医療機関広告の種類とマーケティング手法
最終更新日:2021年12月01日
2021年5月時点の日本では、医療機関に新型コロナウイルスの影響が色濃く出ていますが、目の前のことだけを見ているわけにはいきません。今後の集患安定化を実現するための手法を考えている医療機関や施術所も多いと思われます。
「医療機関はサービス業のひとつでもある」というとらえ方で、一般企業と同じくブランディング手法を模索するクリニックが増加傾向にあります。
しかし、変容する時代のニーズに合わせた医療広告やマーケティング手法を採択しない限り、安定的な集患を実現することは困難です。
このページでは、そんな医療機関広告の種類とマーケティング手法に焦点を当て、解説していきます。
医療機関のブランディングの先にある広告
医療機関の広告やマーケティングについて考える前に、病院や診療所、クリニックが商圏エリアでブランド化されているか、ポジショニングが明確になっているか考えてみてください。
競合の多い歯科などは特にそうですが、自院の強みや特徴がアピールできなければ、どんな広告を打ってもうまくいかないはずです。
総合病院や大学病院、指定難病などの専門病院を除いて、ほとんどの患者は、自宅や勤務先など生活圏に近い病院にかかろうとする傾向があります。
カルテに患者が記入した住所がすなわち自院の商圏を示しており、ターゲットがその地域に限定されていることと同義です。
したがって、その商圏エリア内でのブランディングやポジショニングを成功させることこそ、安定的な集患を実現する重要なポイントだといえます。
医療従事者に求められる経営センス
医療マネジメント学会雑誌Vol.4, No.3, 2003「総合病院のブランドを高める戦略と戦術」に掲載されている論文には、病院の経営に内容を引用抜粋したものが下記。
病院のサービスは一般的なサービスと何ら変りがないことを認識し、商品やサービスのブランド構築やサービスマーケティングと同様の戦略、戦術を構築する必要がある。
医療の世界ではこのブランドに対する認識は極めて薄いのが現状であり、ブランド構築をより早く、確実に行えば、競合病院に大きく差をつけることが容易である。そのためには、この分野で先進的な他業種の方法を取り入れるべきである。引用元:J-STAGE医療マネジメント学会雑誌「総合病院のブランドを高める戦略と戦術」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhm2000/4/3/4_3_457/_pdf)
と書かれています。
1998年に緩和された理事長要件によって、条件付きで医師以外が理事長に就任できるようになりましたが、病院の院長や看護部長などは、経営について十分に学んでいかなければならない立場であることを、改めて意識しなければなりません。
昨今では、厚生労働省が「中小病院における経営改善事例」を発表するなど、情報提供も盛んに行われるようになっています。
つまり、経営にしっかり向き合わなければ、選ばれる病院であり続けることは非常に困難であるということです。
「いい先生、いい病院であれば患者さんは来るはず」という従来の考え方は捨て去らなければなりません。
医療機関も一般企業と同様、しっかりと先を見据えた経営を行うことが必須であることは間違いありません。
病院経営に必須のポジショニング戦略
また、ブランディングがまだできていない場合、まず自院のポジショニングを見つけることが最優先だと言えます。
ポジショニングとは、ターゲット市場やターゲット顧客(患者)のなかで、自院独自のポジションを築き上げ、差別化イメージを周知させるための活動のことを言います。
患者をはじめとするステークホルダーにとって、ほかの病院では替えの効かない独自の役割を築き、選ばれ続ける状況をつくり出すことがポジショニングの目的です。
ポジショニング戦略で重要なポイントは、上図のように「顧客からの需要があり、自社だけが提供できるもの」を見つけ出すことです。
そのためには、ポジショニングの軸を設定し、どのような視点からポジショニングを図っていくかを考えることが大切だと言えます。
- 病院の「属性」に基づくポジショニング
- 病院が「提供」できる価値に基づくポジショニング
- 「ブランドパーソナリティ」に基づくポジショニング
- 「ブランドアイデンティティ」に基づくポジショニング
- 病院の「時間」に基づくポジショニング
- 病院の「空間」に基づくポジショニング
- 通院までの「プロセス」に基づくポジショニング
このように、さまざまな視点(軸)からポジショニングについて考えていくことで、「患者からのニーズがあり、競合には提供できず、自院が提供可能な価値」を見つけることができます。
病院の強みや優位性を確認するために活用をおすすめしたいのが、「ポジショニングマップ」です。自院が置かれている状況を客観的に俯瞰できるので、一度お試しになるとよいと思います。
ポジショニングマップのテンプレートは下記よりダウンロードしてお使いください。
また病院のポジショニングについては下記の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
病院・医療関連業界のポジショニングマップ事例。軸の決め方の参考に!
