比較広告とは?マーケティング事例と注意点まとめ
最終更新日:2024年04月19日
比較広告とはどのようなもの?
競合他社と自社製品を比較し、自社に有利な内容を伝える広告です。コンパリゾンアドとも呼ばれ、価格や機能などの比較を効果的に活用します。
このほかにもメッセージアド(意見広告)やチャレンジアド(挑戦的広告)と呼ばれる広告戦略がありますが、ここでは比較広告について掘り下げていきたいと思います。
比較広告の本家本元といえば、アメリカ。コカ・コーラとペプシコーラの比較広告があまりにも有名です。そもそも大統領選挙のネガティブキャンペーン自体、ある意味比較広告のようなものです。アメリカでは広告が競争そのものであるという考えがあるからだと言われています。
比較広告に対する日米の違い
世界中がアメリカのように比較広告に寛容かというと、そうではありません。ヨーロッパでは日本と比較すると規制は緩いようですが、攻撃的な比較広告は規制の対象になります。
日本では「不当景品類及び不当表示防止法」、いわゆる景品表示法(景表法)によって比較広告が制限されています。比較によって自社商品が優れている、もしくは有利であるとの誤認を招く比較広告を禁止しています。
日本においては新商品発売に伴い自社商品の旧型と比較する場合が多く見られます。これは他社と比較する広告には誹謗・中傷のイメージがつきやすく、日本の国民性には合っていないとされていたからです。
比較広告を打ち出す目的は、優れた商品やサービスをユニークな視点で消費者に認知してもらうことです。ただし比較広告にはメリットばかりではなく、デメリットもあります。
比較広告のメリットとデメリットについて整理しておきましょう。
比較広告のメリット
比較広告は自社製品と他社製品、または自社の新旧製品を比較し、消費者に役立つ情報を伝えるとともに自社製品をアピールできます。自社の商品やサービスを消費者へ明確に伝え、その価値を訴求するには有効な広告戦略です。
ただし結果的に他社製品をおとしめるような広告につながることを懸念することから、公正取引委員は「比較広告は好ましい広告手法ではない」としていました。
しかし1987年、社会的な考え方の変化により「公平で客観的データを使用した上で、自社と他社を比較し優れた製品・サービスの主張は可能」としました。これは広告の公正と消費者保護の観点から決定したものです。
消費者にとって公平な視点で比較された情報は有益であり、よりよい製品を手にするための目安になるという視点から改正されたと言えます。
比較広告のデメリット
比較広告は景表法に抵触しやすい一面を持っています。もし不正競争行為、または優良誤認につながる広告であると見なされた場合、比較対象の他社へ損害賠償支払い責任が生じ、信用回復の措置が適用されるケースもあります。
比較広告で裁判になったロッテとグリコのキシリトールガムの一件では、「一般的なキシリトールガムに比べ、約5倍の再石灰化効果を実現」としたグリコの「ポスカム」広告が不正競争防止法に違反するとして、ロッテがグリコを訴えたものです。
実験の再現を求められたグリコがこれに応じず、最終的にロッテが逆転勝訴。グリコの広告差し止めは認められましたが、謝罪広告や損害賠償は認められませんでした。
一歩方法を間違えると訴訟のリスクもありますので、比較広告を検討する場合はデータなど数的根拠が証明できる内容に限定する必要があります。
比較広告の制作で注意すべきこと
比較広告自体は違法ではありません。しかし適正な比較でなければ法律違反になる可能性があります。打ち出した比較広告が科学的根拠を用いているか、他社と公正な比較を行なっているかが重要です。
加えて、公正なデータを使用したとしても消費者に誤認を与えるような、自社を優位に謳い誇張表現も注意しなくてはなりません。同時に、自社製品と比較した他社製品が自社よりも劣っているなどとほのめかす行為は誹謗・中傷行為にあたります。
Web上で比較広告を展開するのであれば、各法令への理解と順守がマストであると認識しましょう。外部制作会社などに比較広告の制作を依頼する場合は、マーケティングに知見があり法令にも明るい企業に依頼することをおすすめします。
比較広告と景品表示法
比較広告が不当表示とならないためには、消費者に誤認を与えないことが重要です。公正取引委員会および消費者庁の通告「比較広告に関する景品表示法上の考え方」には、消費者の誤認を避けるための要件について、以下のように説明しています。
