【3分で理解】非価格競争とは?事例を交えて解説
最終更新日:2023年11月08日
いま「非価格競争」という、価格以外で戦う戦略が注目されています。安い価格で大量に売る、という戦略が世の中に通じなくなってきたという背景もあり、マス商品ではないものに、スポットが当たる傾向も強くなってきました。
とはいっても、自社の場合何をもとに戦えばよいのか、どうやってそれをアピールすればよいのかとお悩みの方も多いでしょう。
ここでは、非価格競争の例と価格競争から脱却して成功を収めた事例をもとに紹介します。自社ブランドの今後の方向性や今後の戦略の参考にしてみてください。
なお、価格競争から抜け出すには、競合にはない自社だけの強みが必要です。下記のページには自社と環境の分析によってその強みが導き出せる無料ワークシートを用意しておりますので、ぜひ自社の戦略策定に活かしてみてください。
非価格競争とは
非価格競争とは、価格による競争を図るのではなく、価格以外の部分で差別化を図り商品の魅力を加えることを言います。
一般的には同等の品質やデザインがあると、価格が安いものを顧客は選択します。そのため、売上アップのために少しでも商品を安くしようとしてコストダウンする傾向が見られます。
しかし、コストダウンをすると他の企業もこぞって商品を安くしようとコストダウンをしますし、東南アジアを中心に海外で生産された製品などと価格で対抗するのは難しいのが現実です。
また価格競争は終わりがなく、企業としても疲弊しやすいことから価格以外で競争をするという非価格競争に注目が集まるようになりました。
非価格競争の例
非価格競争で争われるのは、次のような分野です。
- ネーミング(ブランド)
- デザイン
- パッケージ(包装)
- 品質
- 機能
- 新しい用途の開発・提案
- 流通
- 告知・販促
- アフターサービス
各業界でも非価格競争で差別化を図る為に様々な努力が見られます。具体的にどの部分で差別化を図っているのか、製造業と小売業で見てみます。
製造業
製造業では、商品を軸にして差別化を図ります。たとえば、他社にはない商品のデザインや機能です。
しかし、ここで注意すべきところは、顧客のニーズにしっかりと答えているかという点です。どんなに素晴らしい商品でも、使い勝手が悪いと買い手がつかず商品が売れなくなります。
顧客のニーズを理解した上で、商品そのものに価値を持たせ、差別化を図るのが重要と言えるでしょう。
小売業
小売業では、似たような商品を他社でも取り扱っているケースが多いので、主に売り方で差別化を図ります。
小売業の基本は、いかに売れる商品を仕入れるかですが、他にも挨拶対応や店舗機能で顧客に価値を感じてもらうことも重要です。
商品そのものの品質ももちろんですが、店舗に来て購入するという体験を楽しんでもらい、「また来よう」と感じさせる工夫が求められます。
中小企業こそ価格競争を避けるべき
中小企業のマーケティングの基本は、価格競争を避けることです。なぜならば、価格競争では大企業に負ける傾向があるからです。
価格で勝負しようとすると顧客は低価格に逃げていくことや、体力勝負の消耗戦になりやすいのがその一因と言えます。また、もし価格での優位性を一時的につくれても、競争相手がその気になればすぐに巻き返されてしまいます。
中小企業と比べると、当然大企業の資金源は優れています。価格面での競争では、長期的に見て不利と言えるでしょう。
中小企業は価格競争を避け、非価格競争で大企業に対抗できる魅力的な機能やデザインなどで勝負をすることをおすすめします。
非価格競争に持ち込むには
それでは、非価格競争に持ち込んで他社と差をつけるためにはどうしたらよいのでしょうか。意識したいポイントを紹介します。
価格以外の部分を徹底的に意識することで、商品の魅力を引上げ売上に直結していきます。
価格競争と非価格競争の違いを知る
まずは価格競争と非価格競争の違いを知ることが、価格競争に陥らないための価値提供につながります。
たとえばAとBという車があるとします。それぞれ違う会社が売り出していて、どちらも人気の車です。
同じような性能・売り出し方の場合、Aという車が150万円で、Bが140万円としたら顧客は少しでも安い方へと目が行きます。
