競合からシェアを奪うための戦略的考え方とは
最終更新日:2024年03月28日
ビジネスを行っていくうえで、競合他社とのシェア争いは避けて通れません。限られた市場の中で、競合他社からより多くのシェアを奪うことが、売上最大化のカギです。
シェアを上げることで得られるメリットは多く、経営の安定化やブランディング効果などが期待できます。
競合他社からシェアを奪い、自社の優位性を確立させるには、各種データに基づいたマーケティング戦略の展開が必要です。この記事では、シェアを奪うための戦略やその考え方をご紹介します。
シェアを奪うための戦略とは
競合他社からシェアを奪うための戦略として有名なのが「ランチェスター戦略」と「ニッチ戦略」です。ここではどのようなプロセスでシェアを奪うのか、ランチェスター戦略とニッチ戦略をわかりやすく説明していきます。
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略は、第一次世界大戦時、イギリスのF.W.ランチェスターによって考案された軍事理論の「ランチェスターの法則」が基となっているマーケティング戦略です。
兵力数と武器の性能が戦闘力を左右し、さらに強者と弱者ではとるべき戦い方が異なると定義されています。ランチェスターの法則には2つのパターンがあり、次のような式で表されます。
- ランチェスター第1法則…戦闘力=武器効率×兵力数
- ランチェスター第2法則…戦闘力=武器効率×兵力数の2乗
この定義をビジネスやマーケティングの場に置き換えて考えると、次のように置き換えられます。
- ランチェスター第1法則…営業力=商品力×販売力
- ランチェスター第2法則…営業力=商品力×販売力の2乗
※商品力…商品やサービスの質やブランディング、技術開発、情報発信、顧客対応、営業スキルなどの「質的経営資源」
※販売力…社員数、営業担当者数、設備機器数、売り場面積、席数などの「量的経営資源」
ランチェスター戦略の考え方では、まず市場に参入している企業を「強者」と「弱者」に分けます。強者とは、その市場でシェアトップに君臨している企業を指し、それ以外の企業は弱者という考え方です。
ランチェスター戦略における「強者の戦略」
強者の戦い方は、シェアを奪うというよりも、維持・拡大で2番手以下の追随や差別化を阻止するというものです。強者の多くは大手企業であるため、販売力の高さを活かした「第2法則」で戦う場合が多いとされています。
すでにトップシェアを獲得しており、先行優位性やブランディングという高い商品力もあるので、同質化競争に持ち込んで、販売力で勝敗をつけるという考え方です。
シェアトップを維持・拡大していく具体的な方法としては、顧客シェア(顧客が商品に使う総額のうち、どれくらい自社商品を購入してくれたかの割合)やエリア拡大(既存市場で培った技術・経験を活かせる新規市場への事業拡大)などがあります。
ランチェスター戦略における「弱者の戦略」
ランチェスター戦略における弱者の戦略は「差別化戦略」「一点集中戦略」が基本であり、「第1法則」が用いられるケースがほとんどです。特定の分野において商品力を高めることや、販売力を重点配分することで、より多くのシェアを奪うという考え方です。
差別化戦略では、商品やサービス、情報などの質を高め、今まで他社を選択していた顧客を自社側に引き寄せるのがポイントとなります。そのためには、顧客のニーズの把握や販売プロセスの明確化など、入念な下準備が必要です。
一点集中戦略では、市場全体ではなく、ある限定的な1分野に集中して販売力を投入します。そうすると、全体としてはトップシェアが獲得できなくても、特定分野ではトップシェアを獲得できる可能性がでてくるのです。
特定分野でトップシェアを獲得すれば、先行優位性やブランディングなどの商品力も高まるため、営業力の向上が期待できます。さらには、安定的なシェア維持や売上アップにもつながるというわけです。
ニッチ戦略
ニッチ戦略は、市場内にあるニッチ(隙間)に特化した事業を展開して、シェア獲得を目指すマーケティング戦略です。
