建設業界では、労働時間の短縮や業務効率化が急務となっています。さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法といった法改正への対応も求められ、従来の紙の請求書管理が大きな課題となっています。
こうした状況の中で注目されているのが、「建設業向け請求書電子化システム」です。請求書の作成から送付、管理、承認までを一元化し、手間のかかる事務作業を効率化することで、現場担当者が本来の業務に集中できる仕組みが広がっています。
この記事では、請求書電子化システムの概要や導入による具体的なメリット、システム選びのポイントまで詳しく解説します。業務の効率化や法的要件への対応を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
会社名 | サービスの特徴 |
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ANDPAD 請求管理 |
建設業特有の“複雑な請求業務”を、画面上で完結。
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楽楽明細 |
多様な帳票発行に対応し、建設業のニーズに応える電子請求書システム |
マネーフォワード クラウド請求書 |
見積書から請求書まで簡単に変換できるクラウド型請求書ソフト |
デジタルインボイス |
トータルコスト削減で請求書業務を効率化 |
invox受取請求書 |
請求書のデータ化を99.9%以上の精度で自動化 |
メイクリープス |
請求業務の80%を削減し、効率的な業務フローを実現 |
Concur Invoice |
電子帳簿保存法やインボイス制度に対応し、法令遵守をサポート |
ナビエクスプレス |
コスト削減で発送費・人件費を大幅にカット |
DX/Digital Builder |
建設業特有の業務に対応し、管理業務を最適化 |
board |
案件ごとの書類管理と損益管理で業務の見える化を実現 |
建設業における請求書電子化の必要性と課題
建設業において、請求書の電子化は業務効率化や法制度対応の面で非常に重要です。従来の紙の請求書を継続して使用すると、以下のような課題が発生します。
時間や手間のかかる作業が多発する
紙の請求書は、発行側と受取側の双方に多くの手間がかかります。発行側では、請求金額の入力、印刷、押印、封入、発送作業が必要です。一方、受取側では内容確認や会計システムへの手入力が発生します。修正が必要な場合はさらに時間がかかり、2〜3営業日遅れることで月末の締め作業に支障が出ることもあります。
特に、現場作業が多い建設業では、担当者や承認者がオフィスに戻るまで承認作業が遅れるケースも少なくありません。結果として、業務全体が非効率になりがちです。
インボイス制度と電子帳簿保存法への対応が必要
2023年10月にインボイス制度が導入され、2024年1月には電子帳簿保存法により電子保存が義務化されます。インボイス制度では、適格請求書の登録番号や税率ごとの消費税額の記載が必須です。
紙の請求書を手作業で対応することは現実的ではなく、業務がさらに煩雑化する可能性があります。また、紙と電子データが混在することで、二重管理の手間が増えるという問題も発生します。
2024年問題と時間外労働の上限規制
2024年4月から建設業における時間外労働の上限規制が適用されます。時間外労働は月45時間、年360時間に制限されるため、業務効率化が急務です。しかし、手間のかかる紙の請求書処理を続けていると、業務が非効率になり、残業時間の削減が難しくなります。
長時間労働が続くと労働基準法違反となるリスクがあり、罰則の対象になることも考えられます。そのため、請求書の電子化は働き方改革を進めるためにも必要不可欠です。
建設業で請求書を電子化する方法
システムで請求書を電子発行し、電子データを送受信する
システムを導入し、請求書の発行から受領、承認、保管までを一括管理する方法です。システム上でテンプレートを活用して請求書を作成し、電子メールやデータ連携で送信します。取引先はシステム内で内容を確認し、承認担当者も同様にシステム上で確認や承認が可能です。最終的に、承認済みデータはシステム上に保管されるため、場所を選ばず効率的に作業を進められます。
代行入力サービスを利用する
自社で電子化システムを導入するのではなく、外部業者に請求書のデータ入力や処理を委託する方法です。この方法は初期費用や運用コストを抑えられる一方、外部委託のため情報漏洩リスクへの対策が必要になります。また、専門スタッフによる処理が可能であるため、人的リソースが不足している現場では有効ですが、すべての企業に適しているわけではありません。
建設業向けの請求書処理サービスを利用する
建設業界向けに提供されている請求書処理サービスでは、建設業特有の業務に対応した機能が備わっています。積算ソフトと連携したり、現場ごとの請求書管理ができるほか、工事代金支払いの自動化などの機能が利用可能です。業界に特化しているため、建設業の企業にとって効率的な運用が期待できます。
建設業で請求書を電子化するメリット
建設業において請求書の電子化は、業務効率化やコスト削減、法制度対応など、さまざまなメリットをもたらします。以下に具体的なメリットを紹介します。
業務効率が向上する