安い車が売れる傾向が見られ、両社ともに相手よりも安い価格で売り出そうと値引をしていくのことになり、価格競争が生じます。しかし、いくら値引きしていくといっても値引き価格も限界があります。
反対に非価格競争では、価格は問題になりません。もし両方ともに同じ値段であれば、車の性能・デザインといった付加価値を見て車を選びます。
たとえばAでは斬新なデザイン、Bは低燃費が売りだった場合、多少の価格差があったとしても顧客は自分が望む見た目あるいは性能を持っているほうの車に魅力を感じます。
A、Bともに低燃費が売りで客層がかぶっている場合でも、競争は値引きではなく性能の高さによる競争になります。
このように価格競争では値引き価格の限界が見られますが、非価格競争ではお互い機能性や性能などの特徴に磨きをかけるため、価格以外での付加価値が上がっていくことになります。
顧客の判断基準を知る
マーケティングにおいて、顧客の判断基準を把握しておくことも重要です。
判断基準は次の3つに分類できます。
- 客観的価値
- 主観的価値
- 関係性価値
それぞれを分けて把握しておくことで、なにが顧客の購入の判断基準となっているかが理解できます。
客観的価値
客観的価値は、商品を生産するにあたり費やした時間や労働力のことを指します。費やした時間や労働力により商品の価値が決まります。
主観的価値
顧客の使用価値を指します。使用価値とは、商品のブランド力や信頼のことです。
ブランド名だけで購入する人もいれば、普段使っている性能や使い勝手がよく信頼を寄せている場合に使われます。
関係性価値
客観的価値や主観的価値を超えて、その商品やサービスを使い続ける判断基準を関係性価値といいます。
主観的価値や客観的価値は企業の資源より左右されますが、関係性価値においては資源ではなく顧客への情熱や知恵が当てはまります。
顧客の求める品質を向上させる
物がありふれた世の中で、大半の顧客にとって必要なものはすでに揃っています。
その必要な物の中に、さらに付加価値が加わるものがないかをリサーチを行い、品質を向上させることで購買意欲を駆り立てることができます。
ブランド力をつける
顧客に商品やサービスに対して共通のイメージを持ってもらうことで、ブランド力をつけることができます。
ブランド力をつけることで以下のようなメリットがあります。
- 競合との差別化
- 長期的な売り上げの確保が可能
- ブランド自体に価値が生まれ高い利益率が得られる
- 第一想起されるなど認知度が高まる
ブランド力のない企業が提供するサービスや商品に対し、顧客はそのこだわりや競合製品との違いが理解できません。したがって、最終的に価格競争に巻き込まれる可能性があります。
価格競争に巻き込まれないためにも、顧客に求められるブランド力を確立することが重要です。
独自性の確立
ブランド力と似た部分がありますが、独自性の確立は必要不可欠です。別の言い方をすれば、唯一無二の存在にこそ価値が生まれます。
たとえば「~がほしいときはAを買おう!」「~にこだわるときはAを買おう」と第一想起してもらえるようになれば、独自性の高いブランドが確立されたと言ってよいと思います。
ただし注意しなければいけないのは、自己満足的なこだわりに終始しないようにする点。どれだけこだわっていても、そのこだわりが消費者に理解されないものであったり、顧客に価値を感じてもらえないものであったりすれば、なんの意味もありません。
代替品のないオンリーワンを目指す
他にはないものを提示することで、オンリーワンとなり独占状態となります。
独占状態となった場合には価格競争に巻き込まれず、安定的に収益を上げていくことができます。
他にはないオリジナリティあふれる製品を生み出し、オンリーワンを目指すことによって、価格競争からは無縁の存在になれます。
非価格競争の事例:コンビニ編
店舗数も増え、生活にも欠かせることができなくなったコンビニでも非価格競争が見られます。
日本で知名度の高いコンビニというと、セブン-イレブンとファミリーマート、ローソンがあります。
それぞれどのようにして非価格競争の成功を収めているのでしょうか。
セブン-イレブン
セブンイレブンでは、年間販売数、店舗数、平均客単価、平均来客数、平均日販、そのいずれも業界トップに立っています。
