【図解付き】ポジショニングマップの作り方と縦軸・横軸の決め方を解説
最終更新日:2023年11月08日
このページではポジショニングマップについて説明しています。「ポジショニングマップ」とは、平たく言えばブルーオーシャンに近い市場を探してビジネス展開を考えていくための地図、集客の方向性を考えるためのマーケティングツールととらえると良いでしょう。
競争戦略には大きく2パターンがあります。1つはその市場で最高を目指す競争、そしてもう一つは独自性を目指す競争です。前者の最高を目指す競争では市場シェア重視で、最高の製品・サービスを目指します。
一方で後者の独自性を目指す競争では、利益重視(価値重視)でターゲット顧客の多様なニーズを満たすことを目指します。
前者の市場をレッドオーシャン(血で血を洗う苛烈な競争の状態)、後者の市場をブルーオーシャン(澄み渡った青い海のように競争がない状態)とたとえられます。
できることなら、青い海原を気持ちよく航海して、自らのビジネスを成功させたいものです。
ユーザーの気持ちになって様々な軸を用いてポジショニングマップのトライエラーを繰り返すことで、空いている市場、青い海原を見つけ出すことができます。
ぜひご自身ならではのポジショニングマップの作成方法を身に付けていきましょう。
なお、記事の最後にはポジショニングをベースとしたWebマーケティング施策「ポジショニングメディア」も紹介しています。
- 自社コンセプトにマッチした見込み顧客が増え、契約単価が1000万円向上した
- 商材の強みや特徴を理解した上で反響に至るため、価格競争から脱却し受注単価が2.5倍になった
- 数ある競合から自社に興味を持ってもらえるようになり、反響獲得後から契約までの期間を3分の1に短縮できた
といった成果を残してきた施策に興味のある方は、記事を最後までお読みください。
ポジショニングとは
ポジショニングとは、自社が提供する商品(サービス)において、「競合他社と比較した際に差別化できるポイントを明確にすること」です。競合他社も含めた多くの商品群の中から、自社商品を選んでもらうには、ユーザー(消費者)に、その商品が他社と何が違い、どんな魅力的な価値を提供しているのかを認識してもらう必要があります。
そこで重要になってくるのが、他社と差別化できる点を明確にする「ポジショニング」なのです。
しかし、一つ注意すべき点があります。それは差別化できることが「ユーザーが価値として認識できるか」ということです。企業はとかく「自社の視点(都合)」で品質を追求し、他社と比較しがちです。仮に「他社と差別化できる当社の価値は○○です!」と明確にできたとしても、それがユーザーにとって何の価値もなければ、単なる企業の「自己満足」に過ぎません。
自社の視点ではなく、市場におけるポジショニングを「客観的な視点」で明確化させて、マーケティング戦略を策定する際の材料として活用するツールがあります。それがポジショニングマップです。
「縦軸」と「横軸」で4つの「象限」を作って競合他社の商品をマッピングしながら自社のポジションを明確にし、今後どのような戦略でユーザーに浸透させていくかを決めます。
次項では具体的にどのようにポジショニングマップを作っていくのかについて詳しく紹介します。
ポジショニングマップの作り方
ポジショニングマップは、下図のように「縦軸」×「横軸」というシンプルな要素で構成されます。
ポジショニングマップに必要な縦軸と横軸を決める際には、自社のみならず競合の分析を行う必要があります。また、誰に販売するのかターゲットも明確にしなければなりません。ターゲットがブレてしまうと、競合他社か適正かどうかが判断しにくくなります。
また、商品への愛着やプライドが高い企業ほど、自社が認識しているターゲットと実際のターゲットが食い違い、本来の競合も見えていない可能性もあります。本来のターゲットや競合を決める際には、既存顧客の声を重要視しましょう。
ポジショニングマップ作成に役立つ3C分析
ポジショニングマップを作成する際に非常に役に立つのが3C分析です。3C分析とは、
- Company(自社)
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
の3つの「C」を分析する方法で、自社と自社を取り巻く環境(市場・競合)を照らし合わせることで、自社の「強み」「弱み」を抽出。単に分析するだけでなく、「何の商品」を「誰に」対して「どのように」販売すべきか、マーケティング戦略の策定にも活かします。次項では3つのCをより詳しく紹介していきます。
Company(自社)
