バーティカルSaaSを導入すべき業種とは?ホリゾンタルSaaSとの違いも解説

バーティカルSaaSを導入すべき業種とは?ホリゾンタルSaaSとの違いも解説
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特定の業界・業種に特化した「バーティカルSaaS」。導入すれば、業務効率が高まると聞いたものの、何をどのように選べば良いか分からない方、そもそもバーティカルSaaSをよく理解していない方は多いのではないでしょうか。

この記事では、バーティカルSaaSの概要と、メリット・デメリット、向いている業種について解説しています。導入すべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

バーティカルSaaSとは

バーティカルSaaSイメージ画像

バーティカルSaaSの言葉を聞いて、何となくしか理解していない方もいるかもしれません。まずはバーティカルSaaSについて解説します。

SaaSとは

SaaSとは、Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)を略した言葉で、日本語に訳すと「サービス化したソフトウェア」という意味になります。「サーズ」または「サース」とも呼びます。

ソフトウェアといえば、以前はパソコンにシステムをインストールして利用するケースがほとんどでした。しかし現代では、いわゆる「クラウドサービス」として利用するのが一般的です。

厳密には、クラウドサービスの中のひとつの分野としてSaaSが含まれます。例えばパソコンのブラウザでURLにアクセスして利用する下記サービスがSaaSに当たります。

  • Gmail
  • Slak
  • Zoom
  • kinton
  • 弥生オンライン

バーティカルSaaSとは

バーティカルSaaSは、SaaSのなかでも「業種が限られたサービス」を指します。

バーティカルSaaSのバーティカルはverticalで垂直という意味の言葉です。広く浅く開発するのではなく、ひとつの業種に限定し利便性を向上させるため狭く深く開発していることから、「垂直」という意味のバーティカルの単語が使われるようになりました。

バーティカルSaaSのメリットデメリット

バーティカルSaaSのメリットデメリットイメージ画像

バーティカルSaaSが他の一般的なSaaSと異なる最大の特徴は、各種業務に特化したシステムが構築されている点です。

SaaSを導入するにあたって得られるメリットとデメリットを比較して検討したい方もいるでしょう。バーティカルSaaSを選んだ際に一般的なSaaSとは異なる点をメリットとデメリットで解説します。

メリット

業務効率が改善される

一般的なSaaSと異なり業種に特化しているため、かゆいところに手が届くような設計で業務効率が大きく上がります。システムを開発しているのが該当業種の老舗企業が運用しているケースも珍しくありません。

一般的なバーティカルSaaSでは仕様が自社業務に合わず、特殊な作業を挟むなどSaaSを導入したのに効率が下がってしまうケースもあります。特にニッチな業種になるほど、効率化の面でメリットが大きくなります。

すぐに利用を開始できる

インストールの必要もなく、アカウント作成などですぐに利用できるケースも多いのがSaaSの特徴です。一般的なSaaSにも該当するメリットにも思えますが、既に該当業種向けに特化されているのでカスタマイズする必要がほとんどありません。

一般的なSaaSサービスでは、自社の業務内容をヒアリングした上でシステムに反映させ、利用開始までに期間がかかってしまうケースもあります。

デメリット

情報が少ない

利用企業数が限られてしまうため、導入後の口コミや細かい情報などがなかなか見つからない部分があります。多く使われているシステムなら社員に利用経験者がいて詳しく聞けるケースもありますが、バーティカルSaaSだと導入前に全く情報が見つからないケースもでてくるでしょう。

利用を検討したいサービスがあるけれど事前情報がない場合、まずは企業に問い合わせて他社導入事例などを聞いてみるのがおすすめです。

代替サービスが見つかりにくい

使い勝手に不満があっても他に同様のサービスがなかなか見つからないのがバーティカルSaaSのデメリットです。必ずしも導入したサービスが完全なシステムとは限りません。下記の理由で導入を取りやめたい場合もあるでしょう。

  • 思っていたよりも使いにくかった
  • 自社の業務内容に適していなかった

しかしそもそも市場が限定されているため競合他社が少なく、ジャンルによっては他に選択肢がない場合も珍しくありません。また競争が激しい分野ではないため、導入価格も高額に設定されているケースもあります。