トップに立てている理由として、徹底したドミナント戦略と、おいしさとオリジナリティを追求し続ける企業努力があるからです。
特に主婦層からの支持率が高く、惣菜など種類豊富で美味しいと評価が高いです。
非価格競争の成功例
おいしさを生み出すセブンイレブンが非価格競争で成功を収めたのは、いち早く消費者の需要をキャッチし、世間のニーズにあった品質が高いものを提供し続けたことが大きな理由です。
たとえば、ロットの小さな惣菜を扱うようになったのは、コンビニ客の高齢化をいち早くキャッチし、需要に応えたからです。
いまではめずらしくなくなりましたが、独り暮らしの女性などの中食などのニーズは、まだまだ高まり続けるはずです。
ファミリーマート
ファミリーマートでは、サークルKサンクスを統合したことで、店舗数がローソンを追い越しました。ライバルのセブンイレブンに迫るためには、店舗数の拡大が必要不可欠でした。
また統合したことによって、サークルKサンクスにあった商品がファミリーマートの商品へと代替され、サークルKサンクスの顧客も取り込みました。
非価格競争の成功例
非価格競争に成功した戦略として、商品開発とコラボ商品、薬局併設があげられます。
商品開発では、電子レンジで加熱調理ができる「チルドラーメン」が大ヒットし、顧客から高品質と高評価を得ました。コラボ商品ではRIZAPとコラボし、パンやスイーツなどを手掛けてダイエットをしている方への販売を促進しました。
また、店内で栄養相談ができる薬局併設店舗を展開し、メディカルフードとコンビニ商品を両方購入できるような店舗設計にも着手しています。
ローソン
大手コンビニの中で店舗数は少ないですが、セブンイレブンやファミリーマートと差別化を図った政策を何点か打ち出し、非価格競争で成功を収めています。
非価格競争の成功例
ローソンが成功を収めた理由として、店舗形態の変化と、客単価アップへの施策、コンビニ銀行に参入したことが上げられます。
店舗形態の変化は、働く女性やシニア層の増加を受けて、スーパーマーケットの代わりになるような品ぞろえを目指し、コンビニの顧客の需要増を目指しました。
客単価のアップの施策として、ローソン独自のウチカフェスイーツを作り、レジ近くでもう一品、二品を購入したくなるような売り場を構成しました。
また2016年11月に、三菱東京UFJ銀行と提携を組み銀行を設立し、コンビニが銀行市場に参入と大きな話題を呼びました。
非価格競争の事例:自動車業界編
自動車業界でも価格競争に巻き込まれ、マーケティングを徹底的に行い非価格競争に引き込んでいるのはスバルです。
スバルが失敗からどのように成功に導いたのかを見ていきましょう。
スバル
2002年から2006年にかけて開発された「レガシィアウトバック」や国内向けの軽自動車「R1」「R2」、米国向けの多目的車SUV「トライベッカ」という商品が開発されました。
完成度は高かったもののユーザー目線ではないため、売れ行きが芳しくありませんでした。
売れ残った車を値引きをして売りさばくといった価格競争に巻き込まれた過去があります。
非価格競争の成功例
2007年に組織改革で、グローバルマーケティング本部を設置しました。
市場のニーズをしっかりと調査を行い、スバルの特徴である水平対向エンジンや四輪駆動システムなど高い走行性能を織り交ぜるといったオリジナリティを確立したのです。
その結果、2012年には世界販売台数見通しは約72万台と、国内最大手のトヨタ自動車と比べて12分の1の販売台数ですが、根強いファンを獲得し成功を収めています。
ユーザーのニーズをしっかりと捉え、オリジナリティを出すことでファンを獲得できた事例です。
非価格競争の事例:靴業界編
靴業界でも下請けから自社販売へとシフトを変更して成功を収めている「徳武産業株式会社」という会社があります。
元はどのような会社で、成功を収めたのでしょうか。
徳武産業株式会社
徳武産業株式会社は香川県にある会社で、今は高齢者の靴を製造しています。
もともとは大手シューズメーカーの下請けで、主に小学生用の運動靴を製造をしていました。
しかし、大手シューズメーカーの生産拠点が中国に移動するにあたり、ホテル用のルームシューズのOEM製造に転換します。最初は順調でしたが、担当者が変わったあたりから売れ行きに陰りが見えてきました。
