【3分で理解】USJの広告戦略・マーケティング戦略のポイント
最終更新日:2024年05月27日
日本国内におけるテーマパークとして、関東の東京ディズニーランド(TDL)と肩を並べる関西のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。今や誰もが知る有名テーマパークですが、実は2004年、開業3年目にして事実上の経営破綻に至ったことはご存じでしょうか。
そのような危機的状況から、2015年10月(単月)には175万人の客を集め、TDLをしのいで日本一の集客数を獲得するまでに回復しました。このような目覚ましい快進撃を遂げるUSJ――そのV字回復の裏で一体どのような広告を打ち出し、マーケティングを行ったのでしょう。
本記事では、USJから学んだ戦略をご紹介するとともに、広告・マーケティングの重要なポイントについて解説します。
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USJの広告・マーケティング戦略のポイント
値上げしても離れないリピーターづくり
USJの広告・マーケティング戦略において、同社の元執行役員・CMO(チーム・マーケティング・オフィサー)である森岡毅氏の存在なしには語れません。
森岡氏の入社した2010年6月以降、入場者は2009年の700万人台から順調に回復し、2013年には1050万人に到達しました。その後、2014年には1270万人、2015年には東京ディズニーシーを抜いて1390万人と、順調に業績を伸ばしました。
森岡氏の戦略が高く評価されているのは、8年連続で値上げをしながらも、V字回復を達成したことにあります。USJ開園時の入場チケット代は5500円(1日券大人・12歳以上)でしたが、2021年2月現在は7800円と、2000円も値上がりしています。
値上げをしながらも顧客満足度を向上させてリピーターを確保し、さらなる集客につなげるという健全な成長を遂げているのです。
USJの広告・マーケティング戦略の成功要因
USJの広告・マーケティング戦略を成功させたポイントとして、具体例をもとに2つ解説します。
1.明確なターゲティング
森岡氏の入社当時、USJは経営難であったため、まずは「お金をかけずに集客する」ことに着目し、打ち出したのは「ハロウィン」でした。
「どう戦うかの前に、どこで戦うかを正しく見極める」ことがマーケティングの基本であると森岡氏は考え、USJの街をゾンビが徘徊するというイベント「ハロウィーンホラーナイト」を打ち出しました。
漠然とゾンビに街を練り歩かせるのではなく、ターゲットを「ストレスを溜めやすい日本女性」に定め、ターゲットが思い切り叫ぶことで「日常ではなかなか出せない素の自分をさらけ出し、解放感を得ること」を狙いとしました。
「消費者が欲しいのはアトラクションではなく、アトラクションを体験したときに巻き起こる『感情』である」という森岡氏の持論のもと、ハロウィンは目標の前年比14万人増を大きく超えて40万人の集客をすることができました。
消費者の潜在ニーズ(消費者インサイト)を引き出し、コアターゲットへ的確にアプローチする(広告する)ことがマーケティングにおいて重要であるといえます。
2.消費者視点を理解すること
USJは「映画の専門店」という従来の型から脱却し、「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」へとシフトすることをミッションとして掲げてきました。
USJはもともとハリウッド映画の世界を再現することにこだわっていましたが、森岡氏は関西からの集客に頼っていても復活は難しいと考えました。
そこで日本各地からの集客を見込むべく、世界的な人気を誇る「ハリー・ポッター」のエリアに450億円を投じるなど、力を注ぐべきところには惜しみなく投資し、アトラクションを充実させました。
また、ゴジラやエヴァンゲリオンなど日本発のキャラクターを使った「クールジャパン企画」も2015年から取り組んでいるテーマで、外国人観光客は2015年には100万人を超え、2017年には200万人を達成しました。
森岡氏は、前職のヘアケア担当時代は髪の毛を金髪やモヒカンにしたり、USJではゲームを数百時間プレイしたり、何でも自分でやってみて消費者を理解することを率先して行ったといいます。
このように、ファン心理の理解を深めて消費者目線に立つことが重要であると考えられます。
USJの広告・マーケティング戦略 まとめ
森岡氏は、「マーケティングは消費者の購買行動を決定的に変える力を持っています。(中略)最も大事なことは、戦況分析を徹底的に行うことと、消費者理解に徹底的に自分の時間を投資すること」と述べています。
自社や競合他社、そして消費者の分析は、マーケティング戦略には欠かせないものです。
Webメディアによる集客方法が主流になっている昨今において、自社の特徴・強みを理解し、それを武器にするポジショニングメディア戦略というものがあります。
・自社の独自性を活かして他社との差別化を図る
・購買意欲の高いユーザーにターゲットをしぼり、売り上げ向上につなげる
これらは先述したUSJのコンセプト転換やハロウィンイベントの成功例にも通ずるものがあり、エンターテインメント業界だけでなく、どの業種にもあまねく通用する広告戦略であるといえます。
下記の記事では、商品やサービスを認知させるだけでなく「成果」に繋がる広告戦略の具体的な方法や、その他の企業の事例を紹介しています。今後の広告戦略策定におけるアイディアが詰まっていますので、こちらも合わせてご覧ください。