ホリゾンタルSaaSとの違い

ホリゾンタルSaaSとの違いイメージ画像

特定の業種に対応する「バーティカルSaaS」の一方、それ以外を一般的なSaaSと呼ばれます。さまざまな業種で利用できる目的で開発した一般的なSaaSサービスは、「水平」の意味をもつホリゾンタルSaaSとも言われています。

SaaSの解説部分でご紹介したGmailやZoomなどは、業種を問わないためホリゾンタルSaaSです。医療分野でも農業でも利用でき、特定の業種に特化していません。ただし営業部門やカスタマー部門など、企業内における職種では使いやすいように特化されているサービスが多くあります。

なぜ今バーティカルSaaSなのか?

ホリゾンタルSaaSの選択肢も豊富ななか、なぜバーティカルSaaSを選ぶ企業が多いのでしょうか。導入すべき理由は多くあります。

業界に強いシステム

ホリゾンタルSaaSとの違いでも解説していますが、やはり最大の魅力は業務に特化したサービスという点です。市場規模が小さいバーティカルSaaSでは、「こう変わると使いやすい」などの意見が反映される可能性も高くなるため、使い続けているうちに自社に使いやすく改善されていくでしょう。

業種を問わずDX化が加速している

現代の日本において、職種や業種を問わずデジタル変革を意味するDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。2021年にはデジタル庁も発足し、2022年9月時点では下記の事業が進められました。

  • 接種証明のアプリ化
  • マイナンバーを活用した行政サービスのサイト発足
  • デジタルインボイス制度の開始

今後民間企業においては、バックオフィスと呼ばれる事務やデータ処理などの業務、自治体や公共インフラ事業などではデータ連携において、デジタル化が推進されています。

デジタル化とは無縁」と考えている企業も、他企業との取引時にDX化を迫られるケースが増えることは避けられません。

しかし、デジタルを導入しようにも一般業種とは異なるために、サービス内容を見て断念するケースもあるでしょう。自社の業種が特殊でDX化は難しいと考えている企業には、業種に沿ったバーティカルSaaSを探すのがおすすめです。

海外からの投資も活発

バーティカルSaaSの市場は拡大している状況です。市場が限られている分野だとバーティカルSaaSの提供会社が成長しにくく、将来的な安定に不安を感じて取引したくないと考える方もいるでしょう。

しかし、海外投資家は日本のバーティカルSaaSサービスに関心をもっている傾向にあり、きちんとしたビジョンをもっている企業は資金調達に成功しています。

既にバーティカルSaaSの市場が成熟している他国とは異なり、日本はまだ他国と比較すると未上場で期待できるバーティカルSaaS企業があるため、投資チャンスと考えている投資家が多いのです。

バーティカルSaaSの導入事例

日本でバーティカルSaaSが展開されている3業種をご紹介します。自社で導入する前に同じ業種にて事例があるか確認してみましょう。

建設業

建設業のイメージ画像

さまざまな業種のなかでも、比較的DXの推進が充分に浸透していないのが建設業です。理由としては最終的に中小企業が現場作業を請け負っているケースが多く、かつ中小企業は人材不足によりDXノウハウがないために踏み込めない点が挙げられます。

しかし、デジタルノウハウをもたない人材が中心となっている中小企業こそ、バーティカルSaaSを導入すれば業務が大きく改善されます。建設業に特化し便利な機能が揃っているバーティカルSaaSなら、複雑な操作や手順の必要がなくタブレット操作にて完結するためです。

現場報告機能

建設企業における業務として、大きく分けて現場作業と報告や処理する事務に分けられます。作業の進行状況を報告する際には、文字だけでなく写真を撮影して証拠とするケースも多くあるでしょう。

状況報告の画像と文章を社内や取引先へ簡単にリアルタイムで共有でき、Excelファイルベースの帳票作成も建設業向け内容になっており入力が難しくありません。

また、作業図面はサービス上でデジタルにて確認でき、写真も配置できます。すべての作業が現場で完結するため、責任者が一度事務所へ戻るといった工程もなくなり、直帰できるシーンも増えてくるでしょう。