医療機関にもマーケティングと広告戦略は必須
医療機関にもマーケティングと広告戦略は必須であり、体系立てた戦略を考えていく必要があります。
先でも触れていますが、マーケティングと広告戦略を行う際は「患者が求めていて、他院にはなく、自院にあるものはなにか」を明確にしていくことがポイントです。
自院のポジショニングが地域に根差した双方向のコミュニケーションであれば、その強みを前面に押し出した広告戦略を立ててみるというのもひとつの方法でしょう。
さらに「患者が自院に求めているモノ」を追求して、病院経営に反映していくことも大事だと言えます。
経営について考えなければならないのは、医療機関も同じですので、サービス業としてマーケティングや広告戦略のセンスを磨くことを意識していきましょう。
医療機関の広告の種類
それでは、実際に医療機関の広告にはどのようなものがあるか、整理して行きましょう。
【オフライン】街や駅の看板
街や駅などに設置されている看板に、自院の情報を載せているクリニックは多いでしょう。
また、昨今ではLEDビジョンを利用したデジタルサイネージ(電子掲示板)も看板として活用されています。
施術の様子や院内の様子を映し出す看板も増加傾向にあり、オフライン広告といえど、ステークホルダーに訴求しやすい手法のひとつだと言えるでしょう。
デジタルサイネージ自体にカメラを搭載し、広告視聴数をリアルタイムで把握する仕組み(インプレッション販売型)の看板も普及するなど、高い広告効果を期待できるようになっています。
【オフライン】調剤薬局などに置くパンフレット
調剤薬局などに置くパンフレットも、ステークホルダーにアプローチするために有効です。
自院の独自性や強みをアピールすることで、見込み患者や近隣住民へのアピールにつながり、強く印象づけることも可能になるでしょう。
また、新しい治療法や医療機器を導入しているなどの価値が提供できる医院であれば、電車や車で1時間といった少し遠いところからの集患も可能です。
【オフライン】新聞の折込広告やポスティングのチラシ
新聞の折り込み広告やポスティングのチラシなども、病院の広告としてまだまだ機能してくれます。
見込み患者の潜在ニーズに訴えかけることができれば、「必要となったときに訪ねてみよう」といった刷り込みにもつながるでしょう。
見込み患者の調子が悪くなったとき、選択肢のひとつとして自院をイメージしてもらえるようになれば集患のきっかけとなりますので、検討する価値があると言えます。
【オフライン】電車の車内広告やポスター
電車の車内広告やポスターなども、見込み患者にアプローチする手法として有効です。
通勤中のビジネスパーソンや通学中の学生などにも周知されますので、少し遠い地域へのPRにも最適でしょう。
また、スマートフォンを携帯している見込み患者に向けて、思わず検索したくなるようなコピーを載せるなどの工夫も反映しやすいと言えます。
【オフライン】ヘルスケア・疾病系フリーペーパー
ヘルスケア・疾病系フリーペーパーに病院の情報を載せるケースもあります。
この場合、見込み患者のニーズに応えられるような情報を掲載することで、「親切な病院」「信頼できそうな病院」といったイメージを定着させることにもつながるでしょう。
また、紙面にQRコードや公式LINEなどの情報を載せておくことで、Webサイトの来訪者を増やすことも可能です。
【オフライン】雑誌や季刊誌、ムックなどの刊行物
雑誌や季刊誌、ムックなどの刊行物で集患を図ることも可能です。
これらの刊行物は、自身の健康的な悩みを解消するためや、家族の疾患について理解を深めたいといったニーズを持っている人の目に触れる機会が多いため、うまく活用していくとよいでしょう。
【オンライン】リスティング広告
リスティング広告は、検索エンジンの検索結果に表示される広告のことを指します。
検索連動型広告とも呼ばれ、自然検索より上位に表示される仕組みです。
ユーザーが検索したキーワードに類似する広告が表示されるため、自然検索で上位を目指すことが難しいクリニックにおいても集患につながりやすいといった特徴があります。
コストはかかりますが、少額から始められるといったメリットもありますので、検討する価値があると言えるでしょう。
