【3分で理解】PESTLE分析とは?分析方法や考え方の例をまとめて紹介
最終更新日:2023年11月08日
経営戦略やマーケティング戦略を考える際に重要な、自社を取り巻く外部環境について分析する手法である「PESTLE分析」。
この記事では、PESTLE分析の方法や考え方などを、例も交えながら解説していきます。
PESTLE分析は、PEST分析から派生したフレームワークです。下記のページには無料でダウンロードできるPEST分析記入テンプレートを用意していますので、ご興味のある方はぜひこちらもご活用ください。
PESTLE分析とは
企業にとって機会を生み出したり、逆に脅威を与えたりする大きな外部環境「マクロ環境」を、6つの視点から分析するフレームワークです。
世の中の流れを把握してビジネスをより多角的な視点で見られるようになるほか、PESTLE分析を応用することで、人材登用・育成や社内制度の変更など、グローバリゼーションを広げるためにも役立ちます。
マクロ環境の頭文字をとったもの
PESTLEとは、6つのマクロ環境「政治的要因」「経済的要因」「社会的要因」「技術的要因」「法的要因」「環境的要因」の英語の頭文字をとったものです。
まれにPESTELと表記されることもありますが、「ペッソル分析」「ペスル分析」と読むPESTLEが一般的です。
- Political:政治的要因
- Economic:経済的要因
- Sociological:社会的要因
- Technological:技術的要因
- Legal:法的要因
- Environmental:環境的要因
ビジネスにおいて何かしらの判断がせまられたとき、この6つの要素を深堀りし、分析から得られた情報に基づいて行動方針を決めていきます。
PESTLE分析のようなマクロ環境の分析は、ビジネスを進める上で最初に取り組むことが大切です。その後、さらに内部環境を分析し、ターゲティングやセグメンテーションに役立てていきます。
PESTLE分析の結果そのものが今後の戦略になるのではありません。導き出せるのは、あくまでもビジネスリスクや機会になり得る要素です。戦略的にマーケティングを進めていく上で、有効的なツールのひとつと考えておきましょう。
PESTLE分析でできること
PESTLE分析では、自社やビジネスを取り巻く外部環境を検証することができます。ビジネスを進めるなかで、俯瞰的な視点でリスクや機会を見つけるのに有効です。
また、商品やサービスにとって大きな影響力を持ちそうなリスクや機会を予測することで、新しいニーズを発見したりマーケットの変化にいち早く気づけたりできるようになります。
さらに、最適なターゲットを見極める、ターゲット層に対して最適な場所で情報を発信するなど、分析結果を応用することで商品開発や販売、プロモーション方法といったビジネスモデルを定める手助けにもなります。
PESTLE分析とPEST分析の違い
PESTLE分析と同じように、ビジネスにおけるマクロ環境を分析するためのフレームワークに「PEST分析」があります。
PEST分析もPESTLE分析と同じく「政治的要因」「経済的要因」「社会的要因」「技術的要因」を分析していく手法ですが、「法的要因」「環境的要因」が含まれていません。
PEST分析が「近代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー氏によって提唱されてから、企業を取り巻く外部環境は大きく変化しています。
そのため現在のマーケティングの要素に照らし合わせると、PEST析方法では不足しているとして、従来のPEST分析に「Legal(法律的要因)」と「Environmental(環境的要因)」のマクロ環境が加えられました。
もともと、環境的要因はPESTの「社会的要因」に、法律的要因は「政治的要因」に分類されていました。しかし、この2つの要素は時代が進むにつれ、とくに注目すべきポイントとして独立しています。
より高度な分析を行うために、PESTLEに拡張した考えで外部環境を分析しましょう。
マクロ環境を分析するその他の手法
STEEP分析
PESTLE分析とPEST分析と同じような言葉に、STEEP分析があります。これは、PEST分析に地球温暖化や熱帯雨林の問題、砂漠化の問題などの「Environment:環境的要因」が加えられたものです。ちょうど、PEST分析とPESTLE分析の間と考えておくと良いでしょう。
こちらもマクロ環境を分析するための切り口として有効ですが、より多面的な視点でリスク要因を考えたいのであれば、法的要因を含めたPESTLE分析を活用するほうがおすすめです。
SWOT分析
外部のマクロ環境を取り入れたフレームワークに、SWOT分析というフレームワークもあります。こちらはPEST、STEEP、PESTLEとは異なり、自社の「強み」「弱み」という内部要因も含めた分析方法です。
ビジネスの機会とリスクの両方がある状況下において、強みや弱みをどう活かしていくかを定めていけるようになります。
外部要因を把握するのに有効なフレームワークのひとつではありますが、先にPESTLE分析をしてからSWOT分析をすると、より踏み込んだ形で自社の強みや弱みを見つけやくなります。
>>SWOT分析を事例つきで解説!企業の経営戦略フレームワークを実践
PESTLE分析の方法
PESTLE分析は、まず要因に当てはまる情報を、ビジネスチャンスをもたらす「機会」と自社にビジネス上のピンチをもたらす「リスク」に分類します。
