免税店の運営を始めるには、所轄の税務署に必要書類を提出し、国税庁が定める条件を満たす必要があります。その中でも、「免税電子化制度」に対応したシステムを導入し、購入記録情報を国税庁へ正確に送信する体制を整えることは必須です。
本記事では、スマホアプリ形式からPOS連動型まで、さまざまな形態の免税電子化アプリを一挙にご紹介します。それぞれの導入方法やメリット、費用面をわかりやすく解説し、自店舗に最適な方法を見つけるためのヒントをお届けします。
免税電子化アプリシステムの一覧表
会社名 | サービスの特徴 |
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PIE VAT |
コストゼロで始める免税電子化!初期費用・月額料金無料
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eあっと免税 |
幅広い訪日客に対応可能な12言語サポート |
Smart Detax(スマートデタックス) |
最短10秒で免税、停電やネット障害にも対応。 |
J-TaxFree |
酒税免税に対応し、多様な業態で活用可能 |
日本免税 |
店舗運営に合わせて選べる柔軟な料金プラン |
リモタックス |
手続き代行で時間を効率化。 |
免税電子化制度とは
免税電子化制度は、従来の紙ベースで行われていた免税手続きをデジタル化し、効率的かつ正確に管理できるようにする仕組みです。2021年から適用され、免税販売を行う店舗には、手続きを電子化することが義務付けられました。
そのため、免税店を運営するためには、この免税電子化への対応が必須となります。対応しない場合、免税販売事業者としての登録が認められず、免税手続きを行うことができません。免税販売を計画している店舗は、事前に電子化対応システムの導入を検討する必要があります。
免税電子化アプリの選び方
店舗の規模に合った機能
免税電子化アプリを選ぶ際には、店舗の規模に応じた適切な機能を持つアプリを選択することが重要です。
小規模店舗
操作のシンプルさが最も重要です。スマートフォンやタブレットで使用できるアプリは、低コストで導入できるため、初めて免税対応を行う店舗に適しています。このようなアプリでは、少ない従業員数でも効率的に免税手続きを処理できる設計がされています。また、専用機器を設置する必要がないため、限られたスペースでの運用が可能です。
中規模店舗
複数のデバイス間でのデータ共有や連携が求められます。例えば、クラウド型アプリを利用することで、店舗内外の端末でリアルタイムにデータを共有でき、免税手続きや売上管理がスムーズになります。将来的に複数店舗を展開する予定がある場合、拡張性のあるアプリを選ぶことも重要です。
大規模店舗
POSレジや販売管理システムと統合可能なアプリが最適です。多言語対応機能を備え、高速なデータ処理を実現できるアプリは、観光客が多い店舗や混雑時にも効率的な対応を可能にします。たとえば、専用端末型のアプリは、POSシステムと連携しながら、免税手続きと販売管理を一元化することが可能です。
費用対効果
アプリ選定においては、初期費用やランニングコスト、長期的な運用コストを含めた総合的なコスト評価が欠かせません。
初期費用
クラウド型アプリでは、専用端末の購入が不要なため、初期費用を抑えやすい傾向があります。一方、専用端末型アプリは高額な初期投資が必要ですが、長期的には安定した運用が期待できます。
ランニングコスト
サブスクリプション型のアプリは、月額料金が発生するため、コストと機能のバランスを考慮して選ぶことが重要です。プラン内容を詳細に確認し、自店舗に必要な機能が含まれているかをチェックしてください。また、更新や追加機能の費用も事前に確認しておくと安心です。
メンテナンス費用
アプリやシステムの保守にかかるコストも重要です。クラウド型アプリでは、メンテナンスやアップデートが自動化されているケースが多く、手間を省けます。専用端末型の場合、保守契約の内容やサポートの範囲を事前に確認しておく必要があります。
サポート体制
アプリ導入後の運用を円滑に進めるには、提供会社のサポート体制が鍵を握ります。
問い合わせ対応
電話やチャットでの迅速な対応が可能なサポートがあるかを確認してください。対応時間帯や多言語対応の有無も重要です。特に、営業時間外にトラブルが発生した場合のサポート体制を事前に確認しておくと安心です。
操作ガイドやマニュアル
初めて免税電子化を導入する場合、オンラインマニュアルや動画チュートリアルが充実しているアプリは心強い味方となります。分かりやすい操作手順書があれば、研修時間を短縮し、早期の運用開始が可能です。
トラブル対応
システム障害やエラーが発生した場合の対応スピードや、現場へのサポート体制もチェックポイントです。トラブル時に専任スタッフが対応してくれるサービスは、運用の安定性を高めます。
免税制度改正!リファンド方式への移行
2026年11月1日から、免税制度が「リファンド方式」に変更されます。この改正は、免税販売が「出国時に税関で商品の持ち出しが確認された場合」に成立する仕組みを採用し、不正利用の防止や免税店の負担軽減を目指したものです。
リファンド方式の仕組み
- 購入時:旅行者は税込価格で商品を購入。
- 出国時:空港で税関が商品の持ち出しを確認。
- 確認後:旅行者は、指定の方法で免税還付金(消費税額)を受け取る。
現行制度との違い
- 現行制度:購入時に税抜価格で販売、またはその場で還付を実施。
- リファンド方式:購入時は税込価格で販売し、還付金は出国後に受け取る。
改正に伴う影響
リファンド方式への移行により、免税店側と旅行者側には以下のような影響があります。
- 免税店側
その場での還付業務が不要になるため、手続きが簡略化され、負担が軽減されます。また、商品の持ち出し確認を税関が行うため、不正利用の防止に寄与します。 - 旅行者側
購入時に税込価格を支払う必要がありますが、出国後に確実に還付を受け取れる仕組みになります。
リファンド方式への対応準備
免税店がこの制度変更に対応するためには、以下の準備が求められます。
- 購入記録情報を正確に管理し、出国時に持ち出し確認を行える仕組みを整える。
- 免税電子化システムが新しい送信ルールに対応しているか確認する。
- 店舗スタッフへの新制度に関する教育とトレーニングを実施する。
そもそも免税事業者になるには?