【オンライン】ホームページ
医療機関を運営する上で必須とされるホームページは、広告としての側面を持っています。
スマートフォンを持つ大半のユーザーは、病院選びをする際、各クリニックのホームページを参考にします。
通いやすさや診療時間だけではなく、ホームページの見やすさや使いやすさ、写真などを参考にしながら受診する病院を決める人が多いため、多くの目に触れる広告として機能させておく必要があるのです。
後述するツールや検索エンジンから流入してきた見込み患者にしっかりアプローチするためにも、ホームページ=広告という認識を強く持ちましょう。
また、ユーザーが最初に確認するトップページはもちろん、自院の強みや理念について触れているページ、各診療科目の案内ページ、サイトの導線など、差別化やブランディングにつながるような工夫も必要です。
【オンライン】調査リリース・プレスリリース
調査リリース・プレスリリースも、自院のPRに有効です。
調査リリース・プレスリリースは、自院のサービスや設備などに関するものや、業界・疾患について調査を行い、その結果を基に作成した情報を発表することを指します。
見込み顧客に有益な情報を届けることで、認知度アップやブランディングにつながるほか、SEO施策に有効な被リンク効果が得られると言ったメリットもあります。
また、見込み患者からの信頼を得られたり、メディアに取り上げられたりする可能性もため、積極的に取り入れるといいでしょう。
調査リリース・調査PRについては、下記の記事で詳しく解説しています。
【オンライン】病院検索サイト
ColooやEPARKなどの病院検索サイトも、集患やマーケティングに有効です。
病院検索サイトは、SEO施策により上位表示されることが多いため、見込み顧客にリーチすることも容易です。
公式サイトへの流入数を増やすことはもちろん、自院の認知度アップや予約数・来院数の増加にもつながりますので、積極的に利用するといいでしょう。
病院検索サイトについては、下記のページで詳しく参考にしていますので、参考にしてください。
【オンライン】Webメディア
Webメディアによる広告運用も、集患につながりやすいと言えます。
- オンラインマガジン:雑誌のような情報を提供するウェブサイト
- Webに特化したメディア:動画や画像の配信、お役立ちコンテンツなどさまざまな切り口でつくられるサイト
- 記事広告:通常の記事と同じように掲載される広告
- ネイティブ広告:メディアの中に溶け込むよう設置された広告
- オウンドメディア:自院で運営するメディア
一口にWebメディアと言っても、上記のようにあらゆる手法を用いて広告運用を行うのが一般的です。
それぞれの特徴や強みを理解し、目的に応じた手法で広告を打ち出していくとよいでしょう。
【オンライン】ポータルサイト
さまざまなページの玄関口となるWebサイトの役割を果たすポータルサイトも、広告のひとつです。
先で挙げた病院検索サイトもポータルサイトのひとつで、ほかにもさまざまな種類があります。
- 総合型ポータルサイト:ニュースや天気情報など、生活に必要な情報が掲載されているサイト
- 地域型ポータルサイト:特定の地域情報に特化したサイト
- 専門型ポータルサイト:1つの分野に特化しているサイト
- 目的型ポータルサイト:目的を実現するための情報に特化しているサイト
- ブログ型ポータルサイト:ブログ記事をまとめて提供するサイト
このように、さまざまな種類に分けられますが、うまく活用することでブランディングやPRに役立つでしょう。
ポータルサイトの詳細については、下記の記事をご覧ください。
また、弊社が推奨するポジショニングメディアも、ポータルサイトの一種です。
ポジショニングメディアとは、明確にしたポジションをもとに制作するサイトのことで、特定市場において自院のポジションを確立することに役立ちます。
また、親和性の高いユーザーにアプローチ可能なため、予約数や来院数をアップさせることも可能です。
【オンライン】オウンドメディア
自院で運営・発信していくオウンドメディアも、集患につながる広告としての役割を担います。