1つ目のCは、「Company」、つまり自社の分析です。分析のポイントは現在の自社の状況に関する指標です。人材や資本と言った経営資源、営業規模などの強みや弱みを洗い出していきます。商品には直接関係ないかもしれませんが、自社の数値的な事実を洗い出すことで、どの程度資源を掛けて取り組んでいるのかを再認識します。
これらを踏まえた上で競合優位性のある自社の差別化ポイントを洗い出していきましょう。ブランド力や知名度は数値的に把握しにくいため、差別化ポイントとして置きましょう。
Customer(市場・顧客)
2つ目のCは、「Customer」です。Customerには、顧客という意味が含まれていますが、顧客だけではなく市場全体の分析も行いましょう。市場全体の状況、商品の市場規模の推移、業界構造の変遷など、広い視点で捉える必要があります。
顧客に関しては、「購買の意思決定者」を確認します。購入者は必ずしも本人とは限らず、家族、恋人、会社などのケースもあるため、「この商品は誰が買うのか」をよく見極めましょう。子供向け商品の場合は、親が購買を決める場合もあります。
意思決定者が分かればKBF(Key Buying Factor)、顧客が商品の購入を決める際に重視する要素、「購買決定要因」を抽出していきます。ポジショニングマップは2軸でマッピングしますが、絞り込むまで軸となり得る可能性をどんどん出します。
Competitor(競合)
3つ目のCは「Competitor」、すなわち競合です。先に絞り込んだターゲットを元に選出した競合他社におけるKBFを抽出していきます。ここで出たKBFを比較評価することで、競合商品に勝つことができる2軸を設定していきます。
競合他社が取り扱う商品には、明確に押し出しているポイントがあるはずです。それらをくまなく拾い上げ、一覧へ一旦反映する作業を忘れないようにしましょう。そうすることで、市場感をより的確に把握することができます。
ポジショニングマップの作成に役に立つ軸のとり方6つのパターン
競合他社のKBFはうまく抽出できても、ポジショニングマップを作成する際、どれを軸にするのかで迷ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。そこで、マップ作成に役立つ軸のとり方6つのパターンを紹介します。
パターン(1)商品の特性・仕様
商品の仕様・特性に基づいてポジショニングマップを構築する方法です。この軸を設定する際に注意すべき点は、ターゲットは既に商品に関してある程度の知識を持っていることが前提になります。
パターン(2)消費者のメリット
消費者の感情に訴えかけることができる際に有効な手法です。例えば、高級感やプライベート感と言うキーワードが使える場合です。感覚・感情的な要素が強くなりやすいため、定性的な要素で訴求する場合に向いています。
パターン(3)商品の価格・品質
購買を決めるまで時間がかからない商品に向いています。なぜなら、価格と品質の関連性が消費者にとってイメージしやすい前提だからです。高価格や低価格、高品質や低品質といった4つの要素から成り立つため、ポジショニングマップ初心者であっても理解しやすいのも特徴で食材や日用品などに適しています。
パターン(4)商品の用途
品質や価格で差別化しにくい場合に適している軸のとり方です。機能面などに違いが見られない場合、差別化できるポイントが消費者に見えにくい場合に向いています。例えば「徹底したカスタマーサポート」などです。BtoC向けよりもBtoB向けの商品が当てはまりやすく、「SMSの一斉送信ツール」、「採用向け候補者管理ツール」などが挙げられます。
パターン(5)競合商品
明確に比較する競合他社や商品を決めて軸をとります。ポジショニングマップは2軸で判断しますが、片方どちらかの軸で明らかに差異を明確にできる場合に向いています。
特性やメリット、価格や用途など、違いが明らかになるなら詳細は問いません。脱毛など、料金がある程度固定化されている商品を例にとると分かりやすく「他社より低価格なのに早く終わる」「短い時間で終わるのに仕上がりが綺麗」と言った具合です。
パターン(6)他社商品との関連性
商品を問わずに有効に活用できる軸のとり方です。例えば、新しい自動車を発売する際、「まるでファーストクラスの座り心地」と言ったように、関連性がある要素を提示する軸のとり方です。この場合、「自動車の乗り心地」と、他社商品ではあるものの、乗り物という観点で同様の飛行機とで対比します。
簡単ではありますが、6つパターンの軸のとり方について説明してきました。この軸のとり方次第で市場の見え方大きく変わってきます。そして、新しい軸の発見こそが、新しい市場の創造であるといっても過言ではありません。
