事業拡大に欠かせないコア技術戦略とは?事例も詳しく紹介

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コア技術戦略とは

事業の伸展と成長に欠かせないとされる「コア技術」は、企業の強みとして他社との差別化を図る材料にもなるものです。

このコア技術をもって将来を見据える戦略のことを「コア技術戦略」と呼びます。

コア技術とは

コア技術は企業が誇る中心的な技術の呼び名であり、用途展開の中心となる部分です。

明確な定義はありませんが、企業が他社と差別化を図ることができ、なおかつ事業を進めるうえで中心になる技術が「コア技術」として位置づけられます。

コア技術は独自技術として、市場内での競合相手への優位性を獲得するためにも役立ちます。技術力の向上と、それに合わせての商品開発に取り組むことがさらなる成長に繋がります。

コアコンピタンス戦略との違い

コアコンピタンスは他社にない「競合他社を上回る能力」や「他者に真似できない能力」を指しています。

時に「底力」とも形容される能力のことですが、「顧客に対して特定の利益をもたらすスキル」とも言い換えられるでしょう。

コアコンピタンスには技術だけではなく、企業のブランド力・物流体制・生産方式・顧客管理のようなさまざまな強みが含まれています。

これらの強みを活かしたコアコンピタンス戦略は、技術力に加え企業独自のカラーやブランドを含めたすべての強みを適材適所に使っていくものです。

コア技術戦略はあくまでも技術に特化した計画ですが、コアコンピタンス戦略は技術も含めたトータル的な戦略と位置づけられています。

コア技術戦略の重要性

ここからは、コア技術戦略の重要性について詳しくみていきましょう。

他社との差別化

コア技術戦略では、競合他社との差別化とともに優位性の獲得が大きなカギとなります。

企業の核(コア)となる技術を徹底して特定の分野に活用し、改善を加えながら育成していきます。技術開発を怠ると、競合他社に優位性を獲られてしまい市場で生き残ることはできません。

他社が簡単に模倣できないところまでコア技術を高めていけば確実な差別化が期待でき、組織がより堅固になっていきます。

得意分野への経営資源の集中

ものづくりの企業だけではなく、すべての業界・業種にとって課題となるものがこの経営資源の集中です。

コア技術が複数存在する企業は技術を分散させて、それぞれの技術を高めていくことも視野に入れたいところですが、コストが重くのしかかるようであれば得意分野に一点集中することを検討します。

自社がもっとも得意としている分野・領域には、資金・技術・人材などのリソースを集中させましょう。

事業展開時の指標

コア技術を使った戦略は、事業を展開する際の基準にもなります。

自社の事業の核となる技術がなければ市場での優位性も新市場への拡大も思うようにうかないため、コア技術戦略に基づいた計画を策定し、指標に則ったロードマップを展開していきましょう。

コア技術戦略のポイント

コア技術戦略のポイント

次に具体的なコア技術戦略のポイントについて解説していきます。

コア技術は領域を絞り込む

コア技術戦略では、以下の項目を満たす技術領域を設定するところからスタートします。

  • 自社が得意としている技術
  • 高い競争力を有する技術
  • 競合他社に真似されにくい技術
  • 継続的に商品を生み出せる技術
  • 適用領域の広い技術

他社との差別化に繋げられる技術は領域を絞ったうえで集中的に投資し、技術力の向上に努めましょう。

市場ニーズに沿っていることを重視する

次に領域を絞り込んだ技術が市場のニーズに沿っているかを確認します。

技術力を高めようとすると、どうしても市場や顧客のニーズに対応しきれず変化についていけなくなる場合があります。

そのため最初からコア技術として位置づけるものは「市場ニーズに沿っている技術であること」を確認しておく必要があるのです。

たとえば二酸化炭素の排出を減らす技術は、地球温暖化が問題となっており官民一体となって対策を進めなければならない現代に即しており、市場ニーズを満たしているといえるでしょう。