(2)適正な比較広告の要件
したがって、比較広告が不当表示とならないようにするためには、一般消費者にこのような誤認を与えないようにする必要がある。
このためには、次の三つの要件をすべて満たす必要がある。
① 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
② 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
③ 比較の方法が公正であること
引用元:消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_37.pdf)
先ほどのキシリトールの事例で言えば、比較広告の内容を裏付ける第三者機関での実証実験の結果が公表できれば問題ない、ということになります。
比較広告ガイドラインの留意点
商品データは適切に実験・調査によって導き出された、数値や事実などの客観的データ結果の使用が必要です。比較広告には国公立、民間を問わず検査機関で行なわれれた調査などと明記し、他社と比較する際は必ず他社に事実確認を取りましょう。
たとえば「A食品はB食品よりおいしい」といった主観に基づいた比較広告はできませんが、「B食品よりもA食品のほうがおいしいと回答した人が100人中60人いた」という客観的な測定値があれば、比較広告として成立します。
また市場の常識として同等の商品ではないものを比較対象としてはいけません。これは等級の異なるものや現在売られていないものも該当します。
さらに自社に都合よくデータの一部を抜粋して明記したり、一部の項目のみを引き合いに出したりする行為も不正と見なされます。
第三者機関により公正に調査されて比較されたものは、消費者が商品やサービスを選ぶ際に参考にする価値を認められます。公正な調査による数値に基づくランキングやレコメンドは、長く支持されている比較広告の手法です。
事実に基づいた明快な比較軸で多くの情報が整理されたメディアは、買い手(消費者)に購買行動のきっかけを与える比較広告として、大いに機能します。他社をおとしめる広告とは一線を画す、消費者にとって有益なものです。
比較広告のマーケティング事例
先ほども少し触れましたが、日本の比較広告の多くは、自社の旧商品と新商品を比較したものが大勢を占めています。比較広告のマーケティング事例としてユニークな広告は、海外のものがほとんどです。
アメリカのように競争相手を蹴落すようなそ比較広告は打てませんが、広告戦略を考える視点としては、参考になると思います。なかには「なるほど!」とうなずける比較広告もあるので、いくつか事例を紹介します。
マクドナルドの比較広告
各国でユニークかつインパクトのあるCMを放映しているマクドナルド。ドイツとフランスのCM事例を紹介します。
バーガーキングを引き合いに出したドイツのテレビCM
2011年にドイツで放映されたCMです。公園のベンチに腰かけたひとりの男の子が、マクドナルドの紙袋を膝に置いてポテトを食べていたところ、いじめっ子たちがやってきて彼のポテトを奪ってしまいます。
いじめっ子たちに奪われない方法はないかと考えを巡らせた彼が思いついたのは、「バーガーキング」の紙袋をカモフラージュとして使う方法。結果、いじめっ子たちは見向きもしません。
男の子の頭脳戦を描いたこのCMは、「マクドナルドのポテトは競合他社と比較できないくらい、たくさんの人に人気の商品だ」と主張しています。子どもの出演で愛嬌を漂わせ、嫌味な雰囲気を打ち消したユニークなCMです。
参照元:YouTube「ドイツ マクドナルド バーガーキング煽り」
ソーシャルメディアを使用したフランスのCM
2016年当時、フランスではマクドナルドの店舗数は1,400店ほどありました。一方バーガーキングはたった45店舗でした。田園風景が広がる田舎道を走る車からは、258km先の店舗を示すバーガーキングの見上げるほど高い看板と、その隣には5km先の店舗を示すマクドナルドの看板が立っています。
店舗数の少ないバーガーキングに対し、店舗数の多さと利便性をアピールしたCMです。
参照元:YouTube「McDonald’s Panneau directionnel」
