「ヤオコー」の価格戦略から学ぶ経営戦略
最終更新日:2022年01月31日
この記事では、食生活提案型スーパーマーケット「サイゼリヤ」の価格戦略を解説しています。どうぞ貴社の分析や戦略立案にお役立てください。
なお、自社の価格戦略を策定するうえで重要なのは、他社の戦略をそのまま使うのではなく「自社の強み」に合った戦略を練ることです。なぜなら自社しか提供できない価値に基づく戦略は競合性が保ちやすく、価格競争も避けやすいからです。下記のページには自社の強みが導き出せる無料ワークシートを用意しておりますので、戦略策定にぜひ活かしてみてください。
ヤオコーの価格戦略のポイント
豊かで、楽しい食生活を提案するスーパーマーケット「ヤオコー」。関東エリアを中心に埼玉県・千葉県・群馬県・東京都・茨城県・神奈川県・栃木県に169店舗を展開しています。
「生活者の日常の消費生活をより豊かにすることによって、地域文化の向上・発展に寄与する」を理念として、店舗ごとに異なる顧客のニーズやライフスタイルに対応しているのが特徴です。
コロナ禍での巣ごもり需要によるまとめ買いの影響を受けて、ヤオコーも対前年比で大きな増収増益を見せています。世間の節約志向が強まると想定しているヤオコーは、具体的にどのような価格戦略を取っているのでしょうか。
本記事ではヤオコーの価格戦略のポイントについて紹介します。
価格コンシャスを支持する層に向けた商品を展開
日本国内では2020年1月から続く新型コロナウイルスの影響により、経済の先行きが不透明な状態です。これを受けてヤオコーでは、2021年以降も節約志向が強まると予想しています。
特に収入の少ない若い世代を中心に、価格コンシャスを支持する傾向が続く状態です。
価格コンシャスは消費者が「買いやすい価格」のことを表しており、リーズナブルな価格で商品を展開することで新規顧客の獲得にも期待できます。
- EDLP(常時低価格)の価格政策
- 子育て世代のニーズが高い商品の価格対応
ヤオコーではグループ全体の中期経営計画として、上記2つに注力しています。
「エブリデーロープライス(EDLP)」による顧客の定着
ヤオコーはEDLP価格戦略として「厳選100品」を展開しています。厳選100品は生活雑貨・日用品を含むグロサリー部門から厳選した100品を、1か月間低価格で販売するものです。
同様の価格戦略に取り組むスーパーマーケットにはオーケーや西友、ロピアなどがありますが、現状ではヤオコーとオーケーが価格優位を争っています。
EDLPは価格を変動させず、いつ来店しても同じ商品を同じ値段で販売しているのが特徴です。このためお客様にとって「いつでも安く買える」安心感を与えられ、固定客の獲得につなげられます。
子育て世代からニーズの高い商品の価格対応
ヤオコーでは先取りして価格対応を実施してきましたが、子育て世代やファミリー層の取り込みが課題となっていました。
そこで子育て世代やファミリー層が好んで購入する商品の価格引き下げを実施。購入率の高い冷凍食品やアイスクリームなどを中心に価格を下げました。
また、まとめ買いや均一セールなど多く購入するほど得する工夫をしたり、夕市といった限定のセールを設けたり、来店意欲を高める取り組みもヤオコーの強みです。
カテゴリー割引による既存客の支持率アップ
ヤオコーではEDLPのほかにも、カテゴリー割引を実施しています。生活雑貨・日用品を含むグロサリーなどのカテゴリーで行われています。生活雑貨や日用品は、使用期限が長く設けられており、買いだめしたい層が多いと想定されます。それらを割引することで、ストック需要も期待できるでしょう。
一般的にカテゴリー割引は特売イベントと比べてインパクトに欠けるため、それだけで新規客を獲得すること困難です。このためヤオコーのカテゴリー割引は新規顧客の獲得ではなく、既存客からの支持率アップを想定していると分析できます。
既存客であれば日常的にヤオコーを利用しており、店頭の通常価格のイメージができあがっているでしょう。そこに実施されるカテゴリー割引は既存客にとって十分な来店動機となり得ます。
ディスカウント業態「フーコット」
ヤオコーは2021年2月に新会社としてフーコットを設立しました。フーコットは「Food Cost Performance Market」を意味しており、ディスカウント業態で運営されます。
ディスカウント業態で新店舗を展開する理由は、生鮮食品を取り扱うドラッグストアが増えたことです。石川県のクスリのアオキや福岡県のコスモスは全国での出展数を伸ばしているため、スーパーマーケットの競合となっています。
これらの競合と渡り合うためにも、ディスカウント業態であるフーコットには大きな期待がかけられているでしょう。
ヤオコーの価格戦略まとめ
ヤオコーはEDLPと子育て世代のニーズへの対応を行い、29期連続で業績を伸ばしている企業です。コロナ禍による中食需要によりスーパーマーケットへのニーズは高まっているため、今後も増収増益が見込めるでしょう。
特に、ヤオコーの戦略の中でもEDLPは実施している他社もあり、これから価格戦略に取り組む企業にとって参考にしやすい戦略と言えます。
現在、スーパーマーケットチェーンは追い風を受けていますが、生鮮食品を扱うドラッグストアが台頭しており油断できない状態です。色んな企業が生き残りをかけてさまざまな手段を用いてくるでしょう。企業存続のためにも、価格戦略で成功しているヤオコーを参考にして、新たな価格競争に備えておくのも一つの手です。