多くの市場において、強者となっているのは大手企業であり、絶対的なポジショニングを確立しています。そのため、弱者が同じ商品やサービスで戦いを挑んでも勝機は限りなく低いのが現実です。
弱者が強者からシェアを奪えない市場構造であっても、強者が手をつけていない分野であれば、新たなシェアを獲得できるチャンスがあります。
強者や競合他社が手を付けていない分野こそがニッチ市場といわれるものであり、弱者がオンリーワン・ナンバーワンになれる可能性を秘めた場所なのです。
ニッチ戦略の基本的な考え方は、競合他社が手をだしていない、または手をだせない分野を見つけ出し、一点集中でリソースを投入し、競争のない環境でシェアを獲得していくというものです。
ニッチ戦略のほか、シェアを奪うための戦略には差別化戦略もあります。混同されがちですが、ニッチ戦略と差別化戦略は似て非なるものです。
ニッチ戦略は、差別化戦略のように競合他社からシェアを奪うのではなく、競争を避けて生き残るという考え方が基本です。言い換えれば、ニッチ戦略は「競わずしてシェアを獲得する戦略」といえるでしょう。
ニッチ戦略でシェアを奪うには
ニッチ戦略でシェアを奪うには、まず市場構造や自社のポジションなどの市場調査を入念に行う必要があります。そのうえで、ターゲットを絞り込み、戦略を展開していくのが基本です。
ニッチ戦略の市場調査には、マーケティングの基本フレームワークである、STP分析が役立ちます。Segmentation(セグメンテーション:市場細分化)・Targeting(ターゲティング:対象の絞り込み)・Positioning(ポジショニング:立ち位置の確認)の3つの要素を分析すると、シェア獲得が期待できるニッチ市場を探し出す手掛かりとなります。
ニッチ戦略では、自社だからこそ提供できる価値と、顧客のニーズがマッチすることが重要です。
新しい分野の開拓は、一朝一夕でできませんが、的確なデータ分析と、固定観念に囚われない探求心が、多くのシェアが眠るニッチ市場を見つけるカギとなるでしょう。
自社のポジションを確立しよう
ランチェスター戦略・ニッチ戦略ともに、どの市場で戦うのかがまず重要です。
大きな市場を細かくセグメントしたときに自社が一極集中でシェアを奪える市場を攻めるか(ランチェスター戦略)、まだ誰も攻めていない市場を攻めるか(ニッチ戦略)。
自社の立ち位置(ポジション)が明確になって初めて取るべき戦略が見え、そのために必要な戦術も分かってきます。
自社のポジションを特定するには、自社のみが提供できる独自の価値と顧客のニーズが合致している部分を明確にすることが必要です。「〇〇といえば自社」という特定の顧客が魅力を感じるポジションが確立できれば、一点集中のリソース投入で大手からもシェアを奪えるようになります。
ポジショニングメディアで強みを活かしてシェアを収奪
ポジショニングメディア事例 詳細はお問い合わせください
ポジショニングメディアは、「弱者」でも競合のシェアを奪いやすいニッチ戦略を基にした施策です。自社ならではの強みを明確に発信し、相性の良いユーザーに選んでもらえる状態をつくっていきます。
従来の広告のようになるべく多くのユーザーに自社の情報を露出するのではなく、ターゲットとすべき見込み顧客とフォーカスを当てる自社の強みを洗い出し、メディア化。公式ホームページとは別のWebサイトにメディアを置くことで、検索結果での上位表示を実現し、自社をまだ認識していないユーザーへもピンポイントでアプローチできる仕組みを作ります。
Webサイトを自社ならではの強みや特定のニーズをもとに構築・運用することで、見込みが高いユーザーの流入とそれに伴う問い合わせを実現。こうした戦略の上に立っているポジショニングメディアを導入した結果、下記のような成果が上がっています。
- 資料請求100件に対し1アポだったのが、資料請求10件で8アポを獲得
- 商材の強みや特徴を理解した上で反響に至るため、価格競争から脱却し受注単価が2.5倍になった
- 数ある競合から自社に興味を持ってもらえるようになり、反響獲得後から契約までの期間を3分の1に短縮できた