免税販売を行うためには、店舗が正式に「免税事業者」として登録される必要があります。以下では、免税事業者になるための条件と手続きについて説明します。
免税事業者の条件とは
国税の滞納がないこと
免税店舗として登録するには、国税を適切に納付していることが条件です。納税義務を果たしていない事業者は、免税事業者として登録することができません。
適切な立地に店舗があること
免税店舗は、訪日外国人観光客である非居住者が利用する場所、または非居住者の利用が見込まれる立地に店舗を構えていることが求められます。
必要な人員と設備が整っていること
免税販売手続きを適切に実施するためには、十分な人員を配置し、免税手続きに必要な設備を備えていることが条件です。
免税店は試験的に運営できる?
免税販売は、訪日外国人観光客が購入した商品にかかる消費税を免除する制度です。セールや値引きのように店舗が自由に実施できるものではなく、日本の税制に基づく厳格な条件のもとで行われます。事業者や店舗、購入者が条件を満たした場合にのみ適用されます。
免税店舗を運営するには、正式な登録手続きと法令遵守が必須です。「試しに免税販売を行う」といった運営方法は法律上認められていません。登録を受けていない事業者が免税販売を行うと法律違反となり、罰則が科される可能性があります。
免税事業者登録の手続きとは?
1. 税務署への申請
免税店舗として登録するには、所轄の税務署に必要書類を提出し、申請手続きを行います。主に「輸出物品販売場許可申請書」や「購入記録情報提供方法の届出書」などが必要です。また、店舗の見取り図や免税販売に関するマニュアルなど、追加資料の提出が求められる場合もあります。
2. 免税電子化システムの導入
登録完了後は、免税手続きを電子化するために、国税庁へスムーズに購入記録情報を送信できるシステムを導入する必要があります。このシステムを整備することで、法令に基づいた適切な免税手続きが可能になり、運営効率の向上にもつながります。
免税店舗が実施する具体的な手続きの流れ
1. 旅券(パスポート)等の提示を受ける
非居住者である訪日外国人観光客から旅券やその他の必要書類を提示してもらい、その内容を確認します。
2. 非居住者であることの確認
提示された旅券等を基に、購入者が非居住者であることを正確に確認します。
3. 手続き条件や注意事項の説明
購入者に免税手続きの条件や注意事項について、具体的かつ丁寧に説明します。
4. 免税対象物品の引き渡し
非居住者であることを確認した後、免税対象商品を購入者に引き渡します。
5. 購入記録情報の電子送信(免税電子化)
購入記録情報を国税庁に電子的に送信します。この手続きは、免税電子化の一環として義務化されています。
6. 購入記録情報の保管
国税庁に送信した購入記録情報を適切に保管します。保存期間は法律に基づき約7年間と定められています。
参考情報:観光庁HPまとめ
免税電子化制度の義務化により、アプリの活用は店舗経営における重要な要素となっています。適切なアプリを導入し、運用の効率化を図ることで、業務負担の軽減と顧客満足度の向上が期待できます。
特に初めて免税販売を行う店舗では、操作性が高く、サポートが充実したアプリを導入することが成功の鍵となります。さらに、インバウンド需要が拡大する中で、早期のアプリ導入は店舗の競争力を高める重要な施策です。
店舗のニーズに合った免税電子化アプリを見つけ、ビジネスの成長につなげていきましょう。
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- 本記事は、2025年1月時点の情報をもとに作成しています。掲載各社の情報・事例をはじめコンテンツ内容は、現時点で削除および変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。