様々な事業に応用できるコア技術に絞り込む

領域を絞り込むフェーズでも検討するように、「適用領域の広い技術」を選ぶことが大切です。

コア技術はそれ自体が高い競争力を持つものですが、適用対象が少ないと結果として他社に追い抜かれてしまう可能性があります。

ひとつの技術を多面的に、または将来的に多用途へ取り入れることができるかを考え、優位性のある技術を選び出します。

事業拡大はコア技術を軸として行う

事業の拡大はマーケティング戦略だけではなく、コア技術を軸にして考え、展開させていきましょう。

コア技術を軸とし、コア技術戦略を指標にすることで事業を展開させるべき方向性や可能性が見えてきます。

コア技術戦略の流れ

コア技術戦略の流れ

コア技術戦略を立てる際の具体的な流れについてみていきましょう。

コア技術として確立させる技術領域の選定

まずはコア技術として打ち出していき、さらなる技術向上を図るための領域を選定します。

ものづくりに関わる企業はテクノロジーや他社との共同・共創・コラボレーションも含めて、将来的な伸展が見込める部分をコア技術として考えていきましょう。

どの技術にも成長の可能性はあり、コア技術同士をかけ合わせた複合化技術を軸とすることもできるため、他社と肩を並べて優位性が期待できる対象を検討してください。

注力をするコア技術 = 自社ならではの強みを選定する方法は様々ですが、その中の一つは「3C分析」です。自社・顧客・競合を分析し、その結果から戦略の軸とする強みを抽出するフレームワークです。下記には無料でダウンロードできる3C分析を簡単に進められるワークシートを用意していますので、ぜひ活用してみてください。

コア技術を基に商品を開発成功させる

検討の結果見いだされたコア技術を基礎として、商品を開発していきます。

すでにコア技術を商品に適用している場合は、さらに改良や新しい価値を加えられないか、研究開発を進める必要があります。

ケーススタディとして、大手企業や多方面に事業を展開する企業の例を参考にしながら商品の開発を進めることもできます。

新しい技術を融合させたり、市場のニーズとコア技術を組み合わせた商品開発を目指したりと、アイディアやヒントも取り入れていきましょう。

コア技術を軸に事業を展開する

コア技術を基にして商品を開発し、そこを軸として事業を展開していきます。

市場のニーズに応じて国内・海外へと展開し、広告戦略とも併せて事業を進めていきましょう。

コア技術を軸にすると、新製品の開発から新用途の開拓、さらには新需要の創造までが可能となり、従来にない新たな顧客との繋がりも生まれます。

コア技術は技術そのものの育成が必要不可欠であり、そこに携わる人材も育てていかなければなりません。

コスト面も考慮しながら進める必要がありますが、コア技術を活かした取り組みを続けていけば次世代技術へのブラッシュアップや新市場への拡大が期待できます。

戦略実行後の見直しと改善を行う

コア技術戦略を軸に事業を行ったあとは、実行後に随時見直しのプロセスを導入し、コストやスケジュールなどの改善点を洗い出しましょう。

たとえば事業の方向性やコア技術の見直し、人材に関する問題点などの改善点が見いだされたら、それぞれについて可能なところから改善を加えていきます。

計画のあとは実行に移し、実行のあとは改善を施すPDCAサイクルに沿っていくことで、コア技術戦略がさらに効果的かつ無駄のないものに仕上がっていきます。

コア技術戦略の成功事例

ここからはコア技術戦略の成功事例として、富士フィルム・味の素・花王・オリンパス・ダイキンの5つを紹介します。

それぞれのケースについて、どのようなコア技術を用いて事業を展開しているのか詳しくチェックしていきましょう。

富士フィルム

富士フィルムキャプチャ画像
引用元:アスタリフト : 富士フイルム [日本] (https://www.fujifilm.com/jp/ja/consumer/skincare/astalift)

かつて写真フィルム市場で活躍してきた富士フィルムでは、コア技術として計12の技術を有しています。

粒子形成技術・ナノ分散技術・製膜技術といったさまざまな分野・製品に応用できる技術から、有機化合物の分子構造を自由に変換できる機能性ポリマーなど、原材料の製造に関わる技術もコア技術として利用しています。

銀塩写真の研究開発によって培ったさまざまな技術を独自のコア技術に昇華しており、ヘルスケア・エネルギー・医療機器・情報通信・環境と従来とは異なる分野での売上を伸ばし、将来的にも「共創」を可能としています。

