免税店の運営を始めるには、免税電子化システムの導入が欠かせません。
免税店として正式に登録するには、所轄の税務署に必要書類を提出し、国税庁が定める条件を満たす必要があります。その中でも、「免税電子化制度」に対応したシステムを導入し、購入記録情報を国税庁へ正確に送信する体制を整えることが必須です。
しかし、免税電子化システムにはさまざまな種類があり、自店舗に最適なものを選ぶのは簡単ではありません。本記事では、それぞれの免税電子化システムの特徴やメリット、導入時のポイントについて分かりやすく解説します。
免税電子化システムの一覧表
会社名 | サービスの特徴 |
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PIE VAT |
コストゼロで始める免税電子化!初期費用・月額料金無料
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eあっと免税 |
12か国語対応で幅広い訪日客ニーズに対応 |
Smart Detax |
最短10秒で簡単免税、停電やネット障害にも対応。 |
J-TaxFree |
酒税免税にも対応!多様な店舗ニーズに応えるシステム |
日本免税 |
店舗ごとに選べる料金プランでコスト調整が可能 |
yb.TaxFree(ワイビータックスフリー) |
買い切り型で、コストの煩雑さを解消 |
Easy Detax |
QRコードでパスポート不要!レジ業務を効率化 |
免税ネット |
一括購入型プランで、長期的なコスト管理に対応。 |
リモタックス |
手続き代行で業務負担を軽減。専門知識は不要 |
スマレジ |
QRコード決済対応で販売機会を拡大 |
RegiGrow |
自社送信と他社送信に対応、柔軟な導入環境をサポート |
タロスの免税POSレジ |
リユース商材も免税販売対応。多機能POSシステム |
免税電子化制度とは
免税電子化制度は、免税販売の手続きをデジタル化し、効率化と透明性の向上を目的とした制度です。従来の紙ベースで行われていた免税手続きがデジタル化され、店舗は免税購入品情報や手続きデータを国税庁へ電子的に送信することが義務付けられています。
免税販売を行うには、この免税電子化への対応は必須です。対応しない場合、免税販売事業者としての登録ができず、免税手続きを行うことができません。
免税電子化を実現するためには、対応するシステムを整備する必要があります。データを正確に収集し管理しつつ、国税庁への送信をスムーズに行える体制を構築することで、業務効率が向上し、手続きの迅速化が可能になります。
免税電子化システムの選び方
店舗規模に応じた機能の選定
免税電子化システムを選ぶ際には、店舗の規模や運用形態に適した機能を備えたものを選ぶことが重要です。
小規模店舗
操作が簡単で、導入コストが抑えられるシステムが適しています。スマートフォンやタブレットで使用可能なシステムは、初めて免税販売を行う店舗でも運用しやすく、少人数のスタッフでも効率的に手続きを進められます。また、専用機器が不要なため、スペースに限りがある店舗でも導入が可能です。
中規模店舗
店舗内外で複数のデバイスを使ってデータを共有・連携する必要がある場合、クラウド型システムが適しています。このタイプのシステムは、リアルタイムでデータを同期し、免税手続きや売上管理を効率化します。さらに、将来的に複数店舗を展開する計画がある場合でも、拡張性の高い設計が可能です。
大規模店舗
POSレジや販売管理システムと統合可能なシステムが最適です。多言語対応機能を備え、高速なデータ処理が可能なシステムは、訪日観光客が多い店舗や混雑時の運用にも対応できます。専用端末型システムを利用すれば、免税手続きと販売管理を一元化でき、運営効率を大幅に向上させることができます。
費用対効果
システム選定においては、初期費用、ランニングコスト、長期的な運用コストを考慮することが重要です。
初期費用
クラウド型システムは専用機器を必要としないため、初期費用を抑えられる傾向があります。一方、専用端末型システムは導入時に高額な費用が必要ですが、長期的には安定した運用が期待できます。
ランニングコスト
月額料金が発生するサブスクリプション型システムの場合、プラン内容や料金体系を確認し、自店舗に適した機能が含まれているかをチェックすることが大切です。また、アップデートや追加機能にかかる費用も事前に確認しておきましょう。
メンテナンス費用
システムの保守にかかる費用も検討材料となります。クラウド型システムは自動的にアップデートされることが多く、管理の手間を削減できます。一方で、専用端末型システムの場合は、保守契約の内容やサポートの範囲を十分に確認しておく必要があります。
サポート体制
システム導入後のスムーズな運用のためには、提供会社のサポート体制が非常に重要です。
問い合わせ対応
電話やチャットで迅速な対応が可能なサポートがあるかを確認してください。対応時間や多言語対応の有無も重要なポイントです。特に営業時間外に発生したトラブルへの対応がどうなっているかを事前に確認することが安心につながります。
操作ガイドやマニュアル
免税電子化を初めて導入する場合、操作手順が分かりやすいオンラインマニュアルや動画チュートリアルが用意されていると便利です。これにより、研修時間を短縮し、迅速に運用を開始することができます。
トラブル対応
システム障害やエラーが発生した際の対応スピードや現場へのサポート体制も重要です。トラブル時に専任スタッフが迅速に対応してくれるサービスを選ぶことで、運用の安定性を確保できます。
免税制度が変わる!リファンド方式とは?
