サロン経営において、顧客情報の管理は成功の鍵を握る重要な要素です。来店履歴や施術内容、購入履歴などを適切に記録し、分析することで、リピート率の向上や売上の最大化が可能になります。しかし、手書きのカルテやエクセル管理では、情報が煩雑になり、活用しきれないことも多いでしょう。そこで、多くのサロンが導入を進めているのが、サロン向けの顧客管理システムです。
しかし、市場にはさまざまなシステムが存在し、どれを選べば良いか迷ってしまうことも少なくありません。「予約管理はスムーズにできるか?」、 「売上や施術データを分析できるか?」 、「顧客フォローの機能は充実しているか?」 など、選定時に考慮すべきポイントは多岐にわたります。
本記事では、サロン向け顧客管理システムの選び方のポイントを押さえつつ、おすすめのシステムについて詳しく解説します。あなたのサロンに最適なシステムを導入し、業務効率の向上と売上アップを実現するための参考にしてください。
サロン向け顧客管理システムのサービス一覧
会社名 | サービスの特徴 |
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BEAUTY POS |
顧客管理×分析でサロン経営を最適化
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SALON BOARD |
HOT PEPPER Beautyと連携し、予約枠の一元管理が可能 |
SALONPOS LinQ2 |
クレジットカード・バーコード決済連動でスムーズな会計処理が可能 |
BeSALO |
顧客管理・予約管理・売上管理など、サロン運営に必要な機能を標準搭載 |
パワーナレッジPOS |
電子カルテ機能により、施術履歴や契約書をデジタル管理可能 |
coming-soon |
「予約台帳」機能で、無駄なく効率的な予約管理を実現 |
KaruteKun |
30日間無料トライアルで、手軽に導入できる |
LiME |
スマホでカルテ・予約・売上管理を一元化 |
リザービア |
多言語対応で、外国人顧客の予約にも対応可能 |
RE:RE |
店販機能を備え、LINE上で物販商品を販売可能 |
Bionly(ビオンリー) |
iPad型のPOSレジシステムで、直感的な操作が可能 |
USENレジ BEAUTY |
POSレジ・予約・顧客管理を一元化 |
POS+ beauty |
DM機能で、リピート促進メールの自動配信が可能 |
かんざし |
複数の予約サイトを一元管理し、ダブルブッキングを防止 |
サロエボ |
手書き対応の電子カルテで、施術履歴や同意書をデジタル管理 |
サロン向け顧客管理システムとは?
一般的なCRMとの違い
顧客管理システムというと、CRM(Customer Relationship Management)を思い浮かべる人も多いでしょう。実際に企業が使うような大規模なCRMシステムや、SFA(Sales Force Automation)との連携を含むこともありますが、サロン向けの顧客管理システムはより現場主導で、施術記録や予約情報、スタッフのシフトなどが密接に連動している点が特徴的です。大企業向けのCRMは、営業活動の管理・分析や、取引先との商談の進捗管理などが重視されることが多いですが、サロンでは「個々の来店客の体験をいかに質の高いものにするか」という点が最大のポイントになります。
サロン向け顧客管理システムに求められる機能
したがって、サロン向け顧客管理システムには、以下のような機能が重視される傾向があります。
- 予約管理: カレンダー連携やオンライン予約対応、複数スタッフへの自動割り振り
- 施術・サービス履歴の管理: 過去の施術内容の詳細、使用薬剤の記録、スタイリング写真など
- カウンセリングシートの電子化: 施術前後のヒアリング内容や顧客の悩み、身体データをデジタルで管理
- 顧客ごとのメモやアラート: サロン全体のスタッフが共有できるよう、個別メモを残す機能
- 販促・マーケティング機能: メールやSNS、LINE公式アカウントなどを使ったキャンペーン配信、クーポン発行
- 分析機能: リピート率・客単価・キャンセル率などのデータ集計
これらに特化していることが、サロン向け顧客管理システムの大きな特徴であり、優位性でもあります。
紙管理やExcel管理からの移行
アナログ管理の課題
紙やExcelでの顧客管理の問題点
検索性・情報共有・セキュリティの課題
まだ顧客情報をアナログで管理しているサロンも少なくありません。紙のカルテに手書きで記入したり、Excelで簡易的な表を作っていたりするところも多いでしょう。これらも基本的には顧客管理の手段として機能しますが、検索性や情報共有の効率、セキュリティ面などに課題が生じやすい点が否めません。
