技術マーケティング戦略とは?進め方・ポイントを解説
最終更新日:2021年10月29日
イノベーティブな商品を次々開発・販売しても、すぐにコモディティ化してしまう昨今。特に製造業ではAIや5Gなどの革新的テクノロジーは日進月歩で進化をし続けています。
そのような現在の市場において、技術者も一緒になって参加する「技術マーケティング」の導入が製造業界では急務となっています。
この記事では製造業界において各企業での導入が必須になりつつある「技術マーケティング」について解説いたします。
技術マーケティング戦略とは
「技術マーケティング」とは技術を「買う」「売る」ことです。
具体的にはコアコンピタンスとしている自社のコア技術を購入してくれる企業を見つけ、その技術を購入してもらいます。
他の分野への技術転用を検討してもらい、もしうまくいけば自社共々事業拡大を図れます。
そのためには、他ならぬ「技術者」も一緒になってマーケティング分野に関わりを持つ必要があります。
技術者もマーケティングの知識を持ち、技術面でのマーケティング活動を行うことを「技術マーケティング戦略」と言います。
技術マーケティングが必要とされる背景
以前より日本の製造業は高い技術力を保有していると言われ、有能な技術者が多いとされながらも、「失われた20年」との言葉があるぐらい、製造業は伸び悩んできた経緯があります。
その原因の一つが「技術マーケティング力」の弱さと言われています。
MOT(技術経営)でも日本は脆弱とされ、マーケティングや経営を持ち前の高い技術力と結びつけることができていないのです。
技術マーケティング戦略とはそのような日本の高い技術力とマーケティング戦略を結びつけた技術戦略のひとつです。
技術マーケティングは難しい
技術マーケティングは、一般ターゲットに行う通常のマーケティングとは、手法や考え方が異なるため、難しいとされています。
一般ターゲットへ向けて行う通常のマーケティングは、インバウンドマーケティングの効果を高めるため「ペルソナ」を設定して行うのが最も効率的です。
ペルソナでは「たったひとり」にターゲットを絞りますが、技術マーケティングではターゲットをそこまできつく絞りません。
ひとりでも多くの技術者に自社のコア技術の情報を知ってもらうべく、ターゲットの範囲は広くしておく必要があるのです。
どちらかと言うと高度成長期に一般的だったマスマーケティング的な色合いの方が濃く、成果に結びつきにくい特徴があるのです。
根気よく情報を伝達し続ける必要があるため、活動費は予算を取りづらく、場合によってはコストがかかり過ぎてしまうこともあります。
技術マーケティング戦略は2通りある
技術マーケティングは戦略を立案する際に、自社が行っているマーケティングが「BtoB」であるか「BtoC」であるかをまず確認しておく必要があります。
「BtoB」と「BtoC」ではそれぞれ立案する戦略が異なります。
「BtoB」の場合
技術マーケティング戦略のターゲットが「BtoB」の場合は、企業ニーズが潜在化している可能性があります。
自社が必要としている技術が双方ともに明確化していないことがあり、潜在化している顧客に対して取るべきマーケティング戦略は「市場開拓戦略」です。
この場合、ターゲットである顧客企業の技術者には、こまめな情報交換を行う必要があります。
展示会や学会、ショールームなどで接点を積極的に持つことにより、相手企業の技術者へアプローチすることができるようになります。
「BtoC」の場合
技術マーケティング戦略のターゲットが「BtoC」の場合は、顧客ニーズが顕在化しており、取るべきマーケティング戦略は「市場深耕戦略」です。
「顧客深耕」とはすでに自社商品を購入済みの顧客に対して、さらに需要を引き出し、より多く購入してもらうことです。
商品や技術といった他社との差別化が図れる要素がすぐにコモディティ化してしまう昨今において「BtoC」では市場深耕戦略が適切に立案できるか否かが顧客獲得に大きな影響を与えます。
技術マーケティング戦略の目的
AIなどのデジタル技術や5Gなどの通信技術は日進月歩で目覚ましい発展を遂げています。
関連する商品のライフサイクルは徐々に短くなっており、すぐにコモディティ化してしまう現状があります。
