるプロダクト(製品)ブランディング。
ここでは、プロダクトブランディングの概要やメリットをはじめ、進め方のポイントや具体的な手法などをわかりやすく解説しています。プロダクトブランディングを正しく理解し、マーケティング戦略の一環として取り入れていきましょう。
また、下記のページにはブランド戦略やブランディングの基本的な情報をまとめている資料も用意しております。ブランドの価値構造やブランディングの各ステップを詳しく知りたい方は、ぜひこの記事と合わせてお役立てください。
プロダクト(製品)ブランディングとは
マーケティングにおけるブランディングとは、企業そのものや製品・サービスに対して顧客が持つ価値意識やイメージを形作ることを指します。さらにそこから、コミュニケーションを通じて共感や信頼などを醸成し、より価値を高めていくことも、ブランディングの重要ポイントです。
このようなブランディングの概念をベースに、製品ブランド確立を目的として行われるのが「プロダクト(製品)ブランディング」です。プロダクトブランディングでは、製品が持っている価値を高めて、顧客に存在感を印象付けることがポイントとされています。
製品への興味・関心を持ってもらうことに始まり、他社の製品との比較・検討を経て、最終的に自社の製品を選んでもらうまでが一連の流れです。品質や性能だけではなく、コンセプトや他社製品との違いなどの明確化が重要とされています。
つまり、プロダクトブランディングとは、パッケージデザインや製品名、宣伝方法、販売方法など、その製品を取り巻くすべての要素について検討し、どうすれば顧客が持つ価値やイメージを、より高められるかを追求していくマーケティング手法といえるでしょう。
プロダクト(製品)ブランディングのメリット
製品に付加価値が付く
プロダクトブランディングによって製品の認知度や価値が高まると、製品の品質や性能について以上に、その製品そのものに対してポジティブな評価が得られます。
例えば、新機種が発売されるたび、行列ができることで有名なApple社のiPhoneですが、もし他社が同じスペックの製品を売り出したとしても、Apple社のロゴであるAppleマークがなければ、iPhoneほどの行列ができることはないでしょう。これがプロダクトブランディングの力なのです。
プロダクトブランディングによってブランド化が成功すれば、iPhoneのように小さなロゴひとつで、顧客に与える印象が大きく改善されます。さらには、その製品を所有していることによる満足感や安心感などの心理的な充足といった付加価値も期待できるのです。
リピート客が増加する
ブランド化された製品を一度購入し、満足のいく体験をした顧客は、買い替えなどを検討する際にリピートする可能性が高くなります。誰しも一度使ってみてよかったものは、また使いたいと思うのは自然な心理といえるでしょう。
また、何度も繰り返してそのブランドを使っていくうちに、愛着がわき、ブランドのファンのみならずメーカー自体のファンとなってもらえる場合もあります。リピート客やファンを多く獲得できれば、営業による新規開拓だけに頼らずとも、ある程度の売上が期待できるでしょう。
製品比較における優位性を構築できる
日本の企業では、これまで企業自体をブランド化するコーポレートブランディングが主流でした。しかし近年では、量販店での取り扱い比率が高まったことで、企業同士というよりも製品同士の比較が一般的となっています。
例えば、これまでは「パナソニック製だから買う」だったものが、「ビエラだから買う」というように、製品そのものが持つ価値やイメージによって購入されるようになってきたというわけです。
つまり、プロダクトブランディングは商品の売上に直結するといっても過言ではありません。製品のジャンルや特性などによって、適切なブランディングを行い、製品の優位性を高めることで、店頭で横並びになった時により顧客の選択肢にのぼる確率を高められるのです。
価格競争を回避できる
プロダクトブランディングによって、しっかりとしたブランド化が実現できている場合、製品価値や信頼性などの力によって、競合製品との価格競争に巻き込まれにくくなります。
顧客目線で考えた場合、同じ製品であれば安いほうを選択するのは当然のことです。しかし、ブランディングにより、価格以外の価値がはっきりしている製品であれば、多少高くてもその商品を選ぶ可能性が高くなります。
価格競争に巻き込まないようなブランディングができれば、製品の価格が維持できる、多少の値上げでも顧客離れが起こりにくいという、中長期的な売上にとって大きなメリットが得られるのです。
プロダクト(製品)ブランディングの進め方・方法
プロダクトブランディングの進め方
製品に関わるステップをひとつひとつ詳細に分類して取り組む
プロダクトブランディングでは、顧客が製品に興味を持ち、比較・検討して購入に至るまでのすべてのステップについて検討していきます。可能な限りステップを細かく分類し、ひとつひとつ伝えるメッセージや感じてもらたいことを整理しましょう。それらが決まったあとは、伝わるのにもっとも向いている媒体を選んで発信します。
ポジティブなブランドイメージがつくまで改善していく