紙管理・Excel管理の限界
紙管理の場合はスタッフ同士でカルテを回して見る必要があり、書類が増えるほど収納場所に困ります。Excel管理であっても、スタッフ全員が同時に閲覧・編集しようとすると、ファイルの上書きリスクやネットワークの問題が出てきます。また、どちらの方法でも、顧客データをマーケティングに活用する際には工数が大幅に増えてしまいます。
例えば「最近来店していない顧客にDMを送りたい」「誕生月ごとにキャンペーンを案内したい」などの施策を打つ場合、手作業でデータを抽出しなければならず、時間と労力がかかりすぎて現実的ではありません。
クラウド型顧客管理システムの導入
こうした問題を解決するために、クラウド型やアプリ型の顧客管理システムを導入するサロンが増えています。サロン向け顧客管理システムならば、場所を選ばずデータが共有でき、施術中でもスマホやタブレットで顧客情報にすぐアクセスが可能です。
加えて、AIやデータ分析機能を搭載しているシステムもあり、施術履歴や顧客属性に合わせて自動的におすすめのメニューを提案したり、キャンペーン候補を提示してくれたりといった高度な活用が期待できます。
サロン向け顧客管理システムのメリット・デメリット
メリット1: 情報共有の効率化
スタッフ間の情報共有がスムーズに
施術ミスの減少とカウンセリング品質の向上
サロン向け顧客管理システムを導入する最大のメリットの一つは、スタッフ間の情報共有が圧倒的にスムーズになることです。紙のカルテや個人のメモ、頭の中にしかない顧客情報がデータベース化されることで、いつ・どこでも・誰でも必要な情報を確認できます。これによって、施術ミスの減少や、カウンセリング時のヒアリング品質の向上が見込めます。初めて担当する顧客でも、過去の施術内容や注意点をすぐに把握できるため、顧客は「自分のことをきちんと把握してくれている」という安心感を得やすくなります。
予約管理とスタッフ配置の最適化
加えて、予約スケジュールや施術の進捗状況をシステム上で把握できるため、店内の稼働状況をリアルタイムに把握でき、効率的なスタッフ配置が可能になります。スタッフ数を無駄に多くしたり、逆に不足したりするリスクを減らすことにもつながるでしょう。
メリット2: マーケティングの高度化
リピート率向上の施策
顧客データを活用した自動フォロー
サロンが安定的に収益を上げるためには、既存顧客のリピート率を上げることが重要です。新規顧客の獲得には広告費や口コミ誘導などコストや労力がかかりがちですが、顧客管理システムを活用すれば、既存顧客とのコミュニケーションを深めるための施策が打ちやすくなります。具体的には、顧客の誕生日や来店頻度、前回の施術日などのデータをシステムが把握しているため、自動的にメールやLINEでクーポンを送信したり、適切な時期にフォローメッセージを送ったりできるのです。
売上分析と経営判断の迅速化
また、顧客の好みや過去の施術データから、次回のおすすめメニューや新商品の案内をパーソナライズした内容で送ることも容易になります。こうした細かなコミュニケーションの積み重ねが、顧客満足度の向上とリピート率アップに直結します。さらに、売上分析や客単価、キャンセル率などの統計データを自動で集計しやすいので、経営判断に使える客観的な材料を素早く得ることも大きなメリットです。
メリット3: 生産性と顧客体験の向上
業務の効率化と待ち時間の削減
システム連携による作業の最適化
予約管理から施術内容の記録、会計、アフターフォローまで、一元管理できることによって各工程がシームレスに繋がります。これにより、お客様を待たせることが減り、スタッフ側も作業のムダを最小化できます。システムからのリマインドや通知機能を活用して、予約の確認やクレーム対応が遅れるリスクを回避できる点も見逃せません。
顧客満足度向上と客単価アップ
顧客体験の向上という観点でも、大きなメリットがあります。例えば、タブレットやスマホで施術中に「前回このメニューをしていただきましたが、今日はさらにこういった方法もありますがいかがですか?」といった提案がスムーズに行えます。顧客が気づかない新しいメニューやケア商品をタイミングよく提案できれば、客単価アップにもつながるでしょう。これらは顧客管理システムならではの利点です。
デメリット1: 導入コストや月額費用
一方で、顧客管理システムを導入する際のデメリットとして真っ先に挙がるのが、費用面です。システム導入の初期費用がかかる場合もあれば、月額料金やサブスクリプションモデルで継続的に費用が発生するケースがほとんどです。特に、クラウドサービスや専用アプリの場合はランニングコストがかかるため、「毎月の固定費が上がるのは負担になる」という声もあります。
