広告代理店にはなぜ新しいビジネスモデルが求められているのか?
最終更新日:2024年04月11日
この記事では、広告代理店が抱える課題にスポットを当てながら、広告代理店に求められる新しいビジネスモデルについて解説していきます。
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新聞や雑誌などの紙媒体の枠を超え、看板やテレビ、交通広告、インターネット広告など、時代とともにビジネスの幅を広げてきた広告代理店。
1880年以降、広告業界にコピーライターという職業が登場してからは広告の制作も行う広告代理店が増えてきました。
しかし基本的に広告代理店のビジネスモデルは、広告主の広告出稿を代理・仲介して、そのマージンにより利益を得る「マージンビジネス」でした。
ところが、長年にわたって確立されてきたこのビジネスモデルを、近年変えざるを得なくなってきています。
広告代理店は、なぜビジネスモデルの変化を迫られているのでしょうか。
本ページでは、広告代理店に新しいビジネスモデルが求められる理由を紐解きながら、今後どのようなニーズに応えていくべきかを解説していきます。
広告代理店の従来のビジネスモデル
1800年代にイギリスで新聞のスペースを代理で購入し、それをクライアントに売り出して手数料を得る会社が現れました。これが広告代理店の起源と言われています。
このように「広告枠を代理で購入して効率よく広告主に売り、手数料を得る」のがもっともオーソドックスな広告代理店の収益構造です。
広告代理店の新しいビジネスモデルについて説明する前に、共通認識としての現状を確認しておきます。
広告代理店のビジネスモデルは大きく分けて4つあります。
1.広告メディアの販売
先述したように、広告メディアの販売は最も基本的な広告代理店の形です。
広告代理店がテレビ局や雑誌などのメディア側から広告枠を安く仕入れ、それを広告主に販売することで手数料(マージン)を得ます。
2.広告物の制作
広告を掲載したい企業の要望に合わせて、広告物を制作する業務があります。これも広告代理店の主要なビジネスモデルのひとつです。
広告物とは、新聞・雑誌用の広告、テレビCMの素材、看板、交通広告(駅や電車内の広告)、ネット広告(バナーや記事広告など)です。
とくに、制作部署を持たない企業(広告主)は広告物を自社で用意できることは少なく、広告代理店が制作するのが一般的となっています。
3.イベント、展示、サンプリング
企業が新商品などを売り出したいとき、一度に多くの人へ認知してもらえるよう、イベントなどでサンプリングを行うことがあります。
このようなイベント開催やサンプリングも広告代理店の業務のひとつです。
イベント会場の確保やゲストの手配、集客のための告知やPRなどを広告代理店が一手に引き受けます。
広告代理店は、広告主に対してイベントや展示会の経費に営業管理費を加えて請求します。
4.調査業務
商品開発や新市場へ開拓するにあたり、企業は事前に競合調査や市場分析を行う必要があります。その業務を代理で受けるのも広告代理店の業務です。
このような調査業務を広告代理店が担うようになった理由には、広告がマーケティングの一部であるという点が挙げられます。
消費者・ユーザーのニーズを見出し、最適な広告を仕掛けることでクライアントの利益を最大化すると同時に、広告代理店がワンストップでマーケティングを請け負うことで、売上アップにつなげます。
広告代理店に新しいビジネスモデルが求められる理由とは?
