空調制御システムの導入を検討している企業の中には、電気代の高騰に悩んでいるところも多いのではないでしょうか。オフィスビルの電気代の約4割を空調が占めるともいわれており、空調制御は省エネルギー活動や節電に直結します。
本記事では、電気代の高騰を背景に、詳しく知っておきたい空調制御システムについて解説します。空調制御システムの特徴、制御方式、対応年数、そしておすすめシステムまで幅広くご紹介。ぜひ、導入を検討する際の参考にしてください。
おすすめの空調制御システム一覧表
会社名 | サービスの特徴 |
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おまかSave-Air |
関西電力開発!省エネと快適を両立する空調制御システム
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EMクラウド |
エネルギー管理を効率化する制御プラットフォーム |
「かいてきくん」 |
無線で快適さと効率を制御するシステム |
RICOH Smart MES |
クラウドで実現する効率的なエネルギー制御 |
E&E Air® |
既存機器で実現するクラウド型空調制御 |
Smart DASH® |
AIで最適化する空調環境 |
P-AIMS(ピーエイムス) |
空調と設備を一括管理する統合システム |
アイ・ビー・テクノス |
統合管理で快適さと効率を実現するシステム |
ジェルコミュニケーション |
間欠運転で最適化する空調制御 |
オーニシ |
リアルタイム制御で電力使用を最適化 |
DK-CONNECT |
IoTで空調と建物管理を効率化 |
リモビス |
クラウドで統合管理を実現する設備制御システム |
空調制御システムとは
空調制御システムとは、空調機をコントロールし、使用量を抑制するためのシステムです。一般的に採用されているフィードバック制御では、デマンド値を設定し、その値を超えないように空調を調整します。
このシステムを導入することで、空調を完全に停止することなく、不快感を与えない範囲でコントロールが可能になります。その結果、社員に負担をかけず、省エネルギー化を実現できるのが特徴です。
デマンド値が契約電力を超過しないようコントロール
空調制御システムは様々な場所に導入されており、
- 一般家庭
- オフィスビル
- 複合施設
- 病院・福祉施設
- 工場
これらの施設では、室内の空調が必要な場所に幅広く対応しています。特に、オフィスビルのエネルギー消費量の約4割が冷暖房設備に利用されているため、空調制御を行うことで電気料金の削減が期待できます。
デマンド値(30分間の平均使用電力)を設定し、その値を超えないよう空調をコントロールすることで、契約電力がデマンド値(最大需要電力)で更新される心配を防げます。
一方で、人の手で空調制御を行う場合、タイミングの誤りにより最大需要電力が契約電力を上回り、超過した値で契約更新が行われるリスクがあります。
一度超過すると、その後の使用量が減少しても高額な基本料金が請求されるため、負担金額が大きくなる可能性がある点に注意が必要です。
空調間欠運転制御で10~20%の制御
空調制御システムでは、デマンド値が契約電力を超過しないように調整を行います。その方法の一つとして「空調間欠運転制御」があります。
この制御方式では、設定電流値が一定時間流れた場合に、数分間送風状態へ切り替えることでエネルギー消費量を調整します。
たとえば、設定電流値以上の電流が27分間流れた際、残り3分を送風状態に切り替えるといった形で運用することで、デマンド値の超過を防ぐことが可能です。
デマンドコントローラーによる空調制御率は10~20%に達し、室内環境を損なうことなく空調を効率的に調整できます。
空調制御システムのメリットとデメリット
メリット
空調制御システムを導入することで、エネルギー消費量を削減し、電気料金の節約が期待できます。特に、空調が消費する電力量が多いオフィスビルや工場では、デマンド値を管理することで契約電力の超過を防ぎ、基本料金の大幅な増加を抑制できます。
また、システムによっては、室内環境を損なうことなく最適な空調管理が可能であり、従業員や利用者に負担を与えません。さらに、クラウド型やセンサー連動型のシステムを選べば、遠隔操作やデータ共有が可能となり、施設全体を効率的に管理できます。
デメリット
一方で、導入には初期費用や運用コストがかかるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。設置場所や対象施設に合わせたカスタマイズが必要な場合、システム選定や導入プロセスが複雑化することも考えられます。
さらに、システムのメンテナンスやアップデートが定期的に必要となり、長期運用では追加のコストや時間がかかる場合があります。特に、老朽化や部品の供給停止に伴うコストへの備えが求められる点にも注意が必要です。
空調制御システムの選び方
空調制御システムを選ぶ際には、まずエネルギー削減、コスト管理、快適性の向上など、自社の導入目的を明確にし、必要な機能をリストアップすることが重要です。特に、遠隔操作、センサー連動、データ分析などが求められるかを事前に検討しましょう。
また、使用する施設に応じた適切なシステムを選ぶ必要があります。たとえば、オフィスビル、工場、データセンターなど、施設ごとに求められる機能は異なります。データセンターや医療施設では、特殊な冷却技術を備えたシステムが適している場合があります。
次に、初期費用や月額料金を見積もり、空調費用削減の効果と比較することが大切です。将来的なランニングコストも考慮しながら、費用対効果を慎重に検討しましょう。
さらに、現場スタッフが使いやすい直感的な操作性を持つシステムであるかを確認します。導入後のサポート体制が整っているか、トラブル対応が迅速に行われるかも重要なポイントです。