しかし、アナログ管理や不十分なシステム運用による機会損失を考慮すると、長期的にはむしろプラスになる可能性が高いのも事実です。スタッフの業務効率化やリピート率向上などによる増収効果を天秤にかけて、投資対効果(ROI)を見積もる必要があります。
デメリット2: システムへの慣れや教育コスト
新しいシステムを導入すると、スタッフがその操作に慣れるまで時間がかかります。特にITが苦手なスタッフが多い場合、丁寧な研修やマニュアル整備が必要となり、最初はスタッフが戸惑ったり、入力ミスが増えたりするリスクもあります。現場の負担を減らすためには、直感的なUIを持つシステムを選んだり、導入時のサポートが充実しているベンダーを選ぶ工夫が必要です。
デメリット3: システム障害やセキュリティリスク
クラウド型のシステムを利用する場合、インターネット回線の不調やサーバー障害が発生すると、予約管理や顧客情報へのアクセスが一時的にできなくなる可能性があります。また、システムに大量の個人情報を蓄積するため、データ漏洩や不正アクセスには十分なセキュリティ対策が求められます。パスワードの管理やアクセス権限の設定を厳格にするなど、基本的な対策から怠らないようにすることが重要です。
ただし、多くのサロン向け顧客管理システム提供会社は、セキュリティ対策やバックアップ体制を整備しているため、むしろ自社サーバーで管理するより安全性が高い場合も珍しくありません。システムを選ぶときは、セキュリティ面やリスクヘッジに関する情報をよく確認しましょう。
サロン向け顧客管理システムの選び方
業種・業態に合った機能を優先的にチェック
サロンの特性に応じたシステム選定
サロン向け顧客管理システムは多種多様で、それぞれ提供している機能や得意分野が異なります。ヘアサロン向けの機能が充実しているシステムもあれば、エステサロンのカウンセリングシートや体組成データの管理に強みを持つシステムもあります。自分のサロンがどういったデータを蓄積して活用したいのか、事前に洗い出しておきましょう。
例えば、まつげエクステサロンなら、「左右別々にエクステを何本ずつ装着したのか」「カールや長さ、太さはどうだったのか」など、より細かい施術履歴を管理できるシステムが役立つでしょう。ネイルサロンなら、デザイン写真を顧客ごとに保存してすぐに参照できる機能があると便利です。こうした特性を踏まえ、システム選定の段階で「どのように活用していきたいか」を明確にすることが成功のカギとなります。
使いやすさとスタッフ教育のしやすさ
直感的なUIと操作性
サロンスタッフは必ずしも全員がITに強いとは限りません。施術が得意でもパソコン操作に苦手意識を持っている人もいるでしょう。そのため、日常業務の中で無理なく使える操作性かどうかは非常に重要です。導入しても使いこなせなければ、システム本来の効果を得ることはできません。
サポート体制と連携機能
サポートの充実度と外部連携
システムを運用していく過程で、疑問や不具合が生じることは避けられません。そのときにしっかりとしたサポート体制があるかどうかは、長期利用を考えるうえで非常に大事なポイントです。電話やメールだけでなく、チャットサポートやオンラインミーティングなど、迅速に対応してもらえる窓口があるかを確認しましょう。
価格プランとコストバランス
料金体系の理解と最適化
顧客管理システムの価格体系には、月額固定制や機能ごとの従量課金制、店舗数やスタッフ数に応じたプランなど、さまざまなバリエーションがあります。サロンの規模や来店客数、スタッフ数によって最適なプランは変わってきますので、自分のビジネスモデルに合った費用感のシステムを選ぶ必要があります。
セキュリティとバックアップ
個人情報の管理とデータ保護
顧客名、連絡先、施術履歴や身体データなど、サロンが扱う情報は非常にセンシティブなものが含まれます。そのため、システムのセキュリティ対策やバックアップの仕組みは必ずチェックしてください。ベンダーによっては、通信がSSL/TLSで暗号化されているか、データセンターの安全基準はどうかなどの情報を開示しています。
さらに、スタッフが顧客データを閲覧・編集できる範囲を柔軟に設定できるアクセス権限機能があると、内部不正や情報漏洩を防ぎやすくなります。担当スタッフだけが顧客情報をフルアクセスできるのではなく、「閲覧のみ」「一部編集可能」といった区分設定ができるシステムを選ぶことでリスクを大幅に下げられます。
サロン向け顧客管理システムのよくある質問
質問1: どのタイミングで導入するのがベストですか?