ポジショニングマップの軸のとり方は、ここで語られる以上に多様性があり、創造的なものです。これらを一つの例として、既に世の中で売れている商品、サービス、商業施設、企業を分析することで、何か新たなビジネスのヒントが見つかるかもしれません。
ポジショニングマップの軸を選定する際のポイント
(1)KBFは顧客視点で決める
ポジショニングマップの軸を決める前のKBFを抽出する際も、そのKBFは「顧客視点」であるかどうかも再考しましょう。商品のセールスポイントがイコールKBFであるとは限りません。しかし、商品を売りたいがために、どうしても商品の売りをKBFに反映したくなるものです。「価格を押し出しているが、本当のKBFは商品やパッケージのデザインだった」など、顧客の視点(顧客の声)で商品を見て適切なKBFを抽出しましょう。
(2)顧客の商品に対するイメージもくみ取る
実際に顧客のKBFであった場合でも、「顧客が認識しにくいKBF」もあるため注意が必要です。例えばパソコンを例に挙げましょう。パソコンに詳しい人ならCPU(パソコンの性能の高さ)などで購買を決める可能性があります。価格帯が安くて初心者向けパソコンの場合、メーカー名の知名度が重要視されるかもしれません。メーカーの知名度がたまたま顧客とのニーズと合っていたという場合もあるでしょう。
このような場合、ポジショニングマップを作成する上で難しいのは、「顧客視点」は事実に基づいているものとは限らないという点です。「誰かから聞いたこと」や「口コミサイトに書いてあったこと」のように、顧客が持っている商品に対するイメージも大きく影響します。企業側はイメージをできるだけ適切にくみ取ってポジショニングマップを作成する必要があります。
(3)ターゲットは具体的に設定する
ポジショニング軸は、ポジショニングマップを作成する上で非常に重要な要素です。この軸が曖昧であることはもちろんNGですが、ターゲットに合わない軸を選ぶのは最もNGです。先ほど紹介した6つのパターンを参照すると分かるように、軸は商品によって向き・不向きがあります。
また、ターゲットによっても向き・不向きなパターンがあることを忘れてはなりません。もし、軸を決める際の議論がまとまらないなら、実はターゲットが明確になっていないのかもしれません。
例えば、「22歳女子をターゲット」として考えてみましょう。このターゲットでポジショニングマップを作成しようとすると、軸選びの際に必ずつまずくはずです。なぜなら「22歳女子」はターゲットと呼ぶべき情報としては不足があり過ぎるからです。
22歳という年齢設定なら、大学に通っている場合は大学4年生でまだ学生です。しかし、専門学校などを卒業している場合は、社会人として2年の経験を積んでいることになります。これだけ見ても生活リズムや収入が異なることは容易に想像できますが、
- ひとり暮らしなのか
- 実家住まいなのか
- 正社員なのか
- アルバイトなのか
といったように、設定できる要素は他にもたくさんあります。自分たちが納得したポジショニングマップが作成できるよう、常に「販売すべきターゲットは誰なのか」に立ち返りましょう。
そして、立ち返るに相応しい「具体的なターゲット」を設定しましょう。
(4)2つの軸に相関関係を持たせない
初心者でありがちなのは、「2軸に相関性を持たせてしまう」ことです。冷静な判断をすることができれば、2軸にする時点でそれぞれに相関関係がないことは十分理解できますが、KBFの抽出を行うと、つい相関関係にある内容を2軸に置いてしまいがちです。
中でもよくあるのが「価格と品質」です。私たちは自身の生活の中で理解しているように、高い金額を払うことで高品質のものを購入したり、サービスを受けたりすることができます。
この考えのもとに立てば、「価格と品質」は相関関係にあり、「品質」が落ちれば価格は下がるし、「価格」が上がれば「品質」は上がる、というのが一般的な考えでしょう。これをポジショニングマップに落とし込むと、1つの象限のみで完結してしまい適正な判断ができなくなります。
ポジショニングマップの作成事例
それでは、実際にポジショニングマップの作成事例を紹介します。
事例(1)飲食店
価格と健康を軸にハンバーガー業界でポジショニングマップを作成してみました。
安価且つジャンキーなゾーンではマクドナルドやロッテリアがせめぎ合っていますが、モスバーガーは一歩健康志向向けに抜きんでて競争をしていなかったり、ウェンディ―ズは争いづらい市場を狙って展開していることが分かります。
関連記事:食品・飲食業のポジショニングマップ事例。軸の決め方の参考に!