長期運用を見据え、システムの耐用年数やメンテナンスの必要性もチェックしましょう。部品供給の停止リスクや老朽化への対応策が用意されているかも確認する必要があります。
最後に、同業種での導入実績が豊富なシステムは信頼性が高い傾向にあります。実際に利用している企業のレビューや導入事例を調査し、選定の参考にすることをおすすめします。また、提供会社がデモやトライアルを実施している場合は、自社環境での適合性を確認するために積極的に活用しましょう。
空調制御システムの仕組み
空調制御システムの仕組みとしては定量的制御・定性的制御があり、オンオフによる制御は定性的制御に該当します。定性的制御は目標値を設定して制御を行う方法で、上記で紹介したフィードバック制御も含まれます。
フィードバック制御
フィードバック制御とは、温度・湿度・CO2センサーを用いて、制御対象の数値と目標値との差を計算し、その差を埋めるために調整を行うシステムです。
たとえば、温度を調整する場合、送風と冷風を切り替えて出力値を適切に調節します。基本的には、センサーで測定した温度が変化した後に調整を行うため、調整時の温度変化を抑えることが可能です。
冷風から送風に切り替える際も、不快感が生じないレベルで変化させるため、労働効率への影響は少ないとされています。ただし、調整が変化後に行われるため、外的要因によって温度が乱れるリスクがある点には注意が必要です。変化が生じなければ修正動作が発生せず、後追いでの調整となる場合があります。
フィードフォワード制御
フィードフォワード制御とは、フィードバック制御の欠点である外的要因発生時の乱れを最小限に抑える制御方式です。この方法では、外乱を検知し、操作量を決定して修正動作を行うことで、外的要因に柔軟に対応できます。
ただし、温度を検出した後に目標値へ修正する動作は行えないため、通常はフィードフォワード制御とフィードバック制御を組み合わせて使用します。この組み合わせにより、より安定した制御が可能になります。
シーケンス制御
シーケンス制御はオンオフを行う、2値を使った自動制御のことです。室温の高低によって設備をオン・オフさせて、空調をコントロールできます。 あらかじめ決められた工程に則り調整を図るため、目標値に落ち着かせるのが難しい制御方式だと言えます。設定した温度でオンオフを繰り返してしまうため、不快感を生じさせないような細やかな調整は難しく、空調制御システムにはあまり用いられません。
空調制御システムの種類
空調制御システムのタイプは、大きく分けて以下の3つがあります。
様々な業種対応型: オフィスビルはもちろん、小売店舗、商業施設、ホテル・旅館、物流センター、医療機関、学校、工場など、多種多様な大型施設に対応するタイプです。独自の制御アルゴリズムやセンシング技術を活用し、それぞれの施設に最適な環境設定を提供します。
オフィスビル特化型: オフィスビルの空調制御に特化したタイプです。規模や用途に応じて快適な環境を実現することを目的としています。人感センサーによる制御や、省エネルギー化に対応した機能を搭載。さらに、フロアやエリアごとに個別の温度設定ができるため、柔軟な対応が可能です。
データセンター特化型: データセンターの空調制御に特化したタイプです。多数のサーバーが高密度で設置されているデータセンターでは、発熱による室温の上昇が大きな課題となります。適切な空調制御を行わないと、サーバーの誤作動やシステムダウンにつながるリスクがあります。このタイプのシステムは、高度な冷却技術で室温を適切に管理し、災害時にも空調が停止しない設計が求められます。
空調制御システムの耐用年数
固定資産としての耐用年数は、空調機の場合、冷凍機の出力に応じて13年または15年です。一方、温度・湿度を調整するエアーコンディショナーなどのシステムは、耐用年数が6年とされています。
なお、多くの空調制御システムは中央監視装置に分類されます。中央監視装置とは、建物内の設備機能を自動化し、不具合の監視をコンピューターで集約管理する装置のことで、空調制御機能も含まれています。
中央監視装置の法定耐用年数は15年です。そのため、比較的長期間使用できます。ただし、空調制御システムは建築時やリフォーム時に導入されることが多く、年数の経過とともに設備や制御装置の老朽化が進行します。
15年以上使用できるケースもありますが、10年以上経過するとメンテナンス用の交換部品の供給が停止するリスクがありますので注意が必要です。
また、時代のニーズに空調制御システムが対応しなくなる可能性もあります。そのため、法定耐用年数を迎える頃には、一度システムの見直しを検討することをおすすめします。
空調制御システムの費用相場
空調制御システムは月額費用が発生するものが多く、具体的な金額は制御する空調台数によって大きく異なります。ネット上の情報によれば、一台あたりの費用は数千円が相場とされています。また、従量制の月額費用にはオプション機能やプラットフォーム利用料が加算される場合があります。
空調制御システムを導入することでエネルギー費用の削減が期待できます。しかし、選定時には提供会社から見積もりを取得し、毎月の空調費用とシステム導入・運用にかかる費用を比較することが重要です。
まとめ
空調制御システムと一口に言っても種類はさまざまです。導入の目的や用途に応じて、自社に必要な機能を備えたシステムを選びましょう。
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- 本記事は、2023年1月時点の情報をもとに作成しています。掲載各社の情報・事例をはじめコンテンツ内容は、現時点で削除および変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。