サロン向け顧客管理システムは、新規開業時に導入するのが理想的ですが、既存店であってもタイミングを見計らって導入するメリットは十分にあります。特に、顧客データを紙やExcelで管理していて不便を感じている、スタッフの入れ替わりが激しく引き継ぎに時間がかかっている、または売上やリピート率の停滞を打開したいと考えているのであれば、早い段階で導入を検討すると良いでしょう。
質問2: 既存のデータ移行はどうすればいいのでしょうか?
多くのシステムは、CSV形式やExcel形式のデータを取り込む機能を持っています。導入前に、手持ちの顧客情報や予約履歴を一定のフォーマットに整形しておけば、スムーズにインポートできるケースが多いです。ただし、データ項目のマッピングや重複チェックは慎重に行いましょう。
質問3: 顧客管理システムと予約システムは別々に使わないといけませんか?
サロン向け顧客管理システムの中には、予約管理機能を標準搭載しているものが多く、オンライン予約やスタッフのスケジュール管理なども一括で行えるケースが主流になっています。もし既にホットペッパービューティーなどの外部サービスを活用している場合も、API連携や外部サービス連携が可能なシステムを選べば、情報を自動的に同期できる場合があります。
質問4: システム利用時にインターネットは必須ですか?
クラウド型の顧客管理システムの場合、基本的にインターネット接続が必須となります。一方で、オフライン対応が可能なスマホアプリやローカルインストール型のシステムも一部存在しています。ただし、オフライン機能があるとしても、データの同期やバックアップを行うためには最終的にインターネットに接続する必要があるケースがほとんどです。
質問5: セキュリティ対策はどうすればいいでしょうか?
まずは、システム提供側のセキュリティレベルを確認することが大切です。データセンターのセキュリティ基準や通信の暗号化方式、ベンダーがどのような監査や認証を受けているかなどをチェックしましょう。
質問6: どのくらいの期間で効果が実感できますか?
システムの導入効果はサロンの規模や運用体制によって差がありますが、早いところでは導入後1~2か月程度でリピート率が上がったり、スタッフの業務時間が削減できたといった実感を得られるケースがあります。一方で、顧客データの蓄積と活用には時間がかかるため、半年以上かけて徐々に効果が出てくることもあります。特にマーケティング施策や顧客フォローの自動化は、データが充実してくるほど精度が高まるため、短期だけでなく中長期的な視点で運用改善していくことが重要です。
まとめ
サロン向け顧客管理システムは、施術の品質向上やスタッフ間の情報共有、リピート率アップなど、多方面にわたるメリットをもたらします。スマートフォンやタブレットを活用した操作性の良さ、クラウドの利点を最大限に生かしたデータ分析機能やマーケティング連携など、進化のスピードも年々上がっています。逆に言えば、単に予約管理だけを目的として導入するだけでは、そのポテンシャルを十分に引き出せないとも言えます。
顧客とのコミュニケーションや施術体験を重視するサロンこそ、顧客管理システムを活用することで大きな差別化を図ることができます。施術前後のカウンセリングや提案、アフターフォローの段階で、蓄積されたデータをもとに「一人ひとりに寄り添った」サービスを提供できるためです。また、スタッフの負担軽減や離職率の低下にもつながり、経営基盤の安定化に寄与する可能性も高いでしょう。
とはいえ、導入費用やシステムへの慣れなど、初期にはデメリットやハードルが存在するのも事実です。システム選びの際には、現場の声をよく聞き、サロン独自の運用スタイルにフィットするかどうかを慎重に見極める必要があります。また、導入後もシステムに任せきりにするのではなく、定期的に運用状況を見直し、スタッフからのフィードバックを取り入れながら運用フローを最適化していくことが求められます。
今後はAIやIoTとの連携がさらに進み、顧客の施術中の反応データをリアルタイムで収集して次回の提案に生かす、といった高度な取り組みが普及していく可能性があります。また、オンライン・オフラインをシームレスに統合し、予約から施術、アフターフォローまで一貫した顧客体験を提供するオムニチャネル戦略がサロン業界においても重要度を増していくでしょう。その土台となるのが、正確で充実した顧客データの管理と、活用のための顧客管理システムです。
サロンにとっては、これらのシステム導入は競合が増えるなかで生き残るための必須の投資であると言っても過言ではありません。もちろん、すべてのサロンが高額でハイスペックなシステムを導入する必要はありませんが、自分たちが本当に必要とする機能を見極め、使いやすくコストに見合ったサービスを導入することが成功への第一歩となります。顧客管理システムの導入と活用によって、顧客との信頼関係をより深め、サロンのブランド価値と売上を同時に高めていきましょう。
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- 本記事は、2025年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載各社の情報・事例をはじめコンテンツ内容は、現時点で削除および変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。