事例(2)カフェ
カフェを例にポジショニングマップを作成しました。今回の軸は
- バラエティ⇔こだわり
- 価格が安い⇔価格が高い
という軸で作成しています。
このポジショニングマップを見ると、徹底的なこだわりを持ったコーヒーなら高価格帯でも勝負ができそうである、逆に低価格帯で拘りたいユーザーの希望を叶えるバリューイノベーション戦略を展開すれば1人勝ちできる市場であると判断することができます。。
関連記事:カフェのポジショニングマップ事例。軸の決め方の参考に!
事例(3)アパレル
ファストファッションを例にポジショニングマップを作成しました。今回の軸は
- 手軽さ⇔品質重視
- コンサバティブ⇔トレンド重視
という軸で作成しています。
このポジショニングマップを見ると、ZARAがトレンド重視かつ手軽さという市場では独走しており、しまむらはコンサバティブかつ手軽さの市場で独走しています。
一方、コンサバティブ且つ品質重視の市場ではユニクロや無印良品、GAPが近しい市場で展開していることが分かります。
関連記事:ファッション・アパレルのポジショニングマップ事例。軸の決め方の参考に!
事例(4)化粧品
オーガニック化粧品を例にポジショニングマップを作成しました。今回の軸は
- かっこよさ
- 素朴⇔洗練
という軸で作成しています。
関連記事:コスメ・化粧品のポジショニングマップ事例。軸の決め方の参考に!
ここまでポジショニングマップの作成方法や軸の考え方について説明をしましたが、「実際にポジショニングマップを作ってみる」ことが大切です。自分でもポジショニングマップを作ってみたいという方に、マップ作成のテンプレートをご用意いたしましたので、ご興味のある方は、コチラよりダウンロードしてください。
ポジショニングをベースとしたWebマーケティング戦略が重要
これまで、ポジショニングマップの作成方法について紹介しました。現在、BtoCやBtoBを問わず、既存顧客ばかりに依存していては生き残ることはできず、販路拡大や新規開拓は必須です。
ポジショニングで差別化することはもちろん重要ですが、さらに大切なのは、「どのような方法でユーザーに認知させるか」です。現在、多くのWeb会社が行っている広告モデルは、ポータルサイトを作って「広告掲載しませんか?」というものです。
ポータルサイトの掲載も有効な手段ですが、各々の中小企業が持つ独自の強みや魅力はユーザーに伝えきることができません。
自社のポジショニングが分かったとしても、本当にユーザーにとって価値のあるポジションなのか、もしかしたら、自社の思い込みなのでは…と不安に思う方もいるかもしれません。
そこで、自社の強みの見つける3C分析から、ユーザーに伝えるWebマーケティング戦略の策定、そして具体的に伝える媒体「ポジショニングメディア」の制作まで、Zenkenではワンストップでご提案しています。
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