ブランドは、顧客のイメージや評価が蓄積して確立されていきます。そのため、顧客がその製品に対し、ポジティブな価値を見出すまで、ブランディングの方向性や計画を改善していく必要があります。
ただし、あまりにも軸がぶれてしまうと、不信感から顧客離れの恐れがあるので注意しましょう。こうした事態を避けるためには、ブランディング開始時の入念なリサーチや準備で、しっかりとした軸を定めておくことが重要です。
プロダクトブランディングの方法
製品・サービス
製品・サービスは、プロダクトブランディングの基盤となるものです。原料や製法、機能などを詳細に検討していきます。ただし、すべてをハイスペックにすればよいということではありません。ポイントは顧客目線で考えることです。たとえば、プロダクトの見た目を重視する顧客を想定しているのであれば、高価な素材にこだわるが必要することはないでしょう。
プロダクトブランディングでは、顧客に選ばれる製品を作り出すことが目的です。顧客ニーズのリサーチを入念に行いましょう。
ロゴ
ロゴは、ブランドを視覚的に識別するために欠かせないものです。人間は情報の8割を視覚から取り込んでいるともいわれているため、プロダクトブランディングの要素の中でも特に重要といえるでしょう。ロゴが浸透することで製品の認知度や価値が高まり、ブランドとしてのロイヤリティ(既存顧客のブランドに対する愛着)も醸成されます。
ロゴはブランドの顔ともいえるものであるため、他社からの模造防止の観点から、ロゴの取り扱いに関するガイドラインを作っておくとよいでしょう。
パッケージ
顧客が直接手に取るパッケージは、そのデザインによって購入率が左右されます。パッケージのデザインで注意したいのは、下記の3点です。
- 製品の魅力・特徴が伝わっている
- 他社の製品とかぶっていない
- 機能性があって無駄なコストがかかっていない
製品によっては、パッケージの機能性が重視される場合もあります。例えば、詰め替え洗剤であれば「詰め替えのしやすさ」、冷凍食品であれば「電子レンジ対応可」などです。
パッケージは、顧客が手に取る時だけでなく、実際に使う時の様子も想像しながらデザインすることがカギといえるでしょう。
キャッチコピー
インパクトのあるキャッチコピーは、見た人・聞いた人の記憶に残り、ブランドを強くイメージさせます。ブランドの特徴やコンセプトを端的に分かりやすく表現するようなキャッチコピーが理想です。
「100人乗っても大丈夫!」(イナバ物置)のように製品の特徴を表現したものや、「うんと眠ろ、うんと遊ぼ」(パンパース)のように、製品のコンセプトを表現したものなどがあります。ブランディングの軸に合わせ、語呂の良さやインパクトなどを意識しながら検討してみましょう。
宣伝媒体
プロダクトブランディングでは、ブランドを認知してもらうことが大切です。そこで重要となるのが、宣伝媒体です。
宣伝媒体には、製品カタログやパンフレット、新聞や雑誌の広告といったオフライン広告、WebサイトやSNSなどを活用したオンライン広告があります。
宣伝媒体は、それぞれ特徴や得意とするターゲットなどが異なるため、自社製品に合った媒体を選択が大切です。広告内容とあわせて、広告を出す場所やタイミングなども検討するとより効果的でしょう。
販売方法
プロダクトブランディングの最終段階となる販売については、顧客の購買動向や市場動向などを入念にリサーチしたうえで決定する必要があります。ここを読み違えてしまうと、どんなによい製品であっても顧客に選ばれにくくなってしまうので注意が必要です。
ブランディングの軸に沿って、製品のコンセプトやイメージに合わせた販売場所・方法などを検討し、どうすれば顧客が自社製品を手に取ってくれるかを考えましょう。
プロダクトブランディングで「選ばれる」製品を
P&Gが行っているブランド戦略のポイントについてご紹介しました。ターゲットの絞り込みや魅力的な商品開発するための社会問題に対する取り組みなど、様々なことを行っているメーカーです。もちろん、P&Gのブランド戦力も参考になるのですが、自社のブランディングを行う際には、自社にとって最も適した方法を実践していくことが重要です。
国内でも主流となりつつあるプロダクトブランディングは、製品そのものの価値やイメージを高めることで、より顧客に選ばれる製品を作り出すことが目的です。
顧客が製品に対して価格以上の価値を見出せられれば、営業リソースを抑えても、ある程度の安定的な利益が期待できるほか、競合との価格競争の回避ができるのもメリットです。
成功するブランディングの大きなハードルとなるのは、競合との差別化です。プロダクトブランディングの軸の選択や製品自体・パッケージのデザイン、広告媒体選びで競合と違う切口で自社製品をアピールできていないと、期待通りのブランディング効果が伴わない恐れがあります。
またもう一つ気を付けたいのは、ターゲットとする顧客の選択です。商品を選んでくれる顧客像が曖昧だと、プロダクトブランディングに関する様々な判断がしにくくなります。最初から幅広い層を狙うよりも、商品を購入してほしい顧客像を徹底的に絞ったほうがブランディング効果が現れやすいです。
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