現在も写真関連事業に関わっており、画像システムなどIT技術を取り入れたイノベーションにも積極的に取り組んでいます。

味の素

味の素キャプチャ画像
引用元:研究開発の領域 | 研究開発 | 味の素グループ (https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/rd/domains_solutions/)

「食のリーディングカンパニー」である味の素は、科学的な視点を重視し調味料から飲料、冷凍食品までさまざまなカテゴリーの「食」に関わっています。

コア技術としては、1909年に世界初の「うま味」調味料として発売した「味の素®」を軸に、アミノ酸を使った研究開発を続けながら幅広い事業領域に「アミノサイエンス」を展開。

従来のうま味調味料に加えて、乳牛用リジン製剤・がんリスク評価用バイオマーカー・層間絶縁材料ABFフィルムなどが実用化されています。

世界No.1のアミノ酸メーカーとして知られるようになった現在でも、研究開発費326億円(2015年度連結実績)を投資し、事業の成長に取り組んでいます。

花王

花王キャプチャ画像
引用元:花王 | ケミカル (https://www.kao.com/jp/corporate/research-development/product-development/chemicals/)

洗剤や石鹸など一般消費者向けの製品を扱う消費財化学メーカー・花王では、工業用製品開発のベースとなる界面化学の分野について強みを持っています。

「界面物性制御技術」「ナノ表面改質技術」「機能性分子設計技術」の3点とそれらの複合化技術をコア技術として研究・開発を続けており、創業以来の事業として世界10ヶ所に研究・生産拠点を設置しています。

電子部品用の剥離剤や水性インクジェット用インク、半導体洗浄剤やリチウムイオン電池用カーボン分散剤などの工業用製品を第一線の現場に提供しています。

オリンパス

オリンパスキャプチャ画像
引用元:人間が入り込めないところにある傷や欠損の検査を支えるアクセス技術・計測技術 | オリンパス
(https://www.olympus.co.jp/technology/core/access/?page=technology_technology_core)


光学機器・電子機器メーカーのオリンパス株式会社は、大正8年に顕微鏡の国産化・光学機械の製作を目的として設立され、写真機の製造からスタートした企業です。

5つの「コア技術群」を設定し、医療機器・測定器の開発製造から映像事業・医療事業・非破壊検査事業と多方面に事業を展開中。

内視鏡の細径化や高速オートフォーカスなど、対象に近づくための「アクセス技術群」を筆頭に「イメージング/センシング技術群」で対象物をイメージ化します。

「認識・解析」と「治療・処置」のプロセスを経て「レポート・エビデンス」で総まとめを行えるように、あらゆる過程において一貫して作業が行える技術を有しています。

ダイキン工業

ダイキン工業キャプチャ画像
引用元:ダイキンは3つのコア技術で空調市場をリードします。 | ダイキン工業株式会社
(https://www.daikin.co.jp/corporate/overview/glance/modals/05_3_core/)


家庭用・事業用ルームエアコン製品で知られるダイキン工業は、空調市場では3つのコア技術を保有し事業を展開しています。

空気中から熱を集めて移動させる「ヒートポンプ」熱を効率的に運ぶ「冷媒制御技術」省エネ性能を高めて環境に配慮する「インバーター」の3つを軸に、室内環境の快適化を目指しています。

一方で技術のダイキンとも評される「材料設計」「コンパウンド」「加工」「評価・分析」にそれぞれコア技術を持ち、世界中の先端技術を取り入れながら新技術を研究。

フッ素化学のエキスパートや空調に関する専門の技術者が、事業の枠を超えてビジネス領域の拡大に取り組んでいます。

コア技術戦略で事業成功を目指す

コア技術は企業の事業拡大に欠かせないコアコンピタンスとは異なり、将来において広く展開できる可能性のある中心的な技術を指します。

コア技術の選定と決定は市場の動向やニーズ、競合他社の現況も踏まえて決定し、新技術に昇華できるように投資を行いながら研究・開発を進めましょう。

コア技術を駆使した商品を展開しながら、ビジネス領域を拡大できないか・他社や他の技術と連携できないかなどを考え、戦略的に事業を進める工夫も必要です。

技術の向上は企業の努力によるものですが、事業を広く周知し認知度を高めていくには広報・マーケティングが役立ちます。

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