アクセス数の増加はもちろん、コンテンツを読んだ見込み患者の潜在ニーズに訴えかけることで、来院のきっかけを与えることもできます。
また、メディアを通して地域や社会、製薬会社など、各ステークホルダーとのつながりを深めていくことにもつながり、より強固なポジションを目指せます。
市場内での立ち位置をもとに、ブランディングを一貫させるための運用も可能なため、競合の多い地域でも大きな成果が見込めるでしょう。
弊社は7,000件以上の制作実績を誇り、Web制作の各工程を専門のチームで対応しています。
オウンドメディア制作に悩みや課題をお持ちなら、ぜひお問い合わせください。
医療機関のSEOも広告戦略のひとつ
医療機関のSEOも広告戦略のひとつだと言えます。
クリニック・病院の集客方法としてますます重要度が増しているSEO施策ですが、病院の集患につなげるためには以下で挙げる3つの手法が有効です。
- ロングテールSEO:「横浜 歯科 ホワイトニング」「銀座 美容クリニック 医療脱毛」というように、特定のキーワードと関連する複数のキーワードで検索されたとき、上位に表示されるよう目指す施策。
- ローカルSEO:「大阪 内科」「東京 審美歯科」など、「特定のエリア+〇〇」のキーワードで検索されたとき、上位に食い込めるよう目指す施策。
このような施策は、店舗ビジネスや地域ビジネスにとって有効であり、もちろん集患を目指す上でも最適です。
また、ローカルSEOの成功を目指す上では、Googleマイビジネスを活用することもポイントです。
Googleマイビジネスとは、住所やア電話番号、診療時間、公式サイトのURL、クリニックの写真などの情報を掲載できるツールで、医院選びをしているユーザーにリーチできます。
情報が氾濫するなか、自院について一目でわかるようにしておくことはとても重要です。
また、GoogleマイビジネスのInsightsと呼ばれる分析機能を使えば、ユーザーがどのような経路で自院の情報に触れたのかをチェックすることも可能です。
下記のページで、病院におけるSEO施策のポイントをまとめていますので、あわせて参考にしてください。
医療機関広告の種類とマーケティング手法まとめ
医療機関の大きさでいえば、ひと昔前は大学病院や国公立病院のブランドには勝てない、勝負をしても無駄である、というあきらめにも近いものがありました。とくに専門性の高い治療領域では、いまでもその傾向があります。
それでも「モノ言う患者」がインターネットで比較検討して病院を決めるようになった今、自院をどうブランド化するか、ターゲットの心をつかむかで集患の成否が決まる時代です。
もちろん素人考えで誤った情報で来院する患者も少なくありませんが、その患者に対して上からモノを言う病院に経営センスがあるとは考えられません。
経営センスが問われるのは医療従事者も同じ
現代は、医師である院長、看護部長、事務長等も十分に経営を学ばなければならない時代です。
そこで、病院が第一に考えていきたい手法は、ポジショニング戦略です。
市場のなかで自院独自のポジションを築き上げていくことは、ブランディングにもマーケティングにも有効だと言えます。
差別化イメージを定着させることで、安定的な集患を実現することも可能ですので、ぜひ押さえておきましょう。
また、後半では、集患に効果的なPR手法を紹介しました。
どれが1番だという考え方ではなく、オフライン広告・オンライン広告を組み合わせつつ、集客を目指していくことが大切です。
ただし、せっかく接近できた見込み顧客を逃さないための囲い込みとして、自院のオウンドメディアを強化しておくことが求められます。
自院のサイトがポジショニングやブランディングにつながっているかどうか、UI/UXの高いサイトになっているかなどを今一度確認しておきましょう。
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弊社は、Web戦略やマーケティング施策に強みを持つ会社です。
また、ポジショニングメディアやホームページのリニューアルなども得意としています。
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