三井不動産の経営戦略から学ぶ企業成長のポイント
最終更新日:2021年04月13日
2020年上半期、新型コロナウイルスの影響で不動産業界は一時落ち込みました。しかし、影響は限定的なもので不動産の取引価格は横ばいに回復しています。
このような状況下において、日本の不動産業界を牽引する三井不動産はどのような経営戦略を行っているのでしょうか?ここでは、三井不動産がコロナ禍を生き抜くために実施しているマーケティング戦略を紹介します。
経営戦略を練る上で、ぜひ参考にしてください。
三井不動産の経営戦略のポイント
三井不動産は旧三井銀行・三井物産とともに知られる「三井グループ御三家」のひとつです。不動産業界では日本トップクラスの企業であり、主な所有ビル・商業施設には東京ミッドタウン・ダイバーシティ東京・赤坂サカス・ららぽーとなどが名を連ねています。また、東京ディズニーリゾートの親会社としても有名です。
三井不動産は、2015年度にグループ中期経営計画として「イノベーション2017 ステージII」を公表。「国内事業競争力の一層の強化」「海外事業の飛躍的な成長」などの戦略に取り組んできました。しかし、中期経営計画の策定から3年が経過した2020年には、人口減少・少子高齢化により不動産業界における環境は多きな変化を迎えました。
現状に追い打ちをかけるコロナ禍において、三井不動産では持続的な成長を目指すべく長期経営方針として「VISION 2025」を策定したのです。
「2025 VISION」と3つの主要な取り組み
三井不動産が2020年中盤以降も持続的な成長をし続けるために策定した「VISION 2025」は、以前から掲げていた「STATEMENT/VISION/MISSON」をベースとして、その方向性を「2025 VISION」として以下のように示しました。
- 街づくりを通し、持続できる社会の構築を実現
- テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション
- グローバルカンパニーへの進化
また、長期経営方針における具体的な取り組みとして以下の3つを掲げています。
- 街づくりのさらなる進化
- リアルエステートテックを活用したビジネスモデルの革新
- 海外事業の迅速な成長
このように三井不動産では業界の現状から脱却するために、「不動産業界にはイノベーションとグローバリゼーションが必要」という方針のもと、新たな経営戦略を展開しています。
法人向け多拠点型サテライトオフィス事業「ワークスタイリング」で新しい働き方を提案
三井不動産では新しい働き方を実現するために、2017年4月から法人向けシェアオフィスである「ワークスタイリング」を展開しています。ワークスタイリングは従量課金制のサービスで、全国約100拠点でサテライトオフィスを提供。2021年現在では契約企業が600社、会員数が16万人を超える事業に成長しています。
また2020年12月からはコロナ禍における在宅勤務の課題を解消するべく、新たなサービスとして個室特化型サテライトオフィス「ワークスタイリングSOLO」の提供も開始しました。
不動産業にテクノロジーを活用してデータドリブンマーケティングを実施
三井不動産の長期経営戦略では、不動産にテクノロジーを活用することを掲げていました。その一環として、新規事業「ワークスタイリング」ではデータドリブンマーケティングを取り入れています。
データドリブンマーケティングとはデータの活用を重視した手法であり、根拠として用いられたデータを基準にマーケティング施策を決定するのが特徴です。
三井不動産ではデータドリブンマーケティングを実行するために、以下の3つを準備しました。
- データ分析体制を内製する
- データを民主化して意思決定時間を短縮する
- 日々のコミュニケーションを増やし、提案を続ける体制
ワークスタイリングにおいては、会員の居住エリアなどをデータ分析し、1人用個室の増設など的確な設備投資を行っています。
三井不動産の経営戦略まとめ
三井不動産では横ばい状態の不動産業界の現状から脱却するために、データドリブンマーケティングなどの新しい手法も取り入れています。
2017年に開始したワークスタイリング事業は、コロナ禍におけるライフスタイルにマッチ。さらに、データの分析結果を意思決定の指標とすることで、的確な投資を速やかに行えています。
このように三井不動産では不動産業にテクノロジーを活用することで、競合他社との差別化を行っているのです。