請求書の作成や確認、送付、保管をシステム上で一元管理することで、手作業が大幅に削減されます。手入力や紙の仕訳作業が不要になるため、作業時間が短縮され、他の業務にリソースを割けるようになります。修正が発生した場合でも、迅速に対応できるため、業務の遅延リスクも低減します。
ミスの削減につながる
電子化により請求書のデータ入力が自動化されるため、手入力に伴うヒューマンエラーが減少します。データの一貫性が保たれるため、金額や取引先情報の確認漏れなどのリスクも抑えられ、精度の高い請求業務を実現できます。
法制度への対応がスムーズになる
インボイス制度や電子帳簿保存法に対応したシステムを導入すれば、適格請求書の要件や電子保存義務を確実に満たすことができます。法的要件への対応が自動化されるため、煩雑な作業を避けつつ、監査時のリスクも軽減されます。
コストを削減できる
請求書の印刷、押印、封入、郵送にかかる費用が削減されます。また、保管スペースが不要になることで、オフィスの維持コストも抑えられます。電子化によって業務効率が向上することで、人件費や残業代の削減にもつながります。
残業時間の削減に貢献する
建設業では現場作業が多く、事務処理に割く時間が限られています。請求書の電子化により、承認や確認を現場や移動中でも行えるようになり、作業効率が向上します。結果として、残業時間を削減し、働き方改革の推進にもつながります。
データ管理や検索が容易になる
電子化された請求書データはシステム上で保管されるため、検索機能を活用して必要なデータをすぐに見つけることができます。過去の履歴や取引先ごとの請求書を簡単に確認できるため、トラブル対応や業務の透明性も向上します。
建設業向け請求書電子化システムの選び方
建設業に適した請求書電子化システムを導入する際は、自社の業務フローやニーズに合ったものを選ぶことが重要です。選び方のポイントを、以下の項目で解説します。
クラウド型のシステムを選ぶ
請求書電子化システムは、クラウド型が最も利便性に優れています。インターネット環境があれば、現場やオフィス、自宅からでもアクセスできるため、場所を選ばずに業務を進めることができます。
クラウド型は初期費用が少なく、月額料金のみで利用できることが多いため、コスト面でも優れています。システムのアップデートが自動的に行われるため、常に最新の状態で運用できる点も大きなメリットです。
自社のニーズに合った機能を確認する
建設業の請求書処理には、業界特有の要件を満たす機能が必要です。例えば、履歴管理や検索機能が充実しているか、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しているかを確認しましょう。
また、現場が多い建設業では、モバイル対応があると外出先でも請求書を作成・確認できて便利です。データのセキュリティ対策も重要なポイントで、暗号化や24時間監視体制が整っているシステムを選ぶと安心です。
操作が簡単で使いやすいシステムを選ぶ
システムの操作が複雑だと、導入しても現場で使いこなせないことがあります。特に中小企業では、デジタルツールの使用に慣れていないケースも多いため、操作が簡単なシステムを選びましょう。
テンプレート機能や直感的なインターフェース、操作ガイドやヘルプ機能が充実していると、誰でもスムーズに利用できます。試用期間が設けられているシステムであれば、事前に操作感を確認することも可能です。
サポート体制が整っているか確認する
システムを導入しても、操作に困ったり不具合が発生することがあります。そのため、サポート体制が充実しているかを事前に確認することが重要です。
電話やチャットでのサポートがあるか、FAQや操作説明動画が用意されているかをチェックしましょう。初期導入時のサポートや、定期的なアップデート情報の提供があるシステムであれば、安心して運用を続けることができます。
他のソフトやエクセルと連携できるシステムを選ぶ
建設業では、会計ソフトやエクセルを利用してデータ管理を行っている企業が多いため、新しいシステムが既存のツールと連携できるかも重要なポイントです。
データの手動入力や二重管理を防ぐため、請求書ソフトが既存システムとスムーズに連携できるか確認しましょう。データ移行機能が充実していれば、導入時の負担も軽減されます。
まとめ
建設業向け請求書電子化システムの導入は、従来の紙ベースによる煩雑な事務作業や法制度対応の負担を軽減し、業務効率化と生産性向上を実現する有効な手段です。しかし、単にシステムを導入するだけでは、期待する効果を最大限に引き出すことは難しい場合があります。
請求書電子化システムの効果を高めるためには、自社の課題や業務フローに合致したシステムを選定し、クラウド型の利便性や法的要件への対応、他ソフトとの連携機能などをしっかりと確認することが重要です。また、導入後はシステム操作の習熟やサポート体制を活用しながら、運用の定着と継続的な改善を行うことが求められます。
建設業に特化した請求書電子化システムを効果的に活用し、法制度対応の強化や業務効率化を通じて、時間外労働の削減や働き方改革の実現、持続的な成長と競争力向上を目指しましょう。
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- 本記事は、2024年12月時点の情報をもとに作成しています。掲載各社の情報・事例をはじめコンテンツ内容は、現時点で削除および変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。