検査黒板が撮影画像に挿入できるなど、できるだけ現場に道具を持ち込まず作業できるような配慮も考えられています。

管理者業務の負担が大きく軽減

現場報告がリアルタイムにできれば、現場管理業務の負担は大きく軽減されます。わざわざ各現場に足を運ばずに画像付きですべての現場状況が確認できるため、社内にいたまま現場状況をチェックできるのです。

従業員同士のコミュニケーションミスも防止

建設現場の事故原因になりやすいのが、伝達ミスやコミュニケーションミスです。しかしコメントの閲覧状況をチェックできる機能があれば、作業員のなかで誰がまだ連絡事項を把握していないのかを特定して個別に話せます。

「伝えたはず」「分かっているだろう」などの大きな事故原因を減少できるのもDX化のメリットです。

業種ごとに沿った検査機器との連携

他にもオプション機能として建設業務の内容ごとに必要となる専門機能も搭載されている傾向にあります。例えば下記のような試験や測定機器との連携です。

  • 騒音計
  • 照度測定
  • コンセント試験
  • 配筋検査

特に検査機能においては他のSaaSサービスで代替するのは難しい部分です。上記作業の検査値をわざわざ入力するのに大きな時間を費やしているケースでは、バーティカルSaaSを導入すれば作業時間が大きく短縮されます。

導入に伴うフォロー体制

デジタルノウハウが不足しがちな中小の建設企業が導入に二の足を踏みがちなのは、やはり導入しても従業員が扱えるだろうかという不安ではないでしょうか。

建設業がDX化に抵抗のある業界という点も踏まえて、導入に伴い説明会の実施などアフターフォローを手厚く準備している企業もみられます。

検討は、度々ありながらも社内でデジタルやクラウドに対し拒絶反応があり、導入に至らない場合にはフォロー体制も含めて検討しましょう。

サービス業

サービス業のイメージ画像

実店舗で商品を提供するサービス業に対してのバーティカルSaaSも複数あります。POSレジと連携するのはもちろん、在庫管理や顧客管理機能も搭載されており他のサービスを使わずに店舗運営をサポートします。

決済機能との連携

複数の決済方法が簡単に導入できるのは、会計部分ではキャッシュレスが推進される現代においては重宝する機能です。

決済機能を導入するにあたって直接決済会社と個別に連絡していては、あまりにも多い決済手段に混乱してしまいます。一括で代行してくれれば将来的に決済手段が増えた場合も手間がかかりません。

自動釣銭機や券売機機能との連携などレジ回りも自動化が進んでいますが、迅速に連携対応してくれるのが小売り系のバーティカルSaaSです。またただ決済機能と連携するだけでなく、会計ソフトと連動し確定申告などに向けた事務作業も短縮される機能があると、閉店後の作業も簡略化されます。

飲食店はキッチンとホールの連携も

飲食店に特化したサービスなら、ホールが受けた注文をキッチンに設置されたモニターへ出力するといった機能があると便利です。

いわゆるチビ券と呼ばれるプリントタイプでは、従業員が走り回っているうちになくしてしまう事故も起こりえます。

複数のキッチンが設置されている現場でも、複数モニターでチェックできれば効率的です。近年、飲食店はデリバリー業務に対応する飲食店バーティカルSaaSもみられます。

サービス業は選択肢も豊富

飲食店ではバーティカルSaaSにおいても他ジャンルと比較すると、サービスが多い傾向にあります。ホリゾンタルSaaSのように複数サービスから吟味して選択でき、もしも合わない場合には別のサービスも検討できる点も魅力です。

農業

農業イメージ画像

農業分野も他業種と比較するとデジタル化が難しいイメージをもっている方が多い分野です。しかしDXを導入している農家も多くあり、人手では難しい業務にも対応できるため導入有無で生産性や品質に大きな差が発生します。農業分野のDX化は、大きく農作業管理と機器管理に分けられます。

農作業管理

育成状況をチェックし、手入れを検討する作業は人の目が重要と考えるかもしれませんが、人工知能の発達により自動化が可能です。

また、実際に行なった作業記録も一括で管理できます。特に農作業においてはシーズンのみ手伝いを募集して対応するケースも多く、シーズンごとに作業員が異なる農家も珍しくありません

