育毛剤・発毛剤の広告規制と表現に関する留意事項【医薬部外品】
最終更新日:2021年04月29日
株式会社アデランスが2020年に行なったステイホーム期間中の髪に関する意識調査によれば、約7割の女性が髪のストレスを感じていることがわかりました。同調査の中で気になるのは、男性が感じているストレスの特徴です。
ステイホーム時間が長くなり育毛への興味が高まっている?
画像引用元:株式会社アデランス報道資料(https://pdf.irpocket.com/C8170/djAz/BKBm/cMJn.pdf)
上記の表で見ると、髪ストレスの多くはカットに行けない、カラーリングに行けないことに大きなストレスを感じていることがわかりますが、「抜け毛が増えた」と感じているのは女性よりも男性が多いこともわかりました。
コロナ感染者の後遺症として取り上げられることも多い脱毛ですが、じつは巣ごもりやテレワークで運動量が減り生活のメリハリがなくなる、生活のリズムが狂うことと、脱毛に因果関係があると解説している医師もいます。
コロナ対応もしているクリニックフォアの公式サイトによれば、「コロナ抜け毛とは自粛生活が長引くことによって抜け毛が増えてきていること」であると定義したうえで、生活習慣の乱れが脱毛につながると説明しています。
- 睡眠の質が低下し、成長ホルモンが十分に分泌されなくなる
- その結果、髪の成長に結びつかなくなる
- 健康な髪が育ちにくくなり脱毛が誘発されてしまう
- 運動量の低下で血流が悪くなり頭皮が乾燥しやすくなる
- その結果、抜け毛が増えてしまう
抜粋引用元:クリニックフォア公式サイト「「コロナ抜け毛」が長引く自粛で増加している?対処法について医師が解説します。」
地上波デジタルだけでなく、CSテレビなどで育毛剤のCMが劇的に増えている背景には、ステイホーム時間が長くなっただけでなく、じっくり頭皮や発毛状態を確認する時間が増え、育毛・発毛に潜在的に関心があった層が、顕在層に移行していることを売上で実感しているからではないかと考えます。
コロナ禍でも堅調な毛髪・頭皮ケアの市場規模は450億円
マスク着用がニューノーマルになった影響は化粧品業界、とくにメイクアップ系に大きなダメージを与えています。
それに比較するとヘアケア市場のダメージは少なく、中高年層だけでなく若者の薄毛ニーズも取り込んで市場規模が450億円にも上るといいます。
新型コロナの影響から今年上期のヘアケア市場は縮小したが、メイクアップ、UVケア等と比べるとその下げ幅は小さい。男女ともに髪や頭皮にストレスを抱える人が増えておりヘアケア需要は底堅い。市場ではノンシリコン、ボタニカル系が堅調なほかアミノ酸系シャンプーの上市が進んでいる。一方、スカルプケア・育毛剤市場は、中高年男性に加えて女性、若者の薄毛ニーズの取り込みに成功。市場規模は450億円まで拡大している。また従来の医薬部外品、化粧品のほか、健康食品やサプリメントを活用し「体の内側から健康な髪や頭皮をつくる」というアプローチも広がっている。引用元:健康産業新聞「コロナ禍でも底堅い需要(特集/毛髪・頭皮ケア)」(https://www.kenko-media.com/health_idst/archives/14664)
育毛・発毛需要は今後も増加する見通しであり、さらなる売り上げ拡大も見込める市場であることが推察されます。
ただし育毛・発毛をうたう商品は玉石混交であり、エビデンスを伴わない成分で発毛や育毛用途で販売しているヘアケア商品や、医薬部外品に許されている表現の範囲を超えた広告手法も散見される、というのが現状です。
医薬部外品やトクホの広告の監視の目はきびしくなりつつあることから、薬機法(旧薬事法)で定められている広告規制を順守することが求められています。もちろん誇大広告などを禁止する景表法も同じです。
ここで改めて、薬機法(旧薬事法)で定められている広告規制や景表法について確認しておきましょう。
薬機法(旧・薬事法)とは?