上記のように、ビジネスの範囲が多岐にわたる広告代理店ですが、広告枠の買い付けから制作、広告運用までワンストップで受託できる「総合広告代理店」ばかりではありません。
イベント代行や調査業務までも行うなど業務内容が多岐に渡れば渡るほど、業務にかかる工数(時間)と人件費もかさみます。
顧客がすべてを広告代理店に丸投げすることが常態化すると、クリエイティブやプロモーションといった業務以外にも作業が増え続け、つまるところ広告代理店というよりは、「下請け業者」のようになってしまうという問題があります。
ほかにも、広告代理店が新しいビジネスモデルの可能性を探らなくてはならない理由はまだあります。
広告のデジタル化
これまでは、新聞・雑誌などの紙媒体やテレビCMのような広告映像、ラジオでの広告などいわゆる「マスコミ4媒体」といわれる広告枠を中心にビジネスをしてきた広告代理店。
しかし、インターネットが身近にある生活が普通になったことによって、広告のデジタル化によるマーケティングシフトがすでに起きています。
2021年のインターネット広告費は前年比21.4%増の2兆7,052億円に達し、市場は拡大を続けています。一方でマスコミ4媒体広告費は同8.9%増の2兆4,538億円。
インターネット広告費がマスコミ4媒体の広告費を初めて上回ったことが、株式会社電通「2021年日本の広告費」のレポートにより発表されています。
4大マスメディアへの広告出稿に頼りきった経営では、生き残りが難しくなるのは目に見えていると考えるべきです。
「マスコミ4媒体」の衰退
インターネット広告が成長を続ける一方で、テレビや新聞・雑誌などのいわゆる「マスコミ4媒体」は衰退の一途をたどっています。
株式会社電通の調査によると、日本の広告費は、代表的な広告媒体である新聞・雑誌・テレビ・ラジオを合わせた「マスコミ4媒体」は全体の36%。
一方でインターネット広告は39.8%と、インターネット広告単体だけで全体の4割近くを占めています。
2021年はインターネット広告が2兆7,052億円と、マスコミ4媒体広告の2兆4,538億円を上回ったことを先ほども説明したように、今後はデジタル広告のニーズに応えられないと、広告代理店としての役割が果たせなくなる可能性があります。
情報参照元:株式会社電通「2021年日本の広告費」(https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0224-010496.html)
広告ニーズの変化
インターネットの台頭により、広告の形式にも変化があらわれています。これまでは、テレビCMのように「視聴者が目にするだろう」という予測だけで広告を出稿する企業が多数ありました。
不特定多数のターゲットに向け、製品やサービスの認知を狙う広告戦略です。
一方でインターネット広告なら、ターゲットのニーズに合わせた広告を最適なタイミングで出稿できます。
従来のインターネット広告では、ユーザーが閲覧する際に邪魔になる、個人の閲覧履歴をリターゲティング広告に使われるなど、広告に対するネガティブな印象も少なくありませんでした。
しかし最近では広告に興味がないユーザーは広告をスキップでき、関心があるユーザーはそのまま閲覧できるなど、配信の形が多様化。
広告を見るか見ないかを「ユーザー自身が選ぶ」パーソナライズの時代になってきた今、従来のように広告物を制作して納品するだけのビジネスモデルでは、業界での生き残りがさらに難しくなっていくと考えられます。
メディアの転換期
インターネットが主流になったことによって、「新聞離れ」や「雑誌離れ」、いわゆる紙媒体が手に取られなくなってきています。
さらに動画配信サービスの台頭によって若い世代の「テレビ離れ」も起こり、普段テレビを観る人も少なくなってきました。Netflixやamazonの「Prime Video」など配信型チャンネルも地上波テレビの広告枠を脅かしています。
観る人が少なくなれば、そのぶん広告本来の目的を果たせなくなり、広告価値が低くなります。したがって広告代理店は、広告費の値下げだけでは競争に勝てなくなります。
広告料金だけではない、競合の広告代理店にはない付加価値を見出していかなければ、広告主の獲得はますます難しくなっていきます。
企業格差の拡大
昨今の広告業界では、資本力や事業規模を持つ総合広告代理店がM&Aによって企業規模をさらに大きくしているため、上位企業とそれ以外の小さな規模の差が拡大しています。
大手広告代理店は、広告制作から出稿まで一貫した対応力を持っており、その対応力や価格競争に打ち勝つことは容易ではありません。
また、これら企業は既存にとらわれない事業展開を目指しており、さらなる成長の余地も推測されます。
今後中小規模の広告代理店が生き残るためには、大手広告代理店が販売していない広告サービスを展開するといった「差別化戦略」が不可欠であることは間違いありません。
広告代理店の新しいビジネスモデル
市場の変化によってユーザーの価値も多様化した今、広告代理店はどういったビジネスモデルに変わるべきなのでしょうか。
