任天堂のブルーオーシャン戦略のポイントとは
最終更新日:2021年04月28日
2000年代、SONYの「PlayStation 2」やMicrosoftの「Xbox」など、高機能の家庭用ゲーム機が次々と世に登場。
ゲーム業界では映像の美しさやゲーム性の高さなど、リアリティを追求するのがトレンドとなり、ほとんどの競合が同じ方向を目指していました。
当時、任天堂もゲームキューブという家庭用ゲーム機を販売していましたが、激しいレッドオーシャンの波に飲み込まれそうになります。
そんな任天堂が2006年、満を持して発表したのが「Wii」です。発売からすぐに話題となり、たちまち大人気になります。任天堂は一体、どんな戦略でブルーオーシャンを発見したのでしょうか。
任天堂のブルーオーシャン戦略のポイント
新しいゲーム機の開発にあたり、任天堂が目をつけたのが「ゲームファンではない人たち」です。
他のメーカーと同じようなことをしていては自社の強みを活かせないのではないか、と考えた任天堂は、これまでユーザーとして当てはまらなかった「非顧客層」に向けた商品を開発し、みごと大成功をおさめます。
普段ゲームで遊ばない世代を狙った
これまでの主力ユーザーであった10代後半~20代をターゲットにせず、普段あまりゲームで遊ぶ機会のない小さな子どもや大人が楽しめるゲームは何かを追求しました。
従来のゲームファンの求めるリアルな映像や複雑な機能にとらわれず、誰でも簡単に操作できる点を重視したスポーツなどのカジュアルなゲーム開発に注力します。
「家族で遊べる」というベネフィット
1人きりで遊ぶゲームではなく、家のリビングなどで複数で遊べて全員が楽しめるゲームとして打ち出しました。
このコンセプトが、家でゲームをやらないファミリー層やカップル・夫婦の間でたちまち話題に。みんなで遊べるという付加価値をつけることで、新しいターゲットの開拓に成功しました。
これまでのゲームにはない爽快感
従来のゲームにはない、片手で簡単に操作できるワイヤレスリモコンを採用しました。リモコンのボタンを最小限にして、誰でも直感的に操作できるようにしたのです。
子どもからお年寄りまで簡単に使える、この「Wiiリモコン」も大ヒットの一因といえます。リビングを広々と使って操作できる点に加え、リモコンと連動してゴルフやテニスなどの動きをリアルに再現できる爽快感を加えました。
既存の価値観にとらわれない商品開発
これまで、ゲーム業界での主な戦略といえば最新グラフィックを使ったリアルな映像美や秀逸なシナリオに沿ったストーリーの追求でした。しかし、任天堂は、これまでの価値観にとらわれずメジャーな市場から離れた商品開発を行ったのです。
機能を省いてコストを削減
高機能ゲームの開発には莫大なコストがかかっていました。そこで、任天堂は、リアルなグラフィックや美しい映像などの「最先端」にこだわらず、高い機能や操作性、シナリオ長編コンテンツを全て取り除きました。カジュアルさに重きをおき、単純明快に楽しめるゲームにしてコスト削減につなげました。
母を味方につけた販売戦略
Wii Sportsなどのゲームソフトが発売されていて、体を使って家族全員が遊べるWiiは、今までゲームに関心のなかった人にも広く受け入れられました。とくに、これまでゲームの「敵」とされてきた「家庭のお母さん」を取り込むことに成功したのです。
任天堂はその後も「母親を敵にしないゲーム機」をテーマに開発を続けています。2017年に発売されたNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)が受け入れられているのも、子どもの知育をコンセプトにしたゲームソフトが多数発売されているからと言えるでしょう。
任天堂のブルーオーシャン戦略まとめ
任天堂が行った戦略は、「必ずしも最高品質や最高技術が必要とは限らない」という既存の価値観にとらわれない視点と、「顧客が求めている本来のことは何か」という価値の追求でした。
任天堂のように、自社製品・サービスが提供できる価値のポジションと顧客との距離・立ち位置をもう一度見つめ直すことで、市場で気づかれていなかった新しい価値「ブルーオーシャン」の発見につながるかもしれません。