競合も徐々に増え、低価格競争に拍車がかかっていく中で、自社が行うことは、コアコンピタンス(コア技術)を活かして、市場の中でシェアを獲得することです。
他社との差別化を図り、マーケットにおける自社のポジションを確保していくのです。
そのためには自社が保有する「技術者」も積極的にマーケティングに関わり、他社にコアコンピタンスを提供していく必要があるのです。
その際に重要なことは、新しい領域へ進出することです。俗に言う「用途開発」ですが、用途開発も合わせて行うことにより、効率よく事業の拡大を行える可能性が高まります。
新しい技術を開発することは企業が発展していく上で重要ですが、開発コストがかかる上、市場を間違えると失敗に終わる可能性もあります。
しかし用途開発であれば、効率よく自社コアコンピタンスを売り込むことができ、場合によっては驚くほどの高単価で技術を購入してくれることもあるのです。
技術マーケティングの課題
技術マーケティングを行うには、いくつか乗り越えるべき課題があります。この課題をクリアしていくことによって、技術マーケティングを成功へ導ける可能性が高まります。
市場トレンドの把握
技術マーケティング戦略では、未開拓の市場である場合は市場開拓を行ったり、既存市場であれば市場深耕を行ったりする必要があります。そのため常に市場にけるトレンドを把握していなければなりません。
自社技術はどのような市場で活用できるのかを調べた上で、かつ市場ニーズのある分野へと進出していく必要があります。
そのためには自社コアコンピタンス(コア技術)についてより深く知ることはもちろん、ターゲットとなる相手企業の技術も研究し、専門知識をつけていく必要があります。
顧客の悩みを知る
技術マーケティングは自社コアコンピタンス(コア技術)を他社に購入してもらうことが目的です。
そのためには自社コアコンピタンスが、他社の抱えている悩みや問題を解決してあげられる技術でなければなりません。
自社コアコンピタンスが「あなたの企業で役に立ちますよ」ということをアプローチするためには、「顧客の悩み」を知る必要があります。
ターゲットとなる顧客が市場のどの分野に進出し、どのような商品を強みとしているのかを把握した上で、「このような技術をこちらが提供できれば、相手企業の悩みを解決できるのではないか」ということを常に模索しておきます。
苦手な分野へ積極的に関わる
技術マーケティングは「マーケティング手法」のひとつですので、基本となるのはやはり「4P」です。
4Pはすべてのマーケティング戦略の基本中の基本となる要素で、「製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販売促進(Promotion)の4つの要素のことを指します。
技術経営(MOT)が脆弱とされる日本の企業では、営業部門と開発部門が切り分けられていることが多く、営業部門は「製品(Product)」の知識については苦手、逆に開発部門は「流通(Place)・販売促進(Promotion)」に関して苦手、ということが往々にしてあります。
しかし技術マーケティング戦略においてはどちらか一方が苦手でも、それが障害となりやすく各々偏りがない共通認識が求められるのです。
技術マーケティング戦略の効果・メリット
技術マーケティングはマーケティング手法としては難しいことも多いですが、成功すると事業拡大に大きく貢献するメリットもあります。
新商品創出に結びつく可能性が高い
技術者は大なり小なりその分野においての知見があり、その技術における長所や短所、問題点や技術の将来性についてなど、さまざま事案を把握しているものです。
そのため、顧客目線で商品開発ができたり、顧客ニーズを満たす商品の開発を行ったりできることが多くあります。
技術者ならではの目線から、新しい発見に結び付けられることも多く、イノベーティブな新商品の創出に結びつく可能性が高くなります。
長期スパンでの事業継続が可能
技術マーケティングでは顧客ニーズを満たした、悩みを解決できるコアコンピタンス(コア技術)の提供が必要不可欠です。