そんなときに、高齢者施設を経営する友人から、高齢者が転ばない高齢者用のシューズを作れないか?と頼まれ、2年かけて作成しました。その名も「あゆみ」と呼ばれる高齢者用シューズです。
このあゆみがどのようにして非価格競争に引き込んだのでしょうか。
非価格競争の成功例
高齢者のニーズが何があるのか、数々ある施設を訪問しては高齢者に質問をしたそうです。
共通してでてきたのは、「足のむくみ」「足の指の変形」といった様々な方が悩む問題でした。その問題点を解決したのが介護用シューズ「あゆみ」です。
高齢者のニーズをしっかりとシューズに反映したことで、数々の方が購入に至りました。また靴業界ではタブーとされていた「片方のみの販売」や「左右サイズ違いでの販売」に着目し、今は業界でもスタンダードになった考え方を確立しました。
転ばない靴もですが、片方だけほしいというニーズにしっかりと答えたことで、非価格競争に巻き込んだ良い事例です。
価格競争からの脱却を支援するポジショニングメディア
価格競争から脱却するためには、しっかりマーケティング分析を行い、自社のポジションをどの市場に置くかを決めねばなりません。
このページでも何度か説明してきたように、非価格競争で勝負するためには、商品やサービスの独自性や顧客に価値と感じてもらえる強みがなくては勝てません。
競合分析も市場分析もせず、ツワモノが独占している市場で勝負を挑んだところで、結果は火を見るよりも明らかです。
自社商品に強いこだわりを持つのは悪いことではありませんが、そのこだわりが市場における優位性を保証してくれるわけではありません。その価値を判断するのは、あくまで消費者であり、商談相手です。
自己満足に陥らず競合との比較もしっかり行ったうえで、貴社の強みを引き出す施策が、ポジショニングメディアです。
ポジショニングメディアは市場を俯瞰的に見て自社のポジションを確立すること、そして「知ってもらう」から「選んでもらう」ためのWebマーケティング戦略を徹底的に行います。
車業界のスバルや靴業界の徳武産業株式会社の共通点はニーズの徹底的な調査とそれに寄り添った戦略です。
Zenkenでは、市場の分析からポジショニングメディアの導入までを一貫してサポート。導入後のコンサルティングも含めて対応が可能です。他社との差別化にお悩みの方は、ぜひご相談ください。
なお、ポジショニングメディアの仕組みや特徴については、下記ページでくわしく解説しています。
もし非価格競争が目指せる差別化戦略の施策として社内で検討したいと感じていただけたのであれば、簡単に読める資料もご用意していますので、下記よりダウンロードしてください。
非価格競争まとめ
オリンピックで金メダルをとったスケートボードに注目が集まっているように、人は価値があると認識した時点で我先に入手しよう、トライしてみようという気持ちになるものです。
それはもしかしたらこれまで見向きもされなかったサービスかもしれません。もしくはその価値を理解してくれる消費者がほとんどいなかった製品かもしれません。
いまの社会に必要なものはなにか、この先その価値が高まるものはなにかといった、将来を見据えたビジネスモデルを追求していくことで、結果的に価格競争から距離を置くことができるのです。
独自性による差別化戦略にはWeb施策が必須
非価格競争はネーミング(ブランド)やデザイン、機能性など価格以外での価値のよる差別化を徹底的に行うことで参入できる競争市場です。
自社のオリジナリティをしっかりと確立し、「これを買うときはあの会社」と世間に思わせる工夫をしましょう。
さらになにより重要なのは、その独自性や優位性をターゲットに直接アピールする手段を持つことです。テレビでも新聞でもない、スマホで情報収集する消費者に向けた施策は、当然のことながらWeb上で展開される施策です。
Webマーケティングといっても、なにから着手すればいいかわかならい、というような場合には、これまで120業種以上のマーケティング支援を行ってきたZenkenにお任せください。
貴社の課題や問題点をヒヤリングさせていただいたうえで、最適なWeb戦略をご提案させていただきます。下記フォームより、そのお悩みをお聞かせください。