2026年11月1日から、免税制度が「リファンド方式」に移行します。この新しい仕組みでは、免税販売が「出国時に税関で商品の持ち出しが確認された場合」に成立します。今回の改正は、不正利用を防ぐと同時に、免税店の業務負担を軽減することを目的としています。
リファンド方式の流れ
- 購入時:旅行者は商品を税込価格で購入します。
- 出国時:空港で税関が商品の持ち出しを確認します。
- 確認後:旅行者は指定の方法で免税還付金(消費税相当額)を受け取ります。
現行制度との主な違い
- 現行制度:購入時に税抜価格で販売するか、その場で免税還付を実施します。
- リファンド方式:購入時は税込価格で販売し、免税還付は出国後に行われます。
制度改正による影響
リファンド方式の導入により、免税店と旅行者それぞれに次のような影響が予想されます。
- 免税店側
その場での免税還付手続きが不要となるため、業務が効率化され、負担が軽減されます。また、商品の持ち出し確認は税関が行うため、不正な免税利用のリスクが抑えられます。 - 旅行者側
購入時に税込価格を支払う必要がありますが、出国後に確実に免税還付金を受け取れるため、安心して手続きが行えます。
リファンド方式に対応するための準備
免税店が新制度に対応するためには、次のような準備が必要です。
- 購入記録情報を正確に管理し、出国時に持ち出し確認ができる仕組みを整える。
- 免税電子化システムが新制度の送信ルールに対応しているか確認する。
- 店舗スタッフに対して、新制度に関する教育やトレーニングを実施する。
そもそも免税事業者になるには?
免税販売を行うためには、店舗が正式に「免税事業者」として登録される必要があります。以下は、免税事業者になるための条件と手続きについての概要です。
免税事業者の条件
国税の滞納がないこと
免税店舗として登録するには、国税を適切に納付している必要があります。 納税義務を果たしていない事業者は、そもそも免税事業者として登録することができません。
適切な立地に店舗があること
免税店舗は、訪日外国人観光客である非居住者が現に利用する場所、または非居住者の利用が見込まれる場所に所在することが条件となります。
必要な人員と設備が整っていること
免税販売手続きを適切に行うためには、必要な人員が配置されており、さらに免税販売手続きを実施するための設備を有していることが求められます。
免税店は試験的に運営できる?
免税販売は、訪日外国人観光客が購入した商品にかかる消費税を免除する仕組みであり、セールや値引きキャンペーンのように店舗が自由に実施できるものではありません。日本の税制度に基づいて厳格に定められた条件のもと、事業者や店舗、購入者それぞれの納税が特定の条件を満たした場合にのみ適用されます。
免税店舗の運営には、正式な登録手続きと法令を遵守する厳格な運営が求められます。「試験的に免税販売を行いたい」という考えでは運営できません。免税店舗として登録されていない事業者が免税販売を行うことは法律違反となり、重い罰則が科される可能性があります。
免税事業者登録の手続き
1. 税務署への申請
免税店舗として登録するには、所轄の税務署に必要書類を提出し、登録申請を行います。主な提出書類には「輸出物品販売場許可申請書」や「購入記録情報提供方法の届出書」などが含まれます。また、必要に応じて店舗の見取り図や社内の免税販売マニュアルといった補足資料が要求される場合もあります。
2. 免税電子化システムの導入
登録後は、免税販売の電子化に対応するため、購入記録情報を国税庁に送信できるシステムを導入します。このシステムを導入することで、法令に沿った免税手続きが可能になり、業務効率化も図れます。
免税店舗が行う具体的な免税手続き
1.旅券(パスポート)等の提示を受ける
非居住者である訪日外国人観光客から旅券等を提示してもらいます。
2.非居住者であることの確認
提示された旅券等をもとに、購入者が非居住者であることを確認します。
3.必要事項の説明
購入者に免税手続きの条件や注意事項を説明します。
4.免税対象物品の引渡し
非居住者であることを確認した後、免税対象物品を引き渡します。
5.購入記録情報の電子的送信(免税電子化)
購入記録情報を国税庁へ電子的に送信します。免税電子化に伴い義務化された手続きです。
6.購入記録情報の保存
国税庁に送信した購入記録情報を保存します。保存期間は約7年間と定められています。
参考情報:観光庁HPまとめ
免税手続きの電子化は、免税制度において義務化されており、店舗運営に欠かせない要素となっています。本記事では、免税電子化制度の概要や、システム選定のポイントについて解説しました。
自店舗の規模や目的に合ったシステムを選択し、免税電子化システムを積極的に活用することで、効率的で顧客満足度の高い店舗運営を実現しましょう。
- 免責事項
- 本記事は、2025年1月時点の情報をもとに作成しています。掲載各社の情報・事例をはじめコンテンツ内容は、現時点で削除および変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。