ここからは、広告代理店の新しいビジネスモデルについて解説していきます。
新しいデジタル広告への対応力をつける
Web広告やデジタルサイネージ広告など、インターネット上の広告手法は増え続けています。
マスコミ4媒体の中にはデジタル広告との連動が可能な広告枠もありますが、Web広告の制作や運用には、知見や技術をもった人材が新たに必要になります。
専門スキルを持った人員の確保や人材育成に力を注ぎ、新しい広告の登場に対応できるよう、体制を整えておかなくはなりません。
すでに「広告枠を打って、納品したら終わり」という時代ではなくなっていますので、新しいデジタル広告への対応力をつけて顧客のニーズに応えられるようにすることが、非常に重要です。
旧態依然とした広告代理店業務からの脱却
デジタルマーケティングの登場によって、ユーザーの閲覧行動や購買行動などの詳細なデータが取得できるようになりました。
だれが視聴したかわからないテレビCMや、どれだけの人が読んだかわからない紙媒体とは異なり、インターネット広告を運用することで得られるさまざまなデータは企業の経営にも直結する重要な役割を担います。
広告業においてこの根拠のある数字はいわば「宝の山」であり、デジタルマーケティングを制する企業が勝ち組になる、と言っていいでしょう。
ネットだけで比較検討されるなかでどう集客していくか、多様化したクライアントのニーズに応えるためにはどのような方法が最適か。
広告販売の代理店ではなく、顧客の利益を追求するパートナーシップを結ぶ、という概念が求められています。
悪い言い方をすれば、丸投げされて広告運用をしていればいい時代もありましたが、これからはそうは問屋が卸しません。
デジタルマーケティングのインハウス化がさらに進めば、広告制作や運用を代理で行うというビジネスは、存在価値がどんどん下がっていくだけです。
代理店ではなくコンサルテーション
これまでの広告代理店の収益は、広告を販売した金額からマージンを取る「マージンビジネス」が主流でした。
しかし、この収益構造はそもそも日本特有のもので、世界的にも独特な慣習です。
広告のニーズとユーザーの価値が多様化した今、これからは単発の広告で効果を出していくことは容易ではありません。なぜなら消費者のリテラシーが上がり、広告に踊らされる機会が激減しているからです。
クライアントの現状や課題を俯瞰でとらえ、長期的な視点でとらえたマーケティング戦略の提案ができる、コンサル型の広告代理店のニーズは今後高まります。
たとえばニッチなBtoB業界やターゲットを絞り込んだ広告商材を扱うなどして、「この業界で広告を出すなら、この代理店に相談するしかない」と思ってもらえるようなビジネスを展開する。
ほかの広告代理店が扱っていないWeb施策の販売を手掛けるのも新しいビジネスモデルのひとつです。
2023年にはGoogleの広告に関して、大きな規制の動きが予定されています。個人情報保護の観点から、閲覧履歴などの行動履歴の閲覧ができなくなるというものです(Google社「2023年半ばから2023年後半までに、Google ChromeにおけるCookieサポートを段階的に廃止する」と発表)。
リスティング広告やリターゲティング広告など従来のWeb広告も運用の見直しが必要になる可能性が高いことから、いまのうちに対策が必要であると考えている広告主も増えてきています。
ロールアウト(運用開始)時期はまだアナウンスされていませんが、Web広告ビジネスの近未来を見すえた新しいサービス、新しいビジネスの展開をスタートさせるチャンスかもしれません。
ピンチをピンチのまま放置するか、チャンスに変えるか。経営陣の手腕が問われるところでしょう。
◆関連ページ:「クッキーレスとは?集客・マーケティングの対策手段を合わせて紹介」
広告代理店にはなぜ新しいビジネスモデルまとめ
インターネットが主流となり、広告業界にもマーケティングシフトが起きて、広告代理店の在り方も考え直す必要に迫られました。
また、ツールやシステムを活用して顧客自身が広告運用できるようになった点も大きな変化と言えます。
たとえばテレビCMの制作と運用を請け負う会社が増え、視聴者のマーケティングデータを提供して最適化をうたう企業も出てきています。
したがってただ広告枠を確保して販売する広告代理店の価値そのものが下がり続けています。
ネット広告は、新聞やテレビのように物理的な枠数の制限がありません。枠自体を抑えていることの価値も低いため、それ以外の価値を見出す必要があるのです。
広告代理店に求められる新しいビジネスモデルでは、自社がクライアントにとってどのような価値提供ができるかを明確にし、事業成長へのパートナーへと変化する必要があります。
広告に必須のマーケティングの知識を活かしつつ、クライアントに寄り添えるパートナーとして認識してもらえるように、自社ならではの価値を高めていきましょう。
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