仮にもし、自社コアコンピタンスを必要としている顧客を見つけられたら、長期スパンでの事業継続ができる可能性が高まります。
技術者を交えた経営戦略を策定していくことで、現在よりもイノベーティブな商品や技術の開発を達成していくことができるようになります。
技術マーケティング戦略の進め方
技術マーケティング戦略を行うに当たっては、事前にしっかりと準備をしてから望まないと、失敗に終わる可能性が高まります。
上述「技術マーケティングは難しい」の項目でも説明したように、技術マーケティング手法は、一般のターゲットに向けて行う通常のマーケティング方法とは手法や考え方が異なるため、成果に結びつきにくい特徴があります。
そのため成否を分ける事前準備は念入りに行う必要があるのです。
技術の棚卸しを行う
技術マーケティング戦略において、最初にやるべきことは技術の棚卸しを行うことです。
技術の棚卸しとは自社のコアコンピタンス(コア技術)を見直し、改めて自社には何ができて何ができないのかを整理していくことです。
このようにすることで改めて自社の強みや立ち位置が分かり、自社にはどのような分野で活躍できる技術を持ち合わせているのかを把握できます。
また「技術マーケティング戦略は2通りある」の部分でも上述したように技術マーケティング戦略は「BtoB」と「BtoC」では取るべき戦略が異なるため、自社コアコンピタンスを明確にする必要があるのです。
自社コアコンピタンス(コア技術)の資料を作成する
技術の棚卸しを行い、改めて自社のコアコンピタンス(コア技術)を確認したら、その技術を顧客に分かりやすく伝える手段を作成する必要があります。
技術マーケティングは自社だけで内容を把握していても意味はありません。顧客に自社コアコンピタンスを理解してもらって初めて技術の購入を検討してもらえるのです。
伝える手段としては、画像や表、グラフなどを用いて説明します。もっとも効果的なのは実物を使用した説明です。
しかしながら、技術を相手に分かりやすく伝えることは思っている以上に難しく、「伝える技術」を磨く必要があります。
特に注意するべきは、自社技術だけの一方的なノウハウ話にならないようにすることです。
自社技術をこれでもかとアピールし自画自賛しても、違う分野の人たちにはまるで伝わっていない場合が往々にしてあるということです。
例えば音響技術のプロフェッショナルに、卓越した映像技術の凄さを語ったところでイマイチ伝わりづらいですし、逆もまた然りです。
技術者は技術だけでなく、他分野の人たちにも詳細がわかるように「伝える技術」を身につけることが、技術マーケティング戦略を成功へと導く鍵となります。
部署ごとに意思疎通を図る
企業内の部署ごとに技術マーケティング戦略の捉え方でばらつきが出ないよう、意思疎通や意思の統一を図ります。
それぞれ部署ごとにしっかりと責任感を持ち、企業全体として技術マーケティング戦略に参画するように心がけます。
それぞれ「違う部署だから」という考え方にならないよう、お互いの役割を補完し合うのです。
技術マーケティング戦略で成功を収めているトイレメーカーの「TOTO」では、企業内の違う部署同士で意思統一を行っており、常に長期目線としてのイノベーション戦略に臨んでいます。
このように部署ごとの隔たりをなくすことこそが、技術マーケティング戦略をまた一歩、成功へと近づけるのです。
技術マーケティング戦略まとめ
商品のライフサイクルが短くなっている昨今では、技術マーケティング戦略の導入が必要不可欠です。
技術者も一緒になってマーケティングに参加し、自社のコアコンピタンスを必要としている顧客を見つけ、お互いにビジネスパートナーとしての関係を構築していきます。
市場シェアを獲得するためには、自社独自の強みや価値(バリュープロポジション)を持つ必要があります。
バリュープロポジションとは「顧客に提供する価値」のことで、自社は顧客に対してどのような価値を提供できるのかを明確にする必要があります。
そうすることで自社ならではの提供価値を正しく顧客やユーザーに伝えることができ、自社を選ぶべき理由もまた明確に伝えることができます。
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