インダストリアルマーケティングの戦略手法と押さえるべきポイント
最終更新日:2023年08月02日
インダストリアルマーケティングでは、「一般消費者向け」とは違ったマーケティング施策が必要です。ここでは、インダストリアルマーケティングの特徴や戦略を詳しく解説していきます。
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インダストリアルマーケティングの特徴
インダストリアルマーケティングとは、製品の原材料や生産設備などの生産財を企業向けに販売するためのマーケティングです。一般消費者向けのマーケティングとは異なる点が多いため、注意が必要です。インダストリアルマーケティングの特徴を3つ紹介します。
購買意思決定関与者が多い
インダストリアルマーケティングは、企業どうしの取引である「BtoBビジネス」です。一般消費者を対象とする「BtoCビジネス」と比較すると、BtoBビジネスには、取引の意思決定関与者が多いという特徴があります。
たとえば家具メーカーが原料の木材の仕入れ先を変更する際には、以下の意思決定関与者が存在します。
- 現場の職人
- 生産の現場責任者
- 生産工程管理の責任者
- 仕入れの担当者
- 仕入れを担当する部署の責任者
- 生産部門を統括する経営幹部
- 最高経営責任者
自社から木材を購入してもらいたければ、これらの意思決定関与者に、仕入れ先の変更を認めてもらう必要があります。インダストリアルマーケティングでは、多様な関係者に対して営業活動を行う必要があるのです。
決定までに時間がかかる
BtoBビジネスでは関係者が多いため、意思決定に時間がかかります。そのため最初の接触から取引完了まで、営業担当者は顧客と連絡を取り合って、長い期間フォローを続けることになります。
最初の取引完了までは大変ですが、いったん顧客との取引が始まれば、継続した取引につながりやすいです。インダストリアルマーケティングでは、顧客と長期間にわたって良好な関係を維持することを意識しましょう。
情緒的購買行動が起こりにくい
BtoBビジネスでは情緒的な購買行動が起こりにくいです。多様な意思決定者が関わるため、担当者ひとりの感情を動かしても、取引にはつながりません。
BtoCビジネスであれば、広告などで消費者の購買意欲を高めれば、そのまま商品の購入につなげられます。しかしインダストリアルマーケティングでは、そうした手法は通用しません。主に経済的な合理性を伝えることで、自社と取引する意義を理解してもらう必要があります。
インダストリアルマーケティング戦略手法
BtoBビジネスの企業が採用する戦略として「CRM戦略」と「SCM戦略」を解説します。インダストリアルマーケティング戦略の手法を考えるうえで、参考にしてください。
CRM戦略
「CRM」は「Customer Relationship Management」の略称で、CRM戦略とは、顧客との関係性を管理する戦略のことです。CRM戦略で得られるメリットを3つ紹介します。
既存顧客との長期的な取引が見込める
CRM戦略を立てることで、既存顧客との長期的な取引が見込めます。顧客とのやり取りの一つひとつを管理し、長期的な取引につながるような施策を組み込めるからです。
たとえば納品した機械の故障を修理した際には、その記録をすぐに確認できる状態で保管しておくと良いでしょう。そして顧客から機械の不具合の連絡があった際には、すぐに保管しておいた記録を調べて、以前の故障と関連がないかを調べます。こうした細やかな配慮をすることで、顧客は自社への信頼を深めてくれるのです。
顧客の深層的なニーズがわかる
顧客の深層的なニーズがわかることも、CRM戦略のメリットです。顧客との信頼関係を築くことで、顧客自身も自覚していない課題に気づけるのです。
たとえば顧客が薬品の納品日を細かく指定してきたとします。顧客との深い関係があれば、言われた通りに納品するだけでなく、なぜ納品日にこだわるのかを聞き出せます。そして納品日にこだわる理由が「その薬品を長い期間保存できないから」だとわかれば、薬品の保存方法の改善を自社から提案できるのです。
このように深層的なニーズを解決できると、顧客から感謝されます。提案によって自社の売上も増えるため、顧客との良い関係をさらに深められるでしょう。
顧客ごとにモノやサービスをカスタマイズできる
CRM戦略によって、顧客ごとにモノやサービスをカスタマイズできるようになります。顧客が何を求めているのかがわかるため、細かい対応が可能になるのです。
たとえば信頼関係がある顧客から、倉庫の棚のサイズを教えてもらえたとします。棚のサイズがわかれば、その顧客向けの商品のパッケージを、棚にぴったり収まる大きさに変更できます。こうした配慮があれば、顧客は自社を特別なパートナーだと感じて、喜んで取引を続けてくれるでしょう。
SCM戦略
「SCM」は「Supply Chain Management」の略称です。SCM戦略とは、原材料の調達から商品が顧客企業に届くまでのまでの生産・流通プロセスを管理する戦略のことです。SCM戦略で得られるメリットを2つ紹介します。
売上の向上が見込める