そして、分類した機会とリスクの緊急度や重要度を評価して、自社に与える影響が大きい順に行動の優先順位を決めていきます。
ここでは例として、コロナ禍における飲食店経営を想定して、PESTLE分析でビジネスの機会とリスクについて考えてみましょう。
PESTLE分析の事例:コロナ禍における飲食店
政治的要因(Political)
政治的要因とは、法律や条例による規制や公的支援などの動向を指します。感染防止のために緊急事態宣言の発令があると、時短営業や休業を要請されることになります。
消費者が外食をする機会がなくなり来店者が激減するリスク、営業そのものができなくなってしまうリスクが考えられるのです。
一方で、感染が抑えられてくると、政治的にも「経済をいかに回復させるか」という動きが出てくるでしょう。中小企業支援や給付金など、経済対策として国が追加の財政支出を行う可能性も考えられます。これが「機会」にあたります。
経済的要因(Economic)
コロナが終息せず長引くような状況が続くと、長期にわたって仕事を休む、職を失ってしまう人が増えることが予測されます。景気が悪くなって、世間全体の消費傾向が停滞気味になるでしょう。
また、コロナの影響で流通が滞り、海外からの輸入が減少すると、仕入れ時の物価にまで影響が及ぶかもしれません。
逆に、ワクチン接種が浸透するなどで感染者が減少して外出制限が緩和されると、消費動向が徐々に戻り経済が回復する可能性があります。世間全体が消費を抑えていた反動で、コロナ前よりも消費が活発になるかもしれません。これが経済的要因におけるリスクと機会です。
社会的要因(Sociological)
社会的要因とは、世間のライフスタイルや生活者意識などの動向を指します。コロナ禍では外出自粛が余儀なくされたことにより、簡単に外食ができなくなりました。これまで飲食店で食事を済ませていた人の多くが「早めに帰宅して家で食事をとる」というライフスタイルに変化しています。
社会全体の生活が大きく変化したことで、店内で飲食をせずテイクアウトを選ぶ人や宅配サービスを利用する人が増えました。コロナ以降、宅配やテイクアウトサービスの需要が高まったのも、社会的要因から見てとれるでしょう。
一方で、万が一店舗を訪れた顧客や従業員にコロナ感染者が出てしまうと、「感染対策がとられていない」など、お店の印象を大きく下げてしまいます。
クラスターが発生したケースでは風評被害で客足が遠のいた事例もあり、営業を続けていく上で長期的にダメージを受ける要因となります。
技術的要因(Technological)
商品開発や生産における技術動向やプロモーション、マーケティング戦略などが技術的要因にあたります。
Uber Eats(ウーバーイーツ)に代表される宅配サービスや出前サービスと提携する、EC向けの商品を開発して実店舗以外でも販売する、キャッシュレス決済を導入するなど、何らかの技術を取り入れることによって集客の機会を増やせるでしょう。
一方で、新しい技術やサービスを積極的に取り入れないことには、容易に他店に勝つことはできません。飲食店においても、デジタルへの対応力が生き残りに直結することが予測できます。
法的要因(Legal)
利益だけでなくブランドにも大きな影響を与える可能性があるため、法的要因にも注意が必要です。コロナ禍で営業をする上で、地域や自治体ごとに営業時間やテーブルの並べ方、アクリル板・換気システムの設置義務などが条例で細かく定められています。
新しい法規制ができることによって、これまでになかった新たな市場が生まれる可能性も秘めていますが、ルールを守らないと事業が継続できなくなってしまうこともあります。法律はとくに注意してチェックしておくことが大切です。
環境的要因(Environmental)
飲食店における環境的要因を考えるとき、テイクアウトの素材やパッケージ包装が環境に配慮されているか、廃棄物の処理方法は正しいか、などが挙げられます。フェアトレードへの積極的な取り組みを消費者に伝えることで同じマインドを持つ顧客が集まり、ファンになってくれるかもしれません。
SDGsの浸透によって、環境的要因はマーケティングの中でもさらに注目が予想される分野です。アフターコロナに「企業が求められること」を予測しながら動くことで、新しい価値を創出できる可能性を秘めています。
常に自社のポジションを見つめ直そう
時代に合わせて変化する「自社を取り巻く外部環境」を分析することは大切です。市場の環境や自社のポジションを正確にとらえるために、PESTLE分析のフレームワークを用いて常にブラッシュアップを続けましょう。
マクロ環境を分析して冷静に行動を見定めることで、今後の売上アップはもちろん、商品の広告や自社ブランディングにも好影響を与えることができます。
ただし、PESTLE分析だけでは自社と顧客・競合他社との関係性は明らかにはなりません。
市場、ターゲット、競合から自社の立ち位置を把握し、「他社が提供していない、自社のみが提供できる価値」であるバリュープロポジションを前提とした考え方も重要です。
【漫画で解説!】
バリュープロポジションとは
新型コロナウイルスに関わらず、自社を取り巻く市場や競合などの環境は常に変化を続けていきます。
これまでのビジネスの常識やあり方を大きく変える必要に迫られることもあるでしょう。ただこういった変化をいち早くつかみ、適応していくことで事業成長や、新市場開拓といったチャンスを逃さずに済みます。
さまざまな分析方法やマーケティング戦略を上手く組み合わせ、多面的な視点でビジネスのリスクと機会を見極めていきましょう。