正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、略称で薬機法と呼ばれています。2014年11月にそれまでの「薬事法」が改正され名称変更とともに施行されました。
薬機法は、医薬品、医療機器等の品質と有効性および安全性を確保するために、製造・表示・販売・流通・広告などについて細かく定めた法律。
対象となるのは、化粧品、医薬品、医薬部外品、医療機器、再生医療機器等で、トクホや健康食品(いわゆる健康食品)も含みます。ただし、医薬品領域に抵触した場合に適用されるものです。
薬機法で定められている育毛剤の広告規制
医薬部外品では育毛剤・養毛剤表記は認められていますが、発毛剤表記は認められていません。厳密には「発毛促進剤」が正しい表記です。
厚労省の通達「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」に明記されている、医薬部外品の「育毛剤・養毛剤」で表記できる効能または効果の範囲は以下の通りです。
(脱毛の防止及び育毛を目的とする外用剤)
「育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」
※抜粋引用元:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf)
上記以外の効能や効果は広告への使用はもちろん、パッケージや販促物、ホームページ、LP、SNS公式アカウント、販売元と紐づいている個人のブログにも原則書くことができません。
また、以下のようにも通知されています。
<医薬部外品>
(1)医薬部外品の効能効果について
「○○を防ぐ」という効能効果で承認を受けているものにあっては、単に「○○に」等の表現は認められない。ただし、承認された効能効果が明瞭に別記されていればこの限りでない。
※抜粋引用元:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf)
記載するスペースが狭いからなどの理由で、故意に文章を省略したり、ニュアンスを残したりすることも禁止されていることも併せて確認しておくべきでしょう。
医薬部外品の規定に関する詳細を確認したい場合は、下記よりご確認ください(外部リンクに飛びます)。
◆医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について
景表法(景品表示法)とは?
景品表示法とは、消費者に著しく誤解を与えるような広告表現や表示、過大な景品付き販売を禁止する法律です。事業者が提供するあらゆる表示に適用され、誇大広告などによる消費者被害を防ぐ目的があります。
正式な名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。管轄は消費者庁で、公正取引委員会や都道府県の自治体と連携しています。医薬部外品の広告で関係してくるのは、「不当表示防止法」です。
景表法における3つの不当表示
医薬部外品の商品が実際より著しく優良であるように見える表現を不当表示と定義しています。不当表示は以下の3つに分類されます。
- 優良誤認につながる表示/この育毛剤でだれもがふさふさになると誤解をまねくような表現は禁止(イラスト・写真含む)
- 有利誤認につながる表示/いまだけ半額、期間限定キャンペーンなどとして、実際には定価販売の実績がないなど二重価格の禁止
- そのほか誤解につながる表示/内閣総理大臣が指定する一般消費者が誤認する恐れのある表示を禁止
キャッチコピーだけが景表法の対象ではなく、イラストやイメージ画像、あるいはデザインを含む広告全体から判断されることになります。白衣を着た男性や女性のイメージカットを使うことも避けるべきでしょう。
医薬部外品として許されている表現や表示に関しては薬機法、事実に反する広告で消費者に優良誤認や有利誤認(実際には消費者に不利益な情報)を与える広告については景表法が、それぞれ適用されます。
育毛剤アフィリエイト広告の景表法違反で消費者庁が措置命令
2021年3月上旬に消費者庁が景品表示法違反における優良誤認があったとして、育毛剤の販売会社に再発防止などの措置命令を出しました。
育毛や発毛効果の根拠がないにもかかわらず、成功報酬型のアフィリエイト広告で宣伝、ニュースサイトに表示されたことで発覚したといいます。
販売元がアフィリエイト広告を委託した制作会社への指導をせず、制作物を事前に認知していると判断して、アフィリエイト広告会社ではなく、依頼主の販社に措置命令が出されています。
アフィリエイト広告に景表法違反が適用され、措置命令が出されたのは初めてということですが、育毛剤や発毛剤(発毛剤という言い方自体が薬機法違反)の広告を外部制作会社に依頼している場合は、この事例を共有しておくとよいと思います。
SNSにおけるインフルエンサーの販促は非常に有効ですが、商品名も企業名も公表されてしまうリスクを考えなければなりません。いま一度、どこになにを依頼しているか、把握しておくようにしましょう。
弊社は医療機関やさまざまな商品を扱うメーカー様の広告を制作するとともに、運用の支援も行なっています。どこから着手したらいいかわからない、費用対効果に満足していないなどのお悩みがあれば、下記フォームよりご相談ください。
医薬部外品育毛剤の広告表現に不安を感じるなら専門業者を活用
薬機法や景表法に抵触せずに広告を作り出すことは、ある意味手間もお金もかかることです。できれば外部パートナーにはお金をかけず、身内だけで売り抜けたいという気持ちはわかります。