マクドナルドのこの比較広告先制攻撃に、バーガーキングは続編CMで反撃しました。
バーガーキングのCMでは、看板を見たドライブ中のカップルがマクドナルドに立ち寄りますが、購入したのはコーヒーのみ。「道のりは長いから」とバーガーキングで食事するためなら258kmの道のりも苦ではないとアピールしています。
参照元:YouTube「Burger King – #WhoIsTheKing (EN)」
両社の広告合戦はどちらも事実に基づきながらも、ユーモアにあふれる切り口で比較広告が制作されています。CMを見た人が嫌な思いをすることはありませんし、笑いさえ誘うような作品に仕上がっています。
マイクロソフトの比較広告
Apple製品やGoogleを対象とした比較広告の事例を紹介します。
Apple製品との比較広告
2013年YouTubeで公開された、iPadとWindows8タブレットの比較広告です。Windows8タブレットと並んだiPadが「すみません」「できません」と謝り、ラストで「iPad、699ドル」「Windows8タブレット、449ドル」と料金の差をアピールしています。
「iPadよりも多くの機能を持つWindows8タブレットの方が便利で安い」と比較してアピールしたCMです。
参照元:YouTube「Windows 8 Less talking, more doing – Troll de Microsoft vs Apple」
Googleへの批判キャンペーン
2013年マイクロソフトがGoogleの変更点を批判するキャンペーンを新聞広告で行ないました。Googleを揶揄する「Screwed(めちゃくちゃだ)」と「Google」を組み合わせた造語「Scroogled」のキーワードが紙面に掲載されました。併せてGoogleの監視や個人データ利用に対するアンチキャンペーングッズも販売しています。
Googleの比較広告
2019年Googleから発売されたスマートフォン「Pixel 3」を宣伝するTwitterによる比較広告です。これはカメラの夜景モードの性能を比較したもの。フラッシュを使わなくても日中のように鮮明な写真を撮影できる機能の紹介です。
比較対象はApple社の「iPhone XS」。映像には「Phone X」(なにがしの電話)と表示されていますが、下部にはしっかりと「iPhone XS」と表記されています。
Twitter上でたった数秒しか流れない比較広告ですが、その違いがしっかり認識できます。
参照元:Made By Google Twitter公式アカウント
Shot on our phone vs shot on their phone. Get #nightsight and don’t get left in the dark. pic.twitter.com/bOS1EXi7Z1
— Made By Google (@madebygoogle) February 2, 2019
比較広告が有効なのは中小企業の製品やサービス
比較広告は消費者の視線を集めるには効果的ですが、必ずしもシェア率を高めるものではありません。ただ、大手企業や先行製品の認知度を借りて自社商品やサービスを知ってもらうきっかけはつくれます。
ただし単なる他人のフンドシだけでは、名の知れた商品からの転換はできません。ここが比較広告の難しいところです。
事実に基づいた公正な比較で競合に勝てる強みがある、という自信がある企業様には、ぜひ弊社の「ポジショニングメディア」をご活用いただきたいです。
なぜならば、大手先行商品と比較して強みが明確に打ち出せるのであれば、中小企業でも十二分に勝機があるからです。下の図を見てください。
競合にはなく自社にある優位性や強みで、それを消費者が価値として感じてくれるバリュープロポジションがあれば、比較広告で勝てないはずがありません。
景表法などの消費者保護法の順守を大前提にしたポジショニングメディアについては、下記ページでくわしく説明しています。ぜひお目通しください。
根拠のある強みで公平な比較広告がつくりたいなら
かつて比較広告(比較サイト)は根拠のないランキングなどにより強引な誘導が多くありました。現在その手法は前時代的なものになっています。
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