シェアを獲得・拡大するメリット
ランチェスター戦略とニッチ戦略における、シェア獲得の考え方をご紹介しましたが、シェアを獲得・拡大によって、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
様々な面で優位性が確立できる
シェアの獲得・拡大が成功すると、ビジネス上の様々な面で優位性を確立できます。
価格交渉を有利に展開できる、強気の価格設定でも売れる、知名度の向上で新規開拓しやすい、ブランディングによる顧客囲い込みができる、ロイヤリティ獲得で長期的な売上が期待できるなど、多くのメリットがあるのです。
顧客との接点をもちやすい
シェアの獲得・拡大により、顧客数が増えると、幅広い層の顧客情報を獲得できます。その情報を活用すれば、潜在顧客から売上に直結する顧客まで、多くの顧客と接点を作れます。
それぞれに適切なコミュニケーションをとっていけば、リピーターの獲得やロイヤリティの醸成、ブランディングなどの効果も期待できるでしょう。自社に興味・関心をもつ顧客が増えるほど、SNSなどからの情報拡散も多くなり、広告宣伝費をかけずとも集客しやすくなるというメリットがあります。
経験効果が高まる
経験効果とは、経験を積むことで経験値が高まり、品質の向上につながるというものです。メーカーであれば商品をたくさん作る、サービスであれば多くの顧客と接することがこれに該当します。
こうした経験を通して得た知識や経験を、次の商品やサービスに活かしていくと、より魅力的な価値を提供できるようになります。その結果、さらなる差別化や優位性の向上が期待できるのです。
規模の経済性が高まる
シェアの獲得・拡大によって、商品やサービスの量が増えると、1件あたりにかかるコストが下がります。これが規模の経済性です。つまり、多く生産すればするほど低コスト高利益となります。さらに、多く生産するということは、経験効果を高める要素にもつながるのです。
シェアの獲得・拡大で注意すべき点は
シェアの獲得・拡大は、売上アップを実現させ、経営を安定化させるために不可欠です。どの企業も、シェア獲得・拡大のため、様々な戦略を立てて努力しています。しかし、極端にシェアが高くなるのは、メリットだけとはいえないようです。
シェアの獲得・拡大が順調である時こそ注意すべきなのは、「強者でいることが当たり前」という感覚だといわれています。
弱者との差が顕著になり、トップシェアを奪われる可能性が低いからといって、そのポジションに胡坐をかいてはいけません。油断や慢心は、製品やサービスの質の低下やイノベーションの硬直化を招き、追随してきた他社にトップシェアを奪われる可能性があるのを肝に銘じておきましょう。
シェアの獲得・拡大は、目標を達成して終わりではありません。常に市場の動きをチェックする、品質向上やマーケティング戦略のアップデートを怠らないなどの継続した努力が大切です。
シェア獲得には「差別化」「一点集中」のマーケティング戦略を
限りある市場の中で、シェアを獲得・維持は容易ではありません。しかし、これは弱者だけでなく、強者にも当てはまります。つまり、今現在は弱者であったとしても、戦い方を変れば、シェアを獲得できるチャンスは大いにあるといえるでしょう。
シェアを奪うには、自社に合った戦略的なマーケティングの展開が重要です。そのポイントは、「差別化」「一点集中」であり、いずれも自社の価値や強みを明確にして、顧客のニーズにあわせて分かりやすく伝えていくことといえます。
自社の価値や強みに興味・関心を引き寄せ、市場の中から選んでもらえるようなマーケティング戦略や広告戦略を行い、シェア獲得を目指していきましょう。
Zenkenでは、クライアントならではの強み・価値であるバリュープロポジションを軸とした、マーケティング戦略をご提案しています。
いままでに120の業種を超えるクライアントの集客・マーケティングを支援してまいりました。シェア獲得のためのブランディング・差別化といったマーケティング戦略にお悩みでしたら、ぜひご相談ください。