  • 作業指示が個別に伝わっていない
  • 手書きのメモを一人が集約するため時間がかかる

上記の発生しがちな問題も、個別にもつスマートフォンでそれぞれ情報入力や確認ができれば解決できます。当日の作業内容をスマートフォン上で送れるので、管理者は別の農場に居ながら指示を出すといった作業も可能です。

また、個別の作業状況を把握しやすくなるため、従業員ごとの能力も正しく評価できます。サービスによっては田んぼへの水流入を自動化し遠隔でコントロールするなど、人手がそもそも不要になるケースもあります。

人員が少ない状態でも従来の作業内容を実施できるのもDX導入の魅力です。

機器管理

サービス上にて利用回数を把握し、トラクターのメンテナンス情報を自動的に通知してくれる機能も農業系SaaSの特徴です。

作物状況のチェックだけでなく、作業道具である機器のメンテナンスも農作業においては欠かせません。整備を忘れており予算を組んでおらず赤字になってしまうトラブルも防げます。

盗難防止のためにトラクターが所定の位置以外にて稼働した際に、位置情報を含めて緊急連絡する機能などもあります。万が一の盗難が不安な方も安心です。

その他バーティカルSaaSが使われる業界まとめ

その他バーティカルSaaSが使われる業界まとめ

バーティカルSaaSが充実してきている業種の代表として3例ご紹介しましたが、他にも多くの業種向けに作られたサービスがあります。

自社に向いているサービスはないだろう、と考えるのではなくてニッチだからこそ特化したSaaSがあると考えて探してみましょう。

日々技術は進化しているため、業界ならではの作業に加えて習慣やトラブルなどに特化した内容が将来的に加えられていきます。

各業種においてSaaSが活用されている業務分野と含めてご紹介します。現状ではサービスが充分ではないと感じていても、今後急拡大し利便性の高いサービスになることも考えられます。

業種 SaaSに対応している業務事例
医療 電子カルテ管理
薬歴管理
医療品在庫管理
看護
介護
電子カルテ
経営支援
情報共有システム
リハビリ業務
不動産 VRコンテンツ
顧客管理
入居者コミュニケーション
建設 施工管理の支援
生産情報の管理
工事マッチング
外食 顧客管理
勤怠管理
クラウドPOSレジ
オーダーシステム
コミュニケーション支援
サービス業 小売り業者向け在庫管理
小売り業者の店舗分析など
EC事業 在庫管理
受注管理
集客支援
農業
漁業
農作業管理
経営分析
漁場決定
スポーツ フィットネスクラブ向け予約管理システム
保険 共済会の管理
保険契約の管理
人材 求人データベース
求人情報管理
金融 投資先情報管理
会計 税務・会計・給与システム
顧問先キャッシュフロー予測支援
宿泊 価格設定
予約管理
広告運用
清掃管理
学習管理
保護者連携
勤怠管理
保育施設 睡眠チェック
シフト管理
業務管理
物流 車両管理
運送管理
歯医者管理
経費管理
受注マッチング

現状の問題点とサービス内容を比較し、導入を検討しましょう。

特殊業務に特化したバーティカルSaaSを導入し効率化しよう

バーティカルSaaSとはソフトをインストールせずに、かつ場所を問わずに一律の情報にアクセスでき各業種に特化したサービスです。

デジタル技術の導入を検討しているけど、すぐに使いこなせるか分からないという方は、さまざまな業種に対応したサービスではなく業種特化型のバーティカルSaaSがおすすめです。

カスタマイズせずに通常業務が簡単に運用できる、現場の状況に沿ったシステムなので利用方法も難しくありません。専門機器と連携しているケースも多く、無駄な作業もなくなります。

どうしても一般的なSaaSと比較すると選択肢は少なくなってしまいますが、多くの場合は企業が抱える課題や悩みを解決する大きな糸口です。サービス内容を把握して業務に最適なSaaSを選びましょう。

SaaSに特化した展示会も開催していますので、どんなサービスがあるのかまとめて知りたい方はこちらもご覧いただき、最新の展示会情報を調べてみて下さい。

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