SCM戦略によって、売上の向上が見込めます。流通情報を細かくチェックすることで、市場で求められている商品がわかるため、売れる商品に絞って効率良く生産できるからです。
流通情報から顧客のニーズを知ることは、ニーズを満たす新商品の開発にもつながります。顧客の課題を解決する商品を提供すれば、高い価格でも購入してもらえるため、大きな売上と利益につながるでしょう。
コスト削減が見込める
コスト削減が見込めることも、SCM戦略のメリットです。生産プロセス全体を見たうえで、個々のプロセスを見直すことで、ムダを削れるようになります。
たとえば製品の生産の上流工程で捨てていた資材が、少し手を加えるだけで下流工程で再利用できることがわかれば、資材の量を節約できます。工程が多い生産現場ほどムダが生じやすいため、SCM戦略によるコスト削減効果も大きくなるでしょう。
インダストリアルマーケティングの注意点
インダストリアルマーケティングでターゲットとする顧客企業には、BtoCビジネスで有効なマーケティング手法が通用しない場合があります。インダストリアルマーケティングにおいて、知っておくべき注意点を3つ紹介します。
最終ユーザーとの距離がある
原材料や生産設備などの生産財を扱う企業は、最後に完成した製品を手に取る一般消費者との接点が少なくなりがちです。そのため生産財を扱う企業には、一般消費者からの意見を届けることを意識しましょう。
たとえば消費者を対象とした独自のアンケート調査を行い、その結果を顧客企業に伝えることも、インダストリアルマーケティングの一部です。顧客に「役に立つ情報を教えてくれる会社だ」と感じてもらることで、その後の取引につなげやすくなります。
自社の強みやビジネスモデルを明確にしにくい
生産財を扱う企業は、自社の強みやビジネスモデルを明確にしにくいことに、悩んでいる場合が多いです。こうした顧客企業の悩みを解決することで、自社の売上アップにつなげられます。
たとえば競合他社と比べた際の強みを伝え、その強みを活かすための施策を提案すると、顧客は大きな関心を持つでしょう。その施策の実現のために自社の商品を購入してもらうことで、顧客企業と自社の利益を同時に伸ばしていけるのです。
学びにくい・学ぶ環境が整っていない
インダストリアルマーケティングは、学ぶ環境が整っておらず、学びにくいことに注意が必要です。この点が、マーケティングの講師が多いBtoCビジネスとは違います。
インダストリアルマーケティングを詳しく解説している書籍も少ないため、最初から理論を学ぼうとしてもうまくいかないでしょう。現場でのトライ&エラーを繰り返しながら、マーケティング手法を改善していく意識が必要です。
インダストリアルマーケティング戦略のポイント
インダストリアルマーケティング戦略を成功させるためのポイントを3つ紹介します。
顧客特性を理解する
インダストリアルマーケティングを成功させるためには、顧客の特性を理解する必要があります。顧客によって何を重視するかが異なるので、それに合わせたマーケティングを心がけましょう。
たとえば医療分野の顧客が、品質と安全性を何よりも重視しているとします。そんな顧客にセールスをする際に、製品の価格の安さについて長々と説明していたのでは「わが社の価値基準を何もわかっていない会社だな」と顧客に思われてしまうでしょう。
セールスの際には、どれだけ厳密に製品の品質と安全性を検査しているかを、具体的なデータとともに示すべきです。顧客は「わが社の方針が共有されている」と感じるため、コミュニケーションがスムーズに進み、受注につながりやすくなります。
広告戦略を確立する
広告戦略を確立することも、インダストリアルマーケティングを成功させるために重要です。BtoCビジネスでは効果を発揮するテレビCMも、BtoBビジネスにおいては費用対効果が悪くなりがちであるなど、広告媒体ごとの特性を理解して使い分けましょう。
インダストリアルマーケティングでは、広告を見せる人を絞り込めるWeb広告を活用するべきです。たとえば「塩化ビニル樹脂 販売業者」とGoogleで検索した結果に広告を出せば、塩化ビニル樹脂の購入に関心がありそうな人だけに、広告を見せられます。
インダストリアルマーケティングでは、限られた見込み客に広告を見せることを意識して、広告戦略を考えましょう。
効果を確認し修正する
インダストリアルマーケティングは、施策のたびに効果を確認して、修正しながら進めましょう。間違った施策を続ければ、時間と費用を浪費してしまうからです。
たとえば展示会に出展したのであれば、終了後にはどれだけ効果があったかを必ず検証しましょう。「ほとんど効果がなかった」とわかった場合は、展示方法を見直すなどの改善をするか、次回の出展をやめることを検討するべきです。
どのマーケティング施策が効果的なのかは、試してみなければわかりません。様々な施策を実行しつつ、修正を繰り返すことが大切です。
インダストリアルマーケティングは分析と理解が重要
インダストリアルマーケティングの特徴や戦略をお伝えしました。情報やノウハウがまだあまり広まっていないので、いきなり正解を目指すのは難しく、試行錯誤が必要になるでしょう。
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