ただ損して得取れではないですが、いつかは指摘が入るかもしれないと不安を抱いたまま商品を販売していくことと、法令は順守しながら消費者に選んでもらえるプロモーションを展開していくことのどちらがいいかを考えれば、圧倒的に後者です。
2020年7月には、薬機法違反で記事広告を制作した広告代理店の担当者までもが逮捕されました。事業にかかわるすべての人が処罰の対象になるとされてはいましたが、広告代理店担当者の逮捕は弊社を含め広告業界に携わる人間として、決して他人事ではないと感じた事件でした。
こうしたリスクをなくすためには、薬事法ドットコムや薬事法広告研究所のような専門会社に指導や添削、コンサルなどを依頼する方法が安心です。
薬機法や景表法に抵触しない広告表現を実現するためには一定のコストがかかることを認識して、消費者目線のプロモーションを展開していくよう心がけてください。
医薬部外品の広告表現で違反となる事例
最後に、薬機法に抵触する医薬部外品の広告表現をいくつか紹介しておきます。育毛剤以外の内容もありますが、違反の理由などは参考になるかと思います。
育毛剤以外の医薬部外品の事例もありますが、広告や販促物をチェックする際に参考にしていただければと思います。
違反する表現 | 違反の理由 |
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白髪を予防・改善するサンショウ抽出エキスを〇〇(会社名)が発見 | 医薬部外品の育毛剤では、白髪予防の効果は承認効能外である |
はえる | 育毛剤に承認された効能効果は「育毛促進」「発毛促進」である。よって、「発毛」など毛が生えると言い切ってしまう表現は使用できない |
皮脂腺を正常な状態にしてくれる効果抜群。悩みから解放される | 育毛剤では、皮脂腺そのものを正常化するという効能は認められていない |
「抜け方が違うということは、育毛剤も違うんです。〇〇型脱毛にも効く!」 | 単に「育毛、脱毛の予防」等の効果が承認されている育毛剤にあっては、特定の脱毛形式に効果があるかのように表現することはできない |
うぶ毛を太毛にする | 育毛剤広告で太さまたは長さのいずれか一方のみを強調して表現することはできない |
発毛機構を解明 | 単に「育毛、発毛促進」等の効果が承認されている育毛剤にあっては、医薬品的標榜である「発毛」に関する表現をすることはできない |
「超ヒゲSTOPジェル」再生する毛を強力にケア・ムダ毛を生えにくくします効能効果に関わる体験談 | 発毛制御を訴求した広告であるが、医薬部外品の承認効能を逸脱している。また、化粧品においては当該効能効果は表現できない |
約束できる | 前後に効能効果を明示して「約束できる」と表現した場合、効能効果の保証表現にあたる |
妊娠線・肉割れの予防に。 | 薬用化粧品である本品においては、認められていない効果である |
※抜粋・参照元:薬事法ドットコム(https://www.yakujihou.com/content/4-C.html)
単に販売しているだけだから、一部広告の運用をしているだけだから大丈夫だろう、という認識は間違っています。最近では広告を運用している広告代理店の逮捕者がでるなど、法令違反に対する取り締まりが厳しくなっています。
SNSやブログでの情報発信にも注意が必要
先ほども触れましたが、通販会社の公式アカウントで発信するSNSもしかりです。特定の商品や販社に結び付くものはすべて広告扱いになります。アフィリエイトで医薬部外品の範疇を超えた効果効能をうたっている場合も、取り締まりの対象となります。
また先日大手化粧品メーカーの広報が美容インフルエンサーとしての個人アカウントでメーカー商品の宣伝を行なったことが発覚し、メーカー側が陳謝する出来事がありました。
広告に関する問題は法令への抵触だけでなく、広告宣伝の姿勢が企業のガバナンスにも大きな影響を及ぼすことを、いま一度認識しておかねばなりません。
当然ホームページやリスティングのLPもれっきとした広告ですので、再度チェックしておきましょう。インターネット広告の中にはあきらかに法令に違反していると思わしきものもありますが、他人がやっているからやっていい、ということにはなりません。
弊社では薬機法や景表法などの関連法規に抵触しないメディアづくりのほか、ホームページ法規対応のリニューアルやLP制作も承っております。下記ボタンより問い合わせフォームに飛べますので、ご要望を明記の上ご相談ください。
医薬部外品の育毛剤・発毛剤の広告規制と表現まとめ
タイトルには発毛剤と入れましたが、これは医薬品にしか許されていない表現です。医薬品であるとしても、男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインで
日本皮膚科学会が推奨している外用薬(育毛剤)の成分は、ミノキシジルやアデノシンなどに限定されています。
医薬部外品としての範疇を超え本当に効果があるのに伝えられない、と感じることもあると思いますが、客観的なエビデンス(科学的根拠)と主観による(もしくは個々のケースによる)効果は別モノです。
アフィリエイトではない自然発生的な口コミや評判は取り締まりの対象ではありませんが、これを広告に使うことも禁止されています。リード獲得には制約が多く苦労しますが、顧客育成にはこうした口コミを活用するなどして使い分けることが肝心です。
薬機法や景表法に則した広告制作のご要望があれば、下記よりお問い合わせください。オンライン商談